第135話 今更ながら、異世界テンプレはこの世界では通じない様である。


今回は「この世界のギルドについて」のお話です。


そして……

『この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません』

と、ここに来てねんの為に書く事にします(笑)


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「暫く来なかったと思ったら、また薄汚れて来たねぇ小僧。そんなナリで入って来るんじゃないよ、臭くてたまんないねっ!」


 顔を合わせるなり開口一番そう言われ、裏口から中庭に放り込まれるクリン。拠点に出来そうな場所の目途が付いたので、一旦街に戻って勉強の再開と必要になりそうな物資の補充に来たのだが、最初にテオドラの元に顔を出したらコレである。


「おかしい……来る途中に農業用水路見つけて濡らした布で体は拭いたのに……」


 ブツブツ言いつつも再びスッポンポンで井戸水で体を洗う。幾ら体を拭こうが虫除けや動物除けに服に薬草だの草の汁だのを塗ったくって何日も洗わなければ良い匂いがして来るのは当たり前なのだが、匂いに慣れてしまっていた少年は気が付いていなかった。


 まぁ有難い事に変わり無いので折角なので洗濯させてもらい、例によって洗濯物を干している最中にマッパでくつろいでいる所をテオドラに怒鳴られたりしたのだが。


「ったく、可愛気の無いったらありゃし無い小僧だねぇ。勉強しだして直ぐ来なくなったかと思ったら、教えた所はキッチリ覚えていやがる」


 寛いでいると怒られるので、服が乾く間に他の子供達に混ざって文字の勉強をしていたクリンの成果を確認したテオドラがそんな事を言って来る。因みに混じってと言ってはいるが、マッパなので中庭で一人学習であるのだが。


 どうやら最初の一週間ほど足繁く通っていた所なのに、ここ七日は姿を現さなかった事でテオドラは、少年が勉強に付いて行けずに来なくなったのかと思ったようだった。それにしては利発な言動だったので不思議に思っていたのだ。


「ああ。最初は貧民街に居を構える予定だったんですが、ちょっとあそこは子供一人で生活するには不便だったので。街の中で生活出来ないのなら別に街に拘る必要ないと思いまして、今はちょっと住み易そうな場所を探している所です。ここへ来る時に通えばいいだけですしね」


「……そういや小僧が何処に住んでいるか聞いていなかったねぇ。アンタ、貧民街に居たのか。そりゃぁ保護者が居なけりゃ暮らし難いだろうが……近くの村に移るつもりなんだろうが、結局同じなんじゃないかい?」


「あ、村で暮らすのは懲りたんで……今は人気の無さそうな場所で家でも建てようとしている所です」


 クリンがすました顔で言うと、この老婆は「何言ってんだコイツ?」みたいな顔で見て来たが、直接は何も言わないで溜息を吐いただけだった。


 この世界では人の集落から離れた場所で単身で暮らすと言うのは自殺行為に等しい。野生動物が元気なのもあるが何よりも魔物が居る。ぽつんと一軒家というのはこの世界では余程過酷な環境か世界から切り離されたような秘境でしかありえない。


 一応、トマソンからの紹介状を受け取った時に、少年の簡単な生い立ちは聞いていた。最初の村での扱いや、その後の村での生活も掻い摘んでだが聞いている。


 所々一人で暮らしていただの、森に入って色々拾って生活していただの、最後の方に鍛冶師の真似事で腕を買いたたかれただの、ヨタ話としか思えない事が混じって居たりもしたが。と言うか実の所テオドラはヨタ話の類いだと思って聞き流している。


 この時の老婆はまだクリンがただの胡散臭い子供で金をちゃんと払っているから、多少の奇行はスルーして深く関わらないつもりで居る。


 そのせいで、気が付いた頃には手遅れでこの後二年掛けて手習い所兼自宅が魔改造されてオーパーツ塗れとされるのだが、今はまだ知らない。


「そう言えばドーラばぁちゃん。この辺りで薬草とか野草とかの類いを買い取ってくれそうな所知りません?」


 森から離れる道すがら野草や薬草として使われている物を見かけたら採取しながら戻って来たので鮮度は良い。


 村ではその手の物は普通に生えていたし森も近かったので大して売り物にはならなかったが、こういう大きい街なら買い取ってもらえるかも知れない、と何と無しにきいてみたのだが、テオドラの反応は違った。


「誰がドーラだい、気安く呼ぶんじゃないよ!!そしてババァなのは認めるけれど、アンタの婆ちゃんになった覚えないよ小僧!!」


 そっちだった。暫くお小言を食らった後、テオドラに「見せて見な」と言われたので採取してきた薬草類を見せる。基本的には前の村で覚えた薬草類と、アーカイブにある薬草に似ている野草が中心だ。


 魔法薬の原料になる物は、アーカイブにある物に近しい物はまだ見つけていないし、前の村には原料になる物は無かったので知らなかった。


「ふん。量は大したことないが……カラントにミントにメードサ。ローズマリーとダイエンブイかい。ほう、セントジョーンズワートも……小僧、アンタ薬草の知識もあるね? いや、もしかしたら初歩の薬学も持っているんじゃないかね?」


 クリンが持ち込んだ薬草と野草を見て、テオドラがじろりとねめつけてくる。良くこれだけで解るなぁ、と思いつつも少年は、


「最初の村が色々とアレでしたんで。心配した本物のクリンさんが色々と使える薬草を教えてくれましたからね。そして、アレを薬学と言って良いのかは分かりませんが、簡単な軟膏とか薬効成分を抽出して濃縮する方法程度は知っていますね」

「成程……道理で組み合わせたら胃薬とか虫よけとか傷薬になりそうな物ばかり採って来る訳だよ。良いだろう、アタシが買い取ってやるよ」


「ドーラばあちゃんが?」

「だから、気安く呼ぶなつってんだろ小僧! ったく、アタシゃ元々薬草学が専門でね。薬草から薬を作るのが得意だったのよ。魔法薬の方が効率が良いってんで大分マイナーな学問扱いさね。ただアレは高くて庶民の手には簡単に渡らないからねぇ」


 テオドラが言うには、この手の薬草は薬師の店で買い取りをしているそうだが、量がこの数倍は最低限必要だそうだ。


 そしてそもそもが自前で薬草取りを雇っているので持ち込みは余程珍しい物か品質が良く無いと買い取ってもらえないそうだ。


「小僧が持って来た物は質は文句ないね。ただ種類が多くて量が少ないから買い取りは難しいだろうねぇ。アタシゃ商売柄ガキ共用に少量を複数種類持っている方が良いからね。この位の量ならそうさね……月一から二月一位で持って来る分には買い取ってやるよ」

「それは有難いですが……この辺りでは冒険者ギルドとか商人ギルドとか薬師ギルドとか、その手の組織が買い取ってくれるとか無いんですかねぇ?」


 コレまでの会話でそう言う話が一切出てこなかった事に疑問に思い、軽く探りをいれると、テオドラは「ハンッ」と鼻で笑い飛ばす。


「商人ギルドなんかが買い取りする訳無いだろ。薬師ギルドなら買い取るかもだが二束三文だね。アイツらが欲しがるのは魔法薬用の薬草で普通の薬草は殆ど見向きもしない。冒険者ギルドは……まぁあんな奴らに依頼する物好きが居るなら買うかもね」


 取り付く島が無いとはこの事とばかりにバッサリと切って捨てられてしまう。テオドラが言うには、この世界でもギルドと呼ばれる組織はある物の、前世や異世界物などに出て来るような、世界を跨いで効力を持つ様なスーパー組織では無いらしい。


 そして冒険者に依頼したとしても、彼らは所詮無学の徒なので専門知識が必要な薬品の元になる物の採取の知識など端から持ち合わせていない。そして、大体が大雑把だ。依頼した薬草を適当に依頼の数倍の量引っこ抜いて集めて、その中から使えそうな物だけ納品する、なんて真似を普通にして来る。


 手間をかけて選別する位なら、短時間で大量に集めてその中で必要な分が残ればそれが一番楽である。時間を掛ける位なら薬草集めよりも狩りでもした方が金になる、位にしか考えられないからこそ冒険者、と言う物らしい。


「それに……国を跨いで商売を取り仕切る国際的な商人のギルドだって? どこのどアホゥな国王がそんなクソみたいな組織認めるんだい。商人ギルドが商人に成る相手を勝手に決めて金取った挙句に格付けに順位付けて勝手に売り上げから税金取るって? 馬鹿お言いじゃないよ。そんなのは国がやる事で一商人の組合如きに許す訳ないさね。売り上げから自動で差っ引くとか、ただの搾取じゃないか、そんなの商人どもが反乱起こすわ。商売舐めてんじゃないかねそのギルド」


 試しに商人ギルドについて、前世でスタンダードな商人ギルドの仕組みを説明してみた所、とんでもなくダメ出しされた。


 まぁ、現実で考えれば商人が国跨いで販売ルートを持つだけでもスパイ疑惑が掛かるのに、商人が新しい商人を勝手に審査して商人になれるかなれないかを決めるとか、現実的に考えたら暴動が起きるレベルの話だ。


「この国にも商人ギルドなんてのはあるけれどもね、そんな頭のおかしい組織じゃないよ。ただの大商人同士の互助会みたいな物さね。大昔には新規参入の商人を規制していたとか言う話だったけどね。反発が多くて何れ町から他の商人や住人が逃げ出して廃墟になる騒ぎになってから、ただ商品情報の共有とか販路の融通とか、大商人同士が被って諍いにならない様にしているだけの組織さね」


 クリンが言う様な国を跨いで商業の全てを管理するような真似を為政者が許す訳が無く、流通規制や価格操作が安易に行えるような物を許す訳が無いとの事だった。


 また、テオドラは冒険者ギルドに付いても、


「冒険者なんて食い詰め者の武装集団だよ。そんなのの身元を保証して国家間の通行を許すとか、普通無いさね。国を跨いで効力が出せるなら、それはもうその跨いだ国を支配できるはずだよ」


 と、此方もあっさりとした否定を食らっていた。






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リアル路線で行くとこうならざるを得ない、と言うだけの話です。

他作品のギルドを否定する気は無いです。そこはご理解いただけるようにお願いします。


元々なろう系のギルドの仕組みはTRPGとかでゲームマスターが管理が楽になる様に考えた物ですしね。


作者もテンプレギルドとか好きですし、多分別作品を書くなら普通に使うと思います。楽ですし面白いですからね、あの仕組み。





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