第109話 閑話13 転生幼児の半休日。 その2


ちょっと気に入らない部分があり書き直していました。その為普段よりも公開時間が遅くなりましたm(__)m



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「……こう言うのを神殿って言うんです? こう言うのってお社とかお宮とか言うと思うんですが……でもあれも一応神殿の一種だから良いのか……?」


 クリンはトマソンに案内されて到着した、眼前に鎮座している石造りの小屋の様な物を眺めながら首を傾げる。高さ二メートル無い位で奥行きも一メートルも無い。誤解を恐れない言い方をすれば石で作られた大きい犬小屋だ。それも小屋の中は三十センチも空間が無く、奥の壁に何かシンボル的な物が飾られているにすぎない。


 その前面に台が置かれ申し訳程度のお供え物がなされていて、辛うじてここで祈られている事だけは見て取れる。


「オミヤとかオヤシロが何なのか解らないが、ウチの様な村や小さい町の神殿は大体こんな物だ。これでも近隣の村の中では一番大きい神殿だ。まぁ町の物には流石に劣るが」

「はぁ、そうですか……マジで田舎のお宮みたいな扱いなんだなぁ……神殿と言うからてっきりもっと大きくて石の柱とかがド~ンと立っている様な物かと思っていました」


「ああ大神殿か。そんなのは領主街や王都などにある二主神と十二神、二十四支神全てを祀るような大規模な神殿でしかないぞ。二主神や各神単体を祀る神殿だとこの様式である事が多い。祭壇とそれを納める小規模神殿、コレが基本形だとされている」

「祭壇……ああ成程、社じゃなくて祭壇なのね。だからこの規模感でいいのか」


 クリンはトマソンの説明に納得し頷く。前世では神殿と一言で言っても実は種類がある。神の家や神の座する場所としての神殿と、その神に対しての儀式を行う神殿や、生贄や供物をささげる為の場所としての神殿など、それぞれ目的が違う神殿が存在している。


 恐らく、この世界でもそれに近い感じで別れているのだろう。だからこのような田舎の村なら神その物を祀る神殿では無く、神に供物(祈り)を捧げる場としての神殿が置かれていると言う事なのだ、とクリンは納得する。


『成程。コレは確かに様式が違う。どちらかと言えば仏壇とかそっち系の意味合いの物だこれ。祀ってはいるけれども仏その物が宿っている訳では無いもんね、仏壇は』


 祭壇を眺めつつクリンは思う。日本の神様の場合木に神が宿るので木の住いである社や宮を建て、その木の柱や木像に神が宿る為に神の数え方は柱である事が多い。ただ他にも山や特定の建物に常に神がいると考えられている場合は座が用いられたり、石や岩などに宿る神もあるとされているので石や律が使われる事もある。尚仏の場合は尊か仏である。


 トマソンの話を聞くに、こちらの神は何かに宿る訳では無く『そこに存在する物』或いは『存在する場所に通じる場所』として考えられているようで、神殿に存在している物なので殿が数え方として使われる事もあるが、一般的には神と数える事の方が多いらしい。また石像や立像に降臨する事もあるので体又は像で数える事もあるらしかった。


『やはりこう言う所も西洋圏の考え方に近いんだなぁ。つい前世の習慣で柱と呼びたくなるけれども、こう言うのって拘る人はトコトン拘るからねぇ。この世界だと神と数えるのが無難だな、うん』


 内心でそう思い、取り敢えず祈っておこうかと考えた時、ふとトマソンが言った言葉に気が付く。


「ん? 二主神? 主神なのに二神もいるんです?」

「うん? 知らなかったのか? 主神と言うか兄妹神であり夫婦神だ。雷鳴の神ユーテルと大地神メィステールだ」


 そう言われ「ん?」とクリンは思う。


「主神はセルヴァンさ……神では無いんです? 本に……いえ、ボッター村ではそう伝わっていると聞いていますが……」

「誰だそれは? 主神と言えばユーテルとメィステールなのは常識だろう。そんな神が主神だなどと言う話は聞いた事が無い。何だ、ボッター村と言うのは異教徒の地だったのか?」


 と、トマソンに顔を顰めながら言われ、クリンは「あっれ~?」と首を捻る。


『セルヴァン様、なんか話が違いません? 何か主神で無いどころか神として認知されていないみたいなんですが』


 そうクリンが不思議に思っていると「いや待てよ……どこかで聞いた事が有るなその神」とトマソンが考え込み、やがてポンと手を打つ。


「思い出した! そうか創世神話に出て来る『まつろわぬいにしえの大神』だ! 原初の時代に空と時を司ったとされる神が確かセルヴァン神と言う名だった筈だ! そんな古い神、良く知っていたなぁクリン君!」

「古の大神……そんなに古い神様なんです?」


「ああ。俺もお伽話とか歴史に詳しい神官が趣味で集めた話とか、そう言うのでしか聞いた事がないが、何でも現在の二主神が誕生する前、創世の時代には名前の良く解っていない神が何神か登場するんだ。世界が誕生する以前の無の神、無を打ち破って出て来たとされる始祖神、無を打ち破った事で力を失った始祖神が変化し混沌神が生まれ、やがて音無しの神や無香の神とか、良く解らない神が多く生まれて来る。ここまでは時は止り全てが混じり溶け合い区別が付かない世界だった所に時間と空間が生まれ、混沌から切り離され世界がはっきりとした形を成す、と言う神話がある。その世界を確定させた神の名が、確かセルヴァン神だった筈だ。その後、太陽神や月神、地殻神などの世界を形成する神が生まれる。この世界を形成した神達を纏めて『まつろわぬ古の大神』と呼ばれている」


「呼ばれている、と言う事は現在の神達とは違う存在として扱われているのでしょうか?」

「うーん……俺も神学者ではないから詳しくは知らないが……古の大神達は『世界の根幹を成す』存在として扱われているな。我々人間と直接深い関りが無い神と言う感じか。現在の二主神やその眷属神は全てまつろわぬ大神に連なる神であるので、全くの無関係では無い……と思う。そこは多分神学者に聞かないと分からないな」


「成程……そんなに古い神なんですね……あれ? じゃあもしかして、今はこの世界ではセルヴァン様は殆ど信仰されていない、と言う事ですか?」


「そうだな。知る限りはこの国でまつろわぬ大神を祀っている神殿は無いと思う。ただ、噂で聞いた程度だが、外国や一部の古い部族では現神である二主神よりも上位の神として、古の大神を祀る所もあると言う話だったな。ただあくまでも主神は二神であり、大神はその祖先の様な立ち位置で纏めて祀られているだけの様な感じだと思う。多分そのボッター村もそんな感じの信仰だったのではないかな」


『うーん……前世でもあった新旧の神の交代みたいな感じかなぁ。だとすると余り大っぴらにセルヴァン様の名を出すのは避けた方が良いのかなぁ』


 と、クリンが考えているとそれを察したのかトマソンが聞いて来る。


「もしかして、君が良く作っている神像は、その古の大神がモチーフなのか?」

「……ええ、まぁ。本人……いえ、クリンさんから一番偉い神様と聞いていたので、神様を祀るならこの神なんだろうと思って彫っていたんですが……」


「ああ、まぁ創世の神でもあるのだから、偉い神に違いは無い。ただ、古の大神というのは基本人と関わらない神だから実際の所何をしている神なのか良く解っていないからなぁ。現代の神には空の神と時の神がそれぞれ居るし、司る力も重複しているしな……祀っても悪くは無いが、ただやはり二主神と合わせて祀る方が良いと思うぞ?」


「ああ、やはりそんな感じですか……ですが、僕その二主神のお姿知らないんですよねぇ……ここで祀られているのもシンボルだけのようですし……」

「前の村は……」


「祀っていると思います?」

「だよな。まぁ春になれば町に行くのだろう? 町にはココよりも大きい神殿があり二主神の神像を祀っている神殿もあるからそこで確認するのが早いかも知れないな」


「そうですねぇ……このシンボルを真似て作っても良いですが、大神だけ神像と言うのもなんか変ですし。町に出たらそうしてみます」


 クリンはそう言うと、取り敢えず祈っておこうと二主神のシンボルに向けて二回お辞儀をし、二回手を鳴らして再び一お辞儀をする。

 ……要するに二礼二拍一礼と言う神道の作法で祀った訳である。やってしまってから「あ」と思ったが、身に沁みついた所作なので「祀る心が重要なんだよ、うん」と自分に言い訳して素知らぬ顔で頭を上げる。


「それも珍妙な作法だが……もしかしてそれが古の大神の祀り方なのかな?」

「ええまぁ……何分他の作法を知らないので、今回はコレでご容赦願いたいな、と」


「……まぁ、俺もそこまで敬虔な方では無いから別にいいとは思うが。町に行ったら一度礼拝法もちゃんと学んだ方が良いな。この村では誰も気にしないと思うが、町だと気にする奴は気にするからな。正式な物を覚えておいて損は無いと思うよ」

「……そうですね。町に出たらもっと学んでみようかと思います」


 こんな所でも知識の無さを痛感するクリン君五歳であった。同時に「習慣とは恐ろしい」とも思った瞬間でもあった。


 そして、密かにまつろわぬ古の大神に対しての参拝方法がこの世界に図らずも爆誕してしまった瞬間でもあったのだが、クリン君がその事に気が付いたのは大分後の事であり、もう別の話である。






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読まれていた部分を書き直してみた物の気に入らなかったので更に書き直してしまいました(笑)


 この世界の神様の立ち位置、みたいな感じの話です。神様関係は色々と整合性を取るのがやっぱり面倒ですよねぇ……


なので今回推敲している時間がなかったので誤字多いかも……

見つけたら修正します!

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