第104話 閑話8 転生幼児の(多分)3分間クッキング。

 酔った勢いで思いつきで書いた話。たまには毛色を変えたこういう作風もいいかな~と。なので数字が英数字も使われています。正に閑話ならでは。


一応、時期的にはクリンが新しい村に来てから一ケ月位の時の話。 話数的には大体45話~60話の間位です。




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「皆さんこんにちは。ボッタクリ大好き5歳児、ボッター村のクリンです。本日は僕が新しく暮らす事になった村……名前なんだっけ? ……ま、いいか。新しい村の方々からこんなご質問を頂きましたっ!『クリン君は前の村でどんな物を食べていたのですか』だそうです。えーと……本当に知りたいんですかね?」

「ファステスト村だぞ、クリン君。それよりこの茶番は何なのだろうか」

「なぁクリンよぅ、俺、給料下げられて厳しいんだわ。今度下手なことしてもっと減らされたら目も当てらんねえのよ。帰っていいか?」


「シャラップ! まだ紹介していないゲストは黙りましょう。あ、でも丁度いいからゲストをご紹介しましょう! 本日、ご質問の『僕が食べていた食事の再現料理』を試食してくださるファ……何とか村の代表、門番ズことトマソンさんとマクエルさんです!」

「その門番ズというのは何なのだろうか……俺は普通に自警団なだけだが」

「えー、お前の前の村の飯って虫とかトカゲとか野生の芋とかだろ? そんなの食えねえんだわ、俺」


「まぁ、その場のノリと言う事で。と言うかお二人も僕の前の村での食事とか気にされていた事とかありますし、この際食べてもらおうかと。あ、虫やトカゲなんて、あの村ではご馳走なんで、そんな贅沢な物は出しませんっ!僕が普段食べていた麦粥を作るだけですのでご安心下さい」

「……まぁ村によっては昆虫食は貴重な蛋白源と聞くしな、うん」

「麦粥かぁ……それなら大丈夫か。って、麦粥なんてどこでも同じようなモンだろ?」


「ノンノン。甘いですよマクエルさん。『村の』ではなく『僕が食べていた』って所がミソです。先ず用意したのはコチラ。じゃんっ!ライ麦です!脱穀しただけで精麦はしていませんっ!」

「麦粥といいつついきなり材料が大麦ではないのだが……」

「クリンよぅ……それ、家畜の餌で人間が食う物じゃないんだわ、これが」


「何を言っているんです。この村では知りませんが、前の村では麦と言えばこのライ麦の事です。栄養豊富なんですよ?」

「まぁ……貧しい村では食べるとは聞いているが……」

「飢饉の時とかに食う奴だろ、それ。まぁ食って食えない事は無いらしいなぁ」


「それでは調理開始っ!先ずはこのライ麦を水で洗います。あ、この時に洗った水は捨ててはいけません。取っておきます。で、このライ麦を鍋に入れて水を入れ、麦粥を作りますっ! 沸騰して良い感じに柔らかくなったら、塩を一振り……そして仕上げに油かす、取っておいたラードを熱してハーブ類で香り付けした物を掛けて……あっという間に完成ですっ!」

「ほう。5歳にしては随分手慣れているなクリン君」

「おお……ライ麦なんて食った事ねえけど、意外といい匂いしやがる……」


「そうしたら、中身は全部取り出しますっ! コレは後で僕の晩御飯になります」

「うん? 麦粥を食べさせてくれるのではなかったのか?」

「おいおい、何で片付けてんだよ?」


「コレは『この村で』の僕のご飯なので、趣旨が違います。『前の村のご飯』を作るのはこれからです。はい、あらかた鍋の中は綺麗になりまた。そしたらこの鍋に、先程麦を洗って取っておいた水をいれます」

「は?」

「へ?」


「そして火にかけ、沸騰して来たらその辺から引っこ抜いてきた雑草、この辺りの雑草は全部抜いているので、水路横に生えていた野草で代用します。コレを入れて更に一煮立ち……はい、クリン君特製『山向こうの村風麦粥』の完成です!パチパチパチっ!」

「ちょ、えっ? 麦粥!? じゃないよな、これ!?」

「どう見てもタダの草汁なんだわなぁ……ライ麦すら入って居ないコレを麦粥とは呼ばねえだろ、普通!」


「チッチッチッ。甘いですね。だから麦の洗い汁が入っています。その汁の中に、麦のカスとか粉とかがちゃんと混じっているんです!……どこかに」

「……クリン君……流石にコレを麦粥というのは無理があると思うぞ?」

「おまっ……ふざけんなよ、こんな物食えるかよっ!?」


「そう言われましても『前の村』と態々注釈つけたのはこの村の人たちなので……文句はそちらに行ってください。僕だって後でコレ食べるんですから。まさかまた食べる羽目になるとは思っていませんでしたよ。と、言う訳で……おあがりよっ!」

「ぐぐぐ……作ってもらった以上は……食べるしかない……か……」

「ええい、余計な質問しやがって……村の連中、後で呪ってやる……」


「おっと!?お二人ともまさかの一気食いとはっ!そんなに気に入ったのなら時々作りましょうかね。で、お味の方はいかがです?」

「むぐぐぐぐ……」

「ぐがががががが」


「あれ?お二人とも反応が無い?おーい……何だろう、固まって動かないや……何か作り方間違えていたかな? 僕も味見してみるか……どれ……パクッ……ああっ!?」

(漸く気が付いたか、この不味さに……)

(ザマァ見ろ、お前もこの苦しみを味わえ)


「何か前よりも旨くなっているだとぉっ!? ハッ!まさか野草!? 野草のせいかっ!? ちゃんとした野草だとここまで旨かったのか、コレっ! ハッ!? それとも野草だからと灰汁抜きしちゃったのがダメだったかっ!? ちぃっ……ちゃんとその辺の良く分からない雑草じゃないとあの味は出ないのか……申し訳ありませんお二人ともっ!これ、旨すぎます。僕が食べていた『前の村』のよりも遥かに美味しくなってましたっ! ちゃんと同じ味になる様に作り直しますねっ!」

「ガクッ」

「バタッ」


「……あれっ?どうしました二人共? おーい?」




——カンカンカンカンカンッ!——




 頭を真っ白にして倒れた門番ズを心配して覗き込むクリンを他所に、何処からか試合終了を告げる10カウントのゴングの金が鳴り響いていた。





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まぁ、閑話ならではのおふざけと言う事で。

尚、この世界での食事が酷かっただけで、別にクリン君自身は味音痴ではありません。まぁ……ちょっと疑惑はあるんですが……

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