第3話 スライム退治!

 晴れて冒険者になれた俺はクエストを受けるためにギルドを訪れていた。

 勿論、アンズもリーも一緒だ。

 エンジェルルームで二度寝しようとするアンズを引き摺って連れて来た。

 ギルドの掲示板から良さげなクエストを探す。

 初心者におススメと書かれたクエストを見つけた。

「スライム退治か! 本当、初心者向けって感じだな」

「スライム~? 面倒臭い~」

「何でだよ! スライム退治なんて楽勝だろ。もしかしたらお前の助け無しでいけるかも」

「なら、いいけど~。でも舐めてかかると痛い目見たりして?」


 俺達はスライムの出現する高原に来た。

 青くて丸い、ぶよぶよした体のスライムが三体現れた。

 スライムはこちらから攻撃しなければ向かって来ないようだった。

「はい、頑張って倒して~」

 アンズは草むらに寝転んで、俺をテキトーに応援している。

「マジで手伝う気ないのか、アイツ」

「仕方ありません! 二人で倒しますよ!」

 リーがプレーリードッグの姿のまま、手に短剣を持ち応戦する。

「リー、お前、戦えたのか⁉」

「ええ。お望みとあらば、人間の姿にもなりますよ」

「そっちの方が良さそうだな、頼む」

「承知いたしました。では天界に許可を取りますね」

 リーは携帯電話で天界と連絡を取っている。

 スライムも襲って来ないので、俺はそのままの体勢で待っていた。

「許可取れました! ……変身しますね!」

 すると、リーの身体が光り、数秒後には、茶髪のショートカットの女の子に変わっていた。

「行きますよ!」

 リーがスライムに向かって行く。

 リーの短剣がスライムを切り裂く。

 すると、真っ二つになったスライムが粉々になり散った。倒したということだろう。

「よし、俺も!」

 俺は剣を強く握り直し、スライムに向かって行った。

 スライムは動かない。そのままの勢いで真っ二つに斬る。

 倒した! 

「あ、あれ……?」

 スライムは散ることなく、二つに分裂したままだ。

「どういうことだ?」

 分裂した個体が新たな一個体となって道を塞いだ。

「私はちゃんと倒せたのに、どうしてでしょう?」

「分からない……」

 とりあえず、もう一回スライムを斬ってみる。

 スライムが4体に増えた。

「これ以上やっても増えるだけです。私だけで倒しますね」

「俺の武器とリーの武器の違い……」

「あっ、私の武器には天界の神力が付与されています」

「シンリョク?」

「神から与えられた力のことです。天界から支給された武器には最初から神力が備わっています」

「そっか。神力が付いてないと効かないのか」

「ここは私が倒すしかないですね。少し不安ですが頑張ります」

「すまん、頼む、リー」

「頑張れ~、リー」

「お前は手伝えよ!」

「え~、リーだけで平気だって~」

 俺がアンズと言い合いをしている間に戦局が変わっていた。

 リーが4体のスライムに囲まれてしまった。

「ああっ、リーが!」

 スライムが身体を伸ばしてリーに襲いかかろうとする。

 リーが「ひっ」と悲鳴を上げる。

「リーーーーー!」

 すると、俺の後ろから「ひゅん」という音がして、何か細いものが通り過ぎた。

 スライムに矢が刺さっており、スライムはその部分から溶けるように消えていった。

 続けざまに「ひゅん、ひゅん」という音がして、また矢がスライムに刺さった。

 俺は矢が放たれた方向を見た。

 そこには弓矢を構えるアンズの姿があった。

「え、あ、アンズ……?」

 アンズが動いて弓矢で攻撃をした?

「ふわふわとろけるパンケーキ」

「え?」

「ふわふわとろけるパンケーキ」

 思い出した、アンズの好物だ。

「分かった、後で食わせてやる」

「アンズ~~~~」

 スライムの恐怖から解き放たれたリーがアンズに抱き着いてくる。

「やっぱり貴方はやれば出来る子なんですよ~」

 確かにそうだ。

 普段の怠け癖からは想像も付かないが、アンズは本当に、やれば出来る子だったのだ。

「ふわふわとろけるパンケーキ」

「分かったから」

「たっくさん食べさせてあげます!」


 こうして初めてのスライム退治は、アンズのお陰で達成できた。


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