2024年4月7日 夢か現か心霊体験
皆さんは幽霊という存在を信じているだろうか。
未練を残して死んだ人の魂が、現世に残って呪いだのを撒き散らすアレである。
ちなみに私は信じている。
こんなことを真面目に書くと「大人のくせにまだそんな妄想を捨てきれんのか」と後ろ指差されそうであるが、信じているものは信じているのである。
もっと正確に言うならば、「幽霊が存在する」というよりは、「未だ解明されていない未知の現象が、我々にとって不可解なので幽霊のように見える」だろうか。
現象であるからにはなんらか理屈がつけられるとは思っている。
果たして物理法則を信仰しているのか、アニミズムを信仰しているのかよくわからない。
私がそんな信仰を抱くに至ったのには理由がある。
私は過去に何度か、俗に言う心霊体験というものを経験したことがあるからだ。
待ってくれ。
嘘じゃないって。
いくらなんでも、嘘をついてまで日記のノルマを達成しようとしたら終わりだって。
その証拠に、これから話す実体験には創作らしい盛り上がりもオチも何もない。
そんなつまらないエピソードを書いて字数を埋めるくらいなら、最初からホラー短編の1つでも書くわい。
とにかく行くぞ。
① 階段から伸びた右手
小学生4年生の頃だったと思う。
夕飯を食べた後、私は家族と一緒にリビングでテレビを見ていた。
尿意を催してトイレに行こうと、廊下に出た。
ふと、廊下にある二階へ続く階段を見ると、そこから、人の右手がにゅっと伸びていたのである。
手は半開きで、何かを掴もうとしているように見えた。
私はびっくりして「うわぁ!」と叫んで腰を抜かした。
そのまま這いつくばってリビングへと戻り、「いいい今階段から手が伸びてた!」と親に報告した。
その後親を連れ添って再び廊下に出てみたが、そこには腕の影も形もなかった。
→これが私にとって最初の心霊体験であった。
断じて嘘をついていないと宣言できる。また、夢とごっちゃになったということもない。その後親に半泣きでくっついていたのを覚えている。
② 我が家の毛布を抱えた黒髪の女
次も小学生の頃に体験した話だ。
学校から帰宅後、私は家の中で1人、つかの間の自由を享受していた。
母は仕事からまだ帰っておらず、弟は外へ遊びに出ていた。
外は夕暮れ。まだ電気をつけなくても明るい時間帯のことである。
私はテレビでNHK教育テレビを見ていた。
そして、先程のエピソードと同じく、尿意を催してトイレに立った。
廊下へ続く引き戸の前まで来た時、眼の前に背の高い女がいた。
私はそこで腰を抜かした。(こいついっつも腰抜かしてんな)
彼女は長い黒髪を顔の前に下ろしていて、表情は見えなかった。
服装は覚えていないが、奇妙な点が1つあった。
彼女は、私が寝る時に使っている朱色の模様入りの毛布を、腕にかけるようにして抱えていたのだ。
その姿が、まるで一流レストランのウェイターのようであったことを覚えている。
→ 一応私の記憶の中では現実に起こったこととして認識しているが、これは、夕方の昼寝で見た夢である可能性が高い。
なぜなら、その後、自分がどんな行動を取ったのか、まったく記憶にないからだ。
リビングに引き返してぶるぶる震えていた記憶もない。急いで外に出て誰かに助けを求めた記憶もない。
記憶はそこで途切れているのだ。
また、長い髪の女が、私が普段使いしていた毛布を持っていたというのも夢ポイントが高い。
後で確認したら毛布は寝室の二階にちゃんとあったし、やはりあれは夢だったのだろうか。
しかし1つだけ不穏な要素を付け加えておくとすると、1度目と2度目のエピソード、どちらも場所がほぼ同じなのである。
家の中というだけではない。右手が伸びていた階段も、長い髪の女が立っていたリビングの引き戸前も、ほとんど位置としては同じだ。
もしかしたら、私の家の階段あたりは霊道か何かになっていて、幽霊が時たまそこを通ったりしたのではないかと思ったりもする。
③ 耳元で叫ぶパワープレイ老人
最後のお話は、時を一息に飛んで社会人になってからとなる。
その日、私は出張で県外に出ていた。
夜である。
出張旅費の宿泊手当として返金されるギリギリのラインを探ってホテルを借りた私は、ちょっとした旅行気分で非日常を楽しんでいた。
さて寝るかと思い、フカフカのベッドに横たわり、間もなく就寝。
しかし、夜中に目が覚めた。
しかも、体が動かない。
意識はあるのに指一本動かせず、目を開けることもできなかった。
いわゆる金縛りというやつだ。
だが私は知っていた。金縛りとは心霊現象でもなんでもなく、ただレム睡眠中に脳が覚醒してしまったがゆえに起きるものなのだと。
私は初めて己の身に訪れた不思議な感覚をしばらく享受していたのだが、突然、耳元で大きな叫び声がした。
「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」という、しわがれた老人の声である。
流石に驚いた。体に電気でも走ったのかと思うくらいビクッとしたことを覚えている。
しかし、目を開けることはできない。体も動かせない。声は私の左耳に向かって勢い衰えず叫び続けた。
「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
さすがにうるせぇなと思った。
初見(聞?)時はいきなりのことなので驚いたが、ジャンプスケアを乗り越えてしまうと、そのガラガラ声は不快でしかなかった。
「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
恐怖よりも苛立ちが募る中、ついに私は「あ゛あ゛ッ!」と叫んでガバッと起き上がった。
起き上がることができた。
目を開けると、薄暗い室内には私1人である。
先ほどまで耳元でがなり立てていた老人の姿はどこにもない。
なんだよチクショウ。
そんなことを思いながら、私は再びベッドに潜った。
恐怖よりも苛立ちが勝り、不安よりも眠気が勝った。
大人になるとはこういうことなのかと思う。
→ これも記憶の中では事実であるが、まぁ恐らく夢というか、医学的な用語で言うところの睡眠麻痺中に、耳鳴りかなにかを老人の叫び声と誤認したのではないかと思っている。
もしも本当にそのホテルに居着いた幽霊の仕業なのだとしたら、驚かせ方があまりにパワープレイすぎて残念だ。
なんだよ。耳元で叫び続けるって。
呪うセンスがないくせに幽霊になるな。
さて、以上が私の心霊体験エピソードである。
こうして振り返ると、3つ中2つが「夢」として片付けられるものであるし、特に危害を加えられたでもないし、読み返してもこれっぽっちも怖くない。
すべて事実だとしてもそこまで恐怖を感じないのは、ホラーとして文脈が欠けているからだろうか。
要は因果関係がないのだ。
祠を壊したから祟られたとか、自殺者が出た部屋で首を絞められる夢を見たとか、そういう話なら身の毛もよだつ。
だが、なんの前提もなく、幽霊という存在が突然現れて、突然消えたというだけでは、「結局なんだったんだあれは」とポカンとしてしまうだけである。
今のところそんな予定はないが、もしも昨今のホラーブームに乗っかって一筆したためるとしたら、そのへんの文脈については意識したいところだ。
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