6-2、
「そうかいそうかい。あいつらが件の“タマキン一座”なのかい」
「いやあ、そうですけど……。
「いいんだよ! お笑い四人組には違いないだろう!?」
「まあオシャンティ様の言う通りなんですけどね~。どうしてこう、いつもいつも、オシャンティ様の物言いには古臭さが漂うんでしょうかねぇ~~。行き遅れババアの
ひょろガリ出っ歯男の細いアゴに、目つきの悪い八頭身美女の右アッパーが炸裂した。脱力し床に崩れ落ちる、ひょろガリ出っ歯。
その傍らにすかさず、プロレスラーの如きガタイの男が飛びつき、
「オシャンティ様、オシャンティ様! カマエルと遊んでる場合ちゃいまんねん」
「う~ん……。アッパーでダウンしたのに、どぉしてスリーカウントなんですかねぇ~。全国の女子大生の皆さ~ん、やっぱテンカウントですよねえ。バーボイはそういうところがおバカさ……」
「黙らんかいカマエルっ! カウントとか、今はどうでもええねん」
「そうだよそうだよ。さて、これからどうするんだい?」
金作ら四人と同じホテルの、とあるスイートルームである。
オシャンティはリビングスペースのソファにどっかと腰掛けた。カマエルとバーボイは、リビングの椅子を持ち出してきて、オシャンティの前に座る。
「この県の教育委員会は、ホント使えないわねえ。岩切ってオトコが有能だってんで、ちょっと期待してたのにさ。失敗してブツの行方が分からない、って言うじゃないの。全然ダメじゃないか~い!」
「しゃぁないでっしゃろ。ワイらが動かんとダメでまんねん」
オシャンティが鼻息荒く愚痴ると、それをバーボイがなだめる。
「元々そういう作戦でしたでしょ~。ちゃ~んと作戦通り、順調で~すのよぉ。すんなり隠し場所が判明すればぁ、ブツを強奪する。ダメなら直接本人を脅してぇ強奪する。カ~ンタンな話で~す♪」
「そうかいそうかい。じゃあ、これからどうするのさ。ちゃんと作戦を説明しな!」
「準備は万端で~すよぉ。タマキン宅は既に判ってま~す。近所の藪に、もう
「その燃料ってのは、いつ届くんだい?」
「明後日だそうで~すのよぉ」
「そうでまんねん。明後日午後に、ワテ
「なるほど、そうかいそうかい。じゃあ、燃料の補給が終わり次第、作戦開始だよ! 三日後の午前一〇時、決行っ!」
「「ガッテンだ~っ!!」」
一方、その頃。――
金作の部屋に集まった四人は、彰善の報告に首を傾げていた。
「ガソリン三五〇リットル!?」
「そうだ。さっきの連中、ホテルのフロント経由で、ガソリンを大量に発注してゃがる」
「何に使うんだ!?」
「わからん」
皆、首を傾げる。
「車数台分の燃料……じゃろか?」
「それなら、フツーにどこかのスタンドで満タン給油すればいいよね」
「じゃよなあ」
ノートPCをゴソゴソ操作していた、彰善。ふと、顔を上げる。
「一〇トントラックの燃料が、ガソリン四〇〇リッター程度らしい」
「はあ!? じゃあ、連中は一〇トンクラスのトラックを動かそうっちゅうのか」
「わからん。トラックなら普通車と同じで、スタンドに行って給油せりゃあ済むでなあ。何で、ドラム缶で発注したのか」
「スタンドで給油出来ん状況。……つまり、どっかに運んで給油すっとじゃろか」
「ふ~む。……船、か」
「いや、船舶は基本的に重油だ。ガソリンじゃない」
「じゃあ、重機」
「それは軽油だ。基本的にはな」
「うわ。さっぱり解らん。連中、何を企んでんだか……」
金作は頭を掻きむしる。
しばらくの後、ふと顔を上げ、
「何らかの、謎メカ?」
と呟いた。
「お前は小学生か!!」
あまりに突飛な発想に呆れ、笙歌が笑い出し、ついでにポカリと金作の頭を
「じゃけど、他に考えられんじゃろ。飛行機やヘリも、灯油っちゅうか、ケロシンじゃけなあ」
「メカかよ……。
倫輔まで、そんな事を言い出す。
「そんなメカなんて、まだ米軍にさえ採用されとらんけどな。まあ、軍需産業の研究試作レベルでは色々あるで、今回、一応想定しといた方がいいかも」
意外にも、彰善までそんな事を言い出した。
(丸っきり、ガキの発想じゃん!)
これだからオトコってのは……と、今度は笙歌が頭を抱え込む。
「よし、わかった。ガソリン三五〇リットルなんじゃけえ、何らかの謎メカが出現する事も想定しちょこう。何か現実的な大型機械が使われるかもしれんが、謎メカ想定でありゃあ、大型機械にも対処出来るじゃろう」
と、金作が結論付けた。
おいおいおい……と、ますます呆れる笙歌。
(あっ、でも)
ふと、思いつく。
(アレがあるじゃん)
と。
「そうだよ! 金作、アレ。アレを使えばいいじゃん。
「はっ。そうか!」
「アンタはアレを、急いで特訓しなよ。アレなら一〇トントラックサイズの謎メカでも大型機械でも、対処できる筈だよ!」
「そうか。わかった」
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