ゲームスタート③
さて、30分程が経過した。まだ東の洞窟をクリアするパーティーは見られなかったが、部屋を後にする華に魔王はひとつ仕事を与えた。酒場の掲示板にヒントの書かれた広告を張ってくれ、と。その資料は作成済みで、パソコンのキーをコチッと押すと、すぐさまプリンターから印刷されてきた。その内容はジョブ特性について。魔王としてはせっかくのジョブを万遍なく使ってほしいのか、今回は現在人気低迷中の商人、盗賊、そして希少ジョブである道具屋。この3職種の情報を公開することにした。希少ジョブはさて置き、人気のないジョブの使用率を上げる為に。
商人の最たる特徴はモンスターの落とすルナが増えることである。実は大変にお得なジョブ、時間短縮を図れるジョブなのだが、やはりなかなか伝わらない。商人のレベルが10までは10パーセント、11~20までは20パーセント、21~30までは30パーセントと、レベルアップに伴い増加額も鰻登り。これだけでも破格のアビリティなのだが、加えて戦闘中、戦う以外に『巾着切り』という特技を覚える。敵にダメージを与えることはできないが、ルナを掠(かす)め取ることができる。この金額もレベルと共に上昇。武器、防具の購入がステータスアップに大きく関わるこの世界では、パーティーに1人いても決して損はしないジョブである。確かに魔法は使えない。防具も重装備は身に付けられず、またヒットポイントも近接系と魔導士系の中間くらい。防御面は心許ない。ただし、攻撃面は期待してよし。斧(アックス)を装備できる初期ジョブは戦士と商人のみ。武器アックスの解説はまたの機会に回すが、武器攻撃力の低いジョブではない。
盗賊はスピードを活かした先制攻撃や、ダンジョン内にある宝箱の個数を把握したりすることができる。そしてモンスターからアイテムを盗める点が唯一無二の能力といえよう。素早さは武道家と共に最速を誇り、パーティー内でも1番手2番手で行動できるだろう。攻撃手段は短刀の二刀を得意とするが、威力に関して過度な期待は勧めない。盗賊の魅力は何と言っても『盗む』という特技だ。商人がルナを盗むのに対してこちらはアイテムを頂戴する。その最大の恩恵はやはりレアアイテムを手に入れられること。当然確率はかなり低いものの、この能力でしか手に入らないアイテムもひとつやふたつではない。コレクターであれば不可欠なジョブだ。
さて、最後に希少ジョブについてだが、今回はその内のひとつ『道具屋』。旅立ちの村などの酒場に低確率で現れる希少ジョブ。幸運にも出会うことがあれば迷わず仲間に引き入れるべきだ。勇者の他に同行者3人、酒場での待機組が4人。無視する理由はない。
『道具屋』。気証書部の中では装具擦る確率が比較的高い。魔法は覚えず、近接戦闘も得意ではない。その特徴はまず、道具屋がパーティー内にいると仲間の使用する道具の効果が2倍になる。薬草であれば通常の回復量50ポイントが、100ポイント回復となる。それだけではない。道具の所持数が倍、装備品以外にひとり8個までしか通常はアイテムを持てない。それが道具屋がパーティーにいると16個になるという特異なアビリティーを有する。また希少ジョブでは珍しくジョブが進化し、道具屋、武器屋、万事屋と段階を踏むごとに新しい特殊能力が覚醒していく。
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