第58話 チートvsチート
――ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!
――カカカカカカカカカカカカッ!
――ドゴオオオォォォッ!
ミズハの
冒険者の袋と同じく、物体を
剣、
もしかしたら彼女の能力は、俺の持っている無限袋と同じく、収納に限界がないのかもしれない。
それでいて生物も収納できて、高速射出が可能とかチートが
「カ、カイトさん、これどうします!?
飛んできた2本のショーテルを回し受けで受け止め、投げ返しながらピートが言う。
「と、とりあえず森の中に逃げるぞ!」
まずはターゲットを
俺たちは
「逃がさない。ここで殺す」
ミズハは
そして再び異空間に収納し、俺たちの逃げた方向に
「これで……終わり」
ミズハの声に反応し、異界の
――ボボボボボボボボボボッ!
超高速で武器たちが射出され――周囲の火事で爆炎を
あいつ、俺たちを森ごと
「カイトさんどうします? このままだと僕たちの
「そうなる前に決めちゃいたいところだけど……」
さすがは一流の
「カイトさんの能力を使って何とか……」
「できるといいな……それ」
「バレちゃいましたもんね、さっき。見えていないはずなのに」
長年暗殺者として生きてきた経験からか、ミズハは見えなくても俺たちの位置をある
見えないと言うだけで完全に隙を作るのは難しい。
かといって、見えている状態で隙を作るのはもっと難しい。
俺の能力を使うのは
その上で当てるためのもう
「ピート、なんかアイデアないか?」
「え~? それ僕に聞きますぅ~? 普段の僕ならまだしも、今の僕完全に酔っ払ってますよ? 頭の中アルコールでヒタヒタですよ? アイデアなんか出るわけないじゃないですか、もう♪ 出るのは
「
俺は袋の中から
スライムゼリーを食べたピートの傷が見る見るうちに
念のため治りかけの傷口に酒をぶっかけて消毒しておく。
「ああっ! お酒……お酒が! もったいない! ぶっかけるくらいなら僕に飲ませてくださいよ!」
「こんな状況なのにまだ飲みたいとかホント酒クズだね、お前」
「いーんですかそんなこと言って? さっき
よくないので飲ませた。
クズい方向に頭が回るようになったなーこいつ。
「ぷはあぁぁぁーっ! あー美味い! 本当に美味しい! やっぱ酒ですよ酒。戦争や殺し合い何て下らねえ! 僕の酒を飲めえええぇぇぇっ!」
「そう言って突っ込んで行ったらあいつが飲むと思う?」
「思いませんね。それに僕の酒は僕だけのものです。誰にもあげない」
予想通りの答えが返ってきて安心した。
こんな酒クズは放っておいて、何とかする方法を考えないと。
「僕らの場所、まだわかってないですよね? だったら逃げたらどうです?」
「それも考えたんだけど……」
居場所がわかっていない今、逃げることはできる。
ミズハとの
でも――、
「それをやっちゃうと俺たちの帰りを待っているみんなが危険になる」
俺たちがいなくなれば、当然ここの戦闘は終了。
そうすると次に狙われるのはミーナやアミカ、
目的はわからないが、ローソニア帝国は樹族の人たちを使ってネクタルを作らせていた。
「俺たちを見捨てて、先に逃げてくれればその手も使えるんだけど」
「ミーナさんあたりがゴネそうですよね。ロリマスもなんだかんだでギリギリまで待ちそうですし。
「かもな」
でも、あそこ以外場所がなかった。
森の中である程度場所が開けた上に、敵基地からある程度
――ドゴォッ!
「うわっ!?」
「移動しましょう! ここもやばい!」
能力で透明化し、2人そろって再び逃げる。
途中、
狙いは
「邪魔」
――シュパッ!
持っていた
オークベアは真っ二つに、
「くっ……オークベアの死体が目の前にあるのに肉を取れないなんて……!」
「カイトさんもこんな時に
いや、実際料理を始めないあたりマシだと思う。
一緒にするな。
いや、待てよ?
料理……俺とピート……これだ!
「おいピート、料理するぞ」
「お、何です? 新鮮な食材を目の前にして
「アホなこと言ってないでお前もやるんだよ。協力しろ」
そう、これからする料理はピート抜きでは成立しない。
メニューは女暗殺者のタタキ――と言ったところか。
「つまみが欲しいんだよな? これ食ってしっかり魔力回復させとけ」
袋の中からスルメとクッキーを取り出し、ピートに食わせる。
さあ、暗殺者退治だ。
決着をつけよう。
……
…………
………………
俺たちが準備を終えてもなお、ミズハは
ところかまわず
炎に巻かれ、あるいはミズハ自身に切り殺され、森の動物や魔物が次々と転がって行く。
そんな動物と魔物の
「
ピートの
直後、それらのゾンビたちは生前と同じ速度でミズハへと
「こんなもの、足止めにもならない」
そう言ってミズハは切り捨てるが相手はゾンビ。
斬られたくらいじゃ動きを止めない。
腕や足を失おうと、はたまた首を失おうと、ゾンビ軍団はミズハに向かって攻撃を続ける。
「……っ! めんどくさい! 燃えて!」
――ボボボボッ!
例の弾幕をゾンビに向ける。
ゾンビたちは燃え上り、その動きを
だから、そうなる前に魔法をかけ直す。
肉ではなく、骨に。
「
燃え落ちる肉の
粉々になっても再
ミズハまでの距離、5メートル。
「……! 射出……!」
――ズドン!
狙いは大きく外れて
やはりいくら彼女でも、これだけの物量の前では正確に狙いはつけれないらしい。
距離を
「射出……射出……! く……」
「さすがにそんなわちゃわちゃしてたら当たらないよな?」
「もし当たるようなのが来たとしても、僕が全て
戦争の基本は、相手より戦力を
いくら一人が強くてもできることが限られるのが戦争だ。
数の暴力。
これに勝る戦術などない。
森を焼いてくれたおかげで、こちらは戦力を大量に
決着まであと――3メートル
「射出! 射出! 当たらない……こんな、私が、こんな……」
「一人じゃなければお前にも勝てる。言ったよな?」
あと2メートル
「射出! 射出!」
「もう諦めてくれ。今までの自分を捨てるのは怖いだろうけど」
あと1メートル。
「射出……! 私は、私……本当は、でも、他に生き方を知らない……」
「俺んとこに来い。約束しただろ? 新しい生き方を教えてやる、だから今は眠れ」
――ドッ!
――ゴッ!
「か……」
俺とピートの一撃が決まり、ミズハの意識を刈り取った。
女暗殺者ミズハは今ここで死んだ。
彼女の新しい人生に幸あることを願おう。
安全な場所に彼女を置いて、改めて俺たちは逃げ始める。
そして基地出入口まで来た時、それを見た。
「な……」
「何ですか……あれ?」
俺たちが見たのは小型のロボット――いや、パワードスーツだった。
地球にすら存在しないような超技術を元に作られた
それを着込み
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《あとがき》
ミズハは実は中ボスでした。
2章のラストバトルはここからです。
読み終わった後、できれば評価をいただけたらと。
作者のやる気に繋がりますので。
応援よろしくお願いします!
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