拾壱:寄り道

 僕が学園に向かう途中、一つ寄る所があった。度々話題に出る、角井かくい博士の家である。試作品を一つ提供してくれると言うので彼の生家へ。

 彼は研究で忙しい中、僕に会ってくれるのだと言う。明日には帝都大学ていとだいがくの研究室で、天才科学者の蘿蔔すずしろ れい博士と共同研究をするらしい。

 人工知能にさやを使用した電動スケーターを走らせる。法的には馬と同じ扱いになるので合法の乗り物である。制速40㎞/hを遵守して路を進んだ。

 竹林の中にポツンと立っている一軒家。ここが角井博士の生家である。ログハウスを竹に置き換えた、と言えるお家で、周りには竹、竹、竹。いい感じに見つけづらい、というのがここの特徴だ。

「角井ちゃーん?いるー?」

声をかけたが帰ってこない。だが謎の音が上から。視線を送ると、

「うぇえ?」

初登場が空からの降臨。白衣を着た大柄な男が何か黒色の物を持って、降りてきているではありませんか。

「おひさ、でも何だよ、そんな幽霊を見たような目してさ。」

「おめーのせいだよ!」

博士は地に足を着けた。すかさず僕に説明をした。

「お前さん、物理学はおろか理科全般苦手だったろ?」

「だまれ」

「じゃあ説明できねーな。」

なっ!そっちがその気なら、

「後生だダンナ、俺に仕組みを教えておくれよ〜」

「これはいわゆる反重力装置の一片だ。」

「ハ、ハンジュウリョク?」

「試しに持ってみろ。」

手に渡されたのは黒い球体。握った瞬間、手の形に合った握りやすい棒状に変身した。

「トベッ、飛べ〜!」

「何を言うかね――」

その瞬間、僕の体は中に舞った。

「えええええええええええええええっっっっ!!」

博士は自信溢れたにんまり顔。

「重力に反発さして体を飛ばし、高度に応じて二つの力がつり合うようにする。どうだ、簡単な話だろう。」

自慢げに説明するも、

「わかんねーしとっとと降ろせ!!」

「あらそう?」

ズドン!

ぼふぇ。僕はうつ伏せのまま、竹の葉が落ちた地面に衝突。

「思考制御だから思えばすぐに操作出来る。こいつを上手く改良したのを手持ちの清に送るから、その報告。」

「恐ろしいなこの機械。」

 その後、茶を一杯交わして角井宅を後にした。


『東果さん、保安官に転職したって聞いたよ。どうなの?上司として。』

『位が低いから細かい任務しか与えられないけど、腕はまあまあ。』

『ふーん』

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