しかし私達と同じ時期にこの世界に来て同程度……いや私達は竹中のレクチャーが多少あったから私達以下の魔法知識で良くこの学園に入学したな? 下手したら入学金をドブに捨てるどころか婚活パーティーに嫁を連れて行くようなものだぞ?


 ……ん? 入学金?


 私は小首を捻りつつ。

「あの、カエルさんは入学金とかはどうやって捻出したのですか? お気付きかとは思いますが、我々は我々を召喚した人物が強力なパトロンとなってくれているのでここも無料タダで入れたのですが――?」

 ――但し、私は入学していないし納税もしていない。

「多分ですが、この世界に来た時カエルさんお金持ってなかったですよね? となるとカエルさんにも強力なパトロンとか居るんですか?」

 と思ったので私は質問してみたのだが――

「ああ、それでしたらここに来る前に冒険者ギルドに寄って、小銭を稼いでおいたので大丈夫でした」

『ぼ、冒険者ギルドッ! この世界は冒険者ギルドがあるのですかっ!』

 はしゃぐなゴリラ。なんでお前は一番ファンタジーな存在なのに、一番ファンタジーにテンションを上げるのだ? 自宅警備員を警備する事になった警備員がテンションを上げてるのと同じだぞ?


 ――と。


「まあ、冒険者ギルドと言えば聞こえは良いですが、実際にはただの日雇い労働者の派遣&依頼受注所ですよ」

 竹中だった。……が、言われてみればそりゃそーだ。冒険者ギルドといえば普通はそう……と私が得心していると。

「ホントその通りでしたね。仕事クエストなんて子供の宿題の代行とか女村アマゾンの星5レビューの工作とか、あとは外国の有名人が来たら空港でファンのフリするサクラの仕事とかばっかりでしたからね。はっはっはっ」

『冒険者ギルドなのに驚きのクエストのラインナップっ!』

 朗らかに笑うカエルに驚愕のドク口。――に再び竹中。

「しかしまあ、仕事をこなしてランクが上がれば上級任務であるベヒーモス退治ではなくベヒーモスのうんこ掃除とか受注出来るようにはなりますよ」

『それで上級任務っ!』

 そりゃそうだろう? 仮にベヒーモスクラスのモンスターの脅威から人々を守りたいのであれば最初から警察や軍隊、騎士団にでも入れって話だ。まあ、うんこも脅威といえば脅威だがそれは別として、それらのモンスター達を狩るのは明らかに国の仕事で、一般人の日雇い労働者ぼうけんしゃなんてフン掃除が関の山だろう常識的に考えれば。

 しかし不思議だな……個人的にはベヒーモスのうんこを掃除するより人間のうんこを掃除する方が嫌だと感じるのは私だけだろうか? いや、ワンチャン人間のうんこ掃除がワンチャン最上級任務の可能性もワンチャンある。ワンチャン最も危険が付き纏うからな……。てゆーかこの世界ベヒーモス居るのか。


 ……にしてもドク口とカエルの試験の順番が回ってこないな? これはもしや筆記試験の成績順に実技試験をしていて、この二人が筆記試験のドベだから順番がなかなか回ってこないのでは?

 っと私が推理しているとカエル。

「でも実際冒険者ギルドがあってくれて助かりましたよ。普通、異世界って石鹸とかマヨネーズとか火薬が作れれば、いくらでもボロ儲け出来る設定なのにこの世界は私達が居た世界より文明が進んでいるのでそれらを作ってボロ儲けは出来なさそうでしたからね」

 ほう? つまりこの男は石鹸やマヨネーズや火薬を作る知識と技術を持っているという訳か。まあ、私も程度の低い錬金術を少しだけ出来るが、この世界じゃ全く役に立ちそうにないのが笑える。まあ、前の世界でも使う場面は皆無だったが……。


 ――と、その時だった。


 オナラの勢いでズボンが裂けたような炸裂音が我々の耳をつんざく。

 何事かと思い片耳を手で押さえながら音の方へと向けば――


「アレ? またオレ何かやっちゃいました?」


 実技試験中の生徒の一人だった。

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