第11話 転生?転移?

 ホワイトボードの前で博士が「悪役転生」と書きます。今日は悪役転生についての話をしてくれる予定でした。

 でも、勇太くんは少し迷子になっていました。沢山の設定の中で似たような言葉が転がっているのになんか違うのかな? って。

 勇太くんは手を上げて質問しました。


「博士。そういえば転生と転移ってなにが違うんですか?」

「んほ……。ああ。そういえばそこから話さないといけんかったか」


 博士は勇太くんの質問に、もっと基本的な話を先にした方が良いと思い立ちました。きゅっきゅとホワイトボードを消して、書き直します。


・転生

 悪役転生

 人外転生……etc


・転移

 召喚

 トラック……etc


・その他

 VRMMO



「まず大きな違いじゃが。転生は、現地のファンタジー世界のキャラに生まれ変わり、転移は日本人のそのままが異世界へ行く」

「なるほど、転移はアイデンティティーの維持ですね?」

「クワっ!」

「ひっ!」


 勇太くんが知ったようなことを口ずさんだ瞬間、リバースがキッと睨みつけます。慌てて勇太くんは口をふさぎました。


「うむ、まったく筋違いじゃな」

「すいません……」

「どちらも自分は自分じゃ。中身は同じ日本人じゃ」

「はぁ」

「転生は、転生先の世界の住人として生まれたり、ある年齢で突然前世の記憶が蘇ったりするところから話が始まる」

「まさに転生ですね」

「そして舞台となる異世界は、自分の全く知らない世界に行くか、自分がプレーしていたゲームや小説の世界に行くか、そこでも違うがな」

「結局は異世界ですよね? 何が違うんですか?」

「ゲームや小説の中の世界の場合、主人公がその世界の事をより詳しく知っているという設定になる」

「知識チートですね?」

「そうじゃ、だが結局は両方とも知識チート的な要素は出るんじゃ。全く知らない世界では主人公の日本での知識を詰め込むことが出来るからな」

「なるほど……。じゃあ、何が違うんですか?」

「やはりゲームや小説の世界の方がより強い知識チートが出来る。未来や隠し設定を知っていたりするからな。生き方の知恵を知ってるのとは別じゃ」

「まあ、確かにそうですね」


 勇太くんは腕を組んでうんうんと頷きます。

 さつきちゃんも勇太くんのとなりでニコニコ頷きます。


「小説を読むとき、その世界を知らない読者は主人公が教えていく形で、その小説の世界に入っていく。そして、全く知らない世界への転生の場合は、主人公と読者が共にその未知の世界を切り開いていく、そんな流れになる」

「私は勇太くんと未知との世界を切り開いていきたいな」

「そ、そう?」


 突然のさつきちゃんの振りに、勇太くんがあたふたと答えます。そんな二人をニタニタと眺めながら博士は話を続けます。


「どちらにしても大人の知識を持ち込んだり、知ってるゲームの知識を持ち込んだりして無双する流れが転生じゃ。その世界の知識が無くても赤ちゃんの頃から心は大人じゃからな、こっそり思考錯誤しながら修行を初めて、最強へと登るのも転生の醍醐味じゃな」


 転生の話が終わると、転移についての説明が始まります。


「転移は、日本人がそのまま異世界に行くからな、やはり召喚が多く書かれておるな」

「異世界召喚は王道ですね」

「うむ。あとは善行の後に死んだ主人公や、神様の間違いで死んだ主人公などが神にご褒美やお詫びとして違う世界に転移させてもらえるとか、まあパターンは色々あるが、要はそのまま異世界に行けばいいんじゃ」

「適当ですね」

「概論じゃからな、そのくらいで良いじゃろう」

「そのままの姿で行くと何が良いんですか?」

「さっき話した、異世界転生でゲームや小説の世界に行くか、主人公が全く知らない世界に行くかというパターンがあると話したじゃろ?」

「あ、はい」

「例外もあるかもしれんが、転移物は主人公が突然自分の知らない世界に放り込まれるというのが主流になる。じゃから、自分が突然見知らぬ環境に放り込まれて、そこからどうサバイバルしていくか、そういうストーリーを書きたかったら転生を選ぶ……。そんな所かの?」


 ようやく勇太くんも納得したようです。

 勇太くんが満足したように帰ろうとすると、さつきちゃんがそれを遮り手を上げます。


「勇太くんまだ終わってないわよ? 博士。その他ってまだ話して無いですよね?」

「ああ、これはまた転生でも転移とも違う流れなんじゃがな、VRMMOROGは聞いたことあるか?」

「MMOROGは自由に色んな人が一斉にゲームをするロールプレイングゲームでしたっけ? それをバーチャルリアリティーで遊ぶんですか?」

「まあそうじゃ、今の現代ではまだそんなゲーム無いんじゃがな、将来的にバーチャルリアリティーがもっともっと発達して自分がそこにいる様な感覚でRPGを遊べる時代が来るという設定での話じゃ」

「じゃあ、実際に異世界に転生転移するんじゃなくて、ゲームのプレイの話って事ですよね」

「そうじゃな、でもこのジャンルは通常のプレイ小説というより、プレー中に何かのトラブルなどで、その世界からログアウトできなくなったりして、そのゲームの中の世界で生きていくという流れと考えた方が良いかな」

「確かに、実際にゲームから出れないだけなら転生とかじゃないですもんね」

「そう言う事じゃ、SAOと呼ばれる小説などがその最高峰じゃな、れっきとした一つのテンプレではあるんじゃ」

「SAOかあ~」

「よし分かったかな、うん。今日はこのくらいかな」

「はーい」

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