恋だと思っていた愛のこと。
雑食紺太郎
恋と愛、気付いたわたし
「ふぅーっ」
思わず吐いた空気に、自分の世界に浸ってしまっていた事実に気付く。よくある事だけれど、今回のはいつもより何かが違った気がした。
「愛とか恋とかねぇ、はぁ懐かしいね……」
さっきまで書いていた詩を眺めてそう呟いた。
誰かに向けて書き始めたわたしの詩。
何かに迷って悩んでしまった心に、少しでも届いてくれたら良いなと思って始めた、詩を書く事。
「学生の頃が一番、恋に必死だったなぁ」
書いた詩を眺めながら、感慨に耽ってしまう。
わたしが歩いて来た路は、楽しい事ばかりでは無かった。恋に関しては、嫌な記憶が濃い。
「でも、気付けてよかったなぁ」
過去のわたしは、恋だと思っていた。
けれど、こうして思い返してみると違った事に気が付けたんだ。わたしがしていたのは単なる執着。
恋から発展する愛への執着だったんだ。
「でも、ちょっと遅い気もするけどね……」
思わず零れたのは苦笑いだった。
でも、口にした通りでもある。
贅沢を言えば、その気付きが恋真っ盛りの時に出来ればなと思うけれど。気付けた事に後悔は無い。
そう結論付けて仕舞えば、これまでの恋をきっかけに出来た嫌な記憶も報われる気がする。
「そっかぁ、愛を欲しがってたのかぁ」
またも詩を眺めながら、わたしが本当に求めていたモノが恋ではなく愛だったという事を口にした。
今でも、それは変わっていないだろうと思う。
「だってね、恋ってピンと来ないもんね」
苦笑いを零しながら、わたしはそう呟いた。
恋は一方的なモノであって、愛とは違うんだと感じたのは、わたし以外のカップルを見て感じた事でもある。恋は盲目の言葉通りに、側から見ても恋で出来た関係には綻びがある様に感じた。
「だからなのかなぁー」
だかからこそ、互いに向け合う必要のある愛。
一人だけでは育む事が出来ない、そんな愛が欲しくて堪らなかったのかもしれない。
「本当に、今気付けてよかったよ」
この気付きが今ではなく、何十年後にあったとしたら、もっと心が傷付いて耐えられなかっただろう。
そんな風に思いながら、わたしは詩を眺めた。
この愛に対するわたしの執着心は、今後も付き合っていく事になるだろう。
離れて欲しいと願っても、離れる事なく。
恋だと思っていた愛のこと。 雑食紺太郎 @zasshoku_konntarou
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