第2話 偽りの情報と、それより悪い私の状況
小学校6年生の冬の頃、たまたまトイレでI君と二人きりになりました。
その時、I君が
「〇〇(私の本名)はさぁ、ちんこの皮むけてる?」
と聞いたのです。
私が「ああ、うん」と答えると「スゲェ」と言われて会話は終わりました。
もしI君と会ってもこんな話は絶対しないのでここで謝っておきます。
ごめん、ありゃ嘘だった。
意図的に嘘をついたわけではないのですよ。
当時の私は包皮が剥けているというのがどういう状況を指すのかが分かっていなかったのです。
すでに勃起の経験はありましたが、勃起しても包皮の出口部分(包皮輪とか包皮口とか呼ばれるのですが)はまったく開かず。包皮が伸びてはいるのですが痛くもなんとも無いので、みなそういうものだと思っていたのです。
その後中学生、高校生と育っていくにつれ、人づてなりネットなりで断片的な知識を得ていくのですが……そこに問題がありました。
当時広がっていた情報というのは、あまり正確なものではなかったのですね。
平常時は亀頭部が包皮に覆われているが、必要な時には亀頭部を露出できる状態を日本では仮性包茎と呼び、治療が必要な状況だとして多くの美容整形外科医が対応手術をしてくれます。
が、この状態は医学的には全く正常。不潔になるなどのデメリットがあるという主張もありますが、必要な時に剥けるのだから剥いた状態で洗えばいいワケでね。
有名美容整形外科医T氏が、不安を煽って手術数を増やして儲けるために広げた嘘なので、T氏がそれを広めた日本と韓国ぐらいでしか問題視もされません。
医学的にも問題となる『包茎』、日本では真性包茎と呼ばれるのは包皮を剥こうとしても剥けない状態のこと。
ただし、ほぼ全ての男の子が、生まれた時にはこの状態。成長の過程で自然に剥けるようになっていくのです。調査によると、11歳 - 18歳で、63 - 93%は亀頭の露出が可能になるとのこと。男の子を育てている保護者の方がは、どうか焦らないようお願いします。
最近は、こうした正しい情報にアクセスしやすくなったので、気にする若者が減っている、とWikipediaには書いてありました。実に良い事だと思います。
逆にいうと、昔はそうではなかったということ。かくして、あやふやな情報を集めた私は、仮性包茎は不潔で治療すべき対象だと刷り込まれ、さらに自分の状況はそれより悪いという理解をしてしまった訳です。
なんとかして剥くべきなのだと試してはみますが、平常時はまったく剥ける様子はありません。勃起時も、包皮輪が直径5ミリメートルほど開くのがせいぜい。
高校生の頃に、マスターベーション中に事故で剥けてしまったことがあります。
でも、包皮輪のサイズが大きくなったわけではないので、亀頭の下で締め付けられる状態で、ものすごく痛いのですね。
これはヤバい、と本能的に悟り、慌てて手で戻しました。
実際、この状況のまま放置すると血が貯まって戻らなくなってしまう可能性があります。その状況が嵌頓包茎(かんとんほうけい)で、最悪の場合壊死します。
お子さんでも本人でも、無理に剥いて戻らなくなった時はすぐに病院へ。
恥ずかしいのは恥ずかしいでしょうが、陰茎が丸ごと無くなるよりはマシなはず。
私の場合は手で戻せたので誰にも知られることは無かったのです。良かったのか、悪かったのか。
戻すのに夢中であまりしっかりとは観察しなかったのですが、亀頭部には白い垢がこびりつき、明らかに不潔だったことは覚えています。
考えてみれば排尿する時、尿道口と包皮口があっている事はほとんどないのです。出た尿は包皮の中に一旦溜まり、それが時間差で包皮口から出ていくのですが、つまりその間陰茎は尿に浸された状態なわけで。そりゃ不潔にもなるよね。
なので、剥くことは諦めましたが、シャワーの水を包皮の中に入れてもみ洗いするなどで、せめてある程度綺麗にならないかなと頑張ってはいました。
大学に進学して一人暮らしも始めると、ネットも自由に使えるようになり、情報収集には制限がなくなります。
しかし、偽情報に騙されてるところには変わりなく。このころ、私は自分をカントン包茎だと思っていたのですよ。なぜなら、有名美容整形外科のHPで、剥けるけど痛いのはカントン包茎だと書いてあったから。
手術ができる、というか手術すべきとする情報は山ほどあったのですが、お金がかかるので。真正包茎なら保険が効く、仮性包茎だとダメという情報もあったのですが、カントン包茎については書いておらず。
保険が効くのか効かないのか。効かないとしたら高い手術費を10割負担。効くならバイト代などで払えなくは無いですが、手術したことは保険を通して親バレします。
親に相談しろ? 出来たら黒歴史じゃないんだYO!
そういうわけで、カントン包茎で不潔だし勃起時のサイズも小さいし、これはダメだなと半ばあきらめの境地で大学時代を過ごしました。
社会人になると大学時代よりはもう少し女性との接点も増えましたが……状況は何ら変わっていないわけで。
さらには会社事情でちょくちょく転勤もあって落ち着かない日々が続き、30歳を迎えます。かくして立派な(?)魔法使いの出来上がり。
本人は概ね諦めていたのですが、そうはいかないのが私の両親。
30歳になった息子がいつまでも独り者なのは心配になるのは当然です。
いやね、本人は「まだ5歳上の姉が結婚してないのだし」とゆるーく構えていたのですよ。
しかし、いつの間にか姉は一生結婚しない宣言をして親もそれを認めていたのです。
かくして、圧力の方向は私に。帰省した時に一言二言聞かれるだけというかなり緩いものではあったのですが、ね。
信念をもって結婚しない事を決断した姉とは違い、私の方は特に信念などないというか、できるんなら結婚したいわけで。
社会人になってそれなりに経ったので、少ないながら貯蓄もあります。10割負担でも払えなくは無いし、保険を使っても誰にもバレません。
つまり、婚活を頑張ってみる第一歩として包茎対策をしてみるかという気になったわけですね。
さらに、もう一つ福音もありました。TENGA EGGを使用してマスターベーションしていた際に、また包皮が剥けたのです。高校生の頃と違い、痛みはあるもののかなりマシ。TENGA EGGは半透明なので、その状況もある程度観察もできました。やがて痛みが強くなってきたので戻しましたが、高校時点よりは少し状況が改善しているのではないかという期待が持てたわけです。
このままTENGA EGGの使用を続けることで、仮性包茎にはなれるかもしれないが、ものすごく時間がかかるかもしれない。手術に踏み切ればさっさと終わらせることが出来るけど、お金はかかるし感度が悪くなるなどのデメリットもあるらしい。
はたして、どちらを選ぶべきか。
迷った私はさらに情報収集を行い……2ちゃんねるで、ある書き込みを眼にするのです。
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