55-寝坊助は籠の中
現実で目を覚ました雷亜は少しの間だけベッドの上で己の家の天井を見つめる。
ふと腹の上に視線をやるも重みは感じず騒がしく迎えてくれるマオたちの姿は無い。
「こっちで起きるのが嫌になりそうだ…」
ボソリと呟きながらベッドから体を起こせば大きな伸びをしてから欠伸を漏らす。
ベッドを降りると食事を摂るべく冷蔵庫から卵と厚切りのベーコン、ミックスサラダの袋を取り出す。
食パンをトースターにセットしてからサラダを袋から開けて皿に盛りつけると卵を割り軽く溶いておきつつ、ベーコンを賽の目に切りフライパンを火に掛ける。
手を翳し熱を放つ事を確認してからフライパンの上にベーコンを投入し、ほんの少し焦げ目が付くまで炒める。
サラダの上にベーコンだけ避けるように乗せると、残った脂で溶き卵を焼いてスクランブルエッグを作ると軽くブラックペッパーを掛ける。
「ドレッシングなんにするかな…。 シーザー、イタリアン…シーザーが良いか」
皿にスクランブルエッグを盛り付けてから火を止めるとフライパンの熱が取れてから洗おうと一旦そのままガス台の上に置いておき、皿を持って冷蔵庫を開けると扉の棚に置いてあるドレッシング類からシーザーを手に取り閉める。
焼けたトーストを皿に乗せてテーブルへと持っていき席に着くものの忘れ物をしていたことに気づき立ち上がると冷蔵庫へと戻る。
「マーガリン忘れてた…」
トーストに塗る用のマーガリンを取りだしては席に戻り焼けている食パンの片面に塗る。
いただきますの礼をしてからいざ食べんとトーストを手に取るものの今度はフォークを忘れたことに気付き、ついでだからとマーガリンを冷蔵庫に戻すために手に持って席を立つ。
「…いかんな。今日は色々と忘れっぽい気がする」
マーガリンを冷蔵庫にしまってからフォークを持ってテーブルに戻ると苦笑を浮かべる。
TVを付ければ何時ものArcaの情報番組が流れているのを横目に見つつ、テラベルタに関する情報が流れている中に昨日のアラクネの情報が流れ始めると思わず画面を凝視する。
〈どうもー!皆さんおはようございます!本日も元気に情報を送信していきますよー!〉
〈情報と言えば、こちら!皆さん会うことは出来ましたか!?昨日、テラベルタのペット・使い魔販売所の秘密のお店 アラクネに謎に包まれた店員さんが現れたことを!〉
〈ゴーグルを着けたちっちゃくて可愛い白いもふもふの小動物と柴犬型のペットが店員さんのエプロンのポケットから顔を出してお迎えしてくれたらしいですよ!〉
〈店員さんもピンクのエプロンと頭巾が似合うイケメンさんらしくて撮影させて欲しいとお願いをしたらしいですが、素晴らしい笑顔で断られペットくん達にこれでもかと悩殺ポーズをさせていたらしいです!〉
〈でも、盗み撮りしても姿が写って居なかったらしいので撮影は許可を出した時のみ撮れる設定をした私達と同じプレーヤーさんかもしれませんね?〉
〈そう言えば、レジの方では蛇と蜥蜴くんがゲストに出てきて算盤を弾きながらお釣りをくれたらしいですよ!〉
〈うわーん!私も見たかったー!こう見えて爬虫類大好きなんです!アレ?でも…この三匹どっかで見た事あるような…?〉
〈確かに…。もしかして、ペット・使い魔掲示板を騒がせたあの三匹…?〉
〈いやでも、そんな偶然ありませんよねぇ?〉
TVを消してはあまり目立ってはいけないなと思いつつ食事を摂り終えると手を合わせご馳走様を告げてから流しでフライパンも一緒に洗う。
その他の家事もこなしてから雷亜はカプセルを開けて寝転がるとArcaを起動する。
自分の部屋とは打って代わり木でできた天井や壁を見つつ身体を起こせば太腿の上で三匹寄り添って寝ているのを見て笑みが浮かぶ。
「やっぱり、寝起きにマオ達を見ないと落ち着かないな」
起こさないように気をつけながら三匹の頭を順番に優しく撫でてから今日の予定を考える。
ラルクから神殿に行ってもいいと許可が出たので必ず向かう事は決めている。
それ以外となると思い浮かばないので取り敢えずは起きるまでインベントリの確認をする事にする。
「えっと…先にインベントリを見るか…この前貰ったタマゴの孵化予定は…36時間後って言うと…一日半って言うところか。夜に孵化する事になりそうだな」
タマゴの孵化日を確認しては夜ならば問題なくちゃんと立ち会えるなと思うもふとマオへと視線をやれば申し訳なさが込み上げる。
優しく手のひらの上に収めるように持ち上げては生えている毛に沿って優しく撫でる。
もぞもぞとマオが動き顔を上げれば指を掴んで甘えるように擦り寄るもまた寝てしまうのを見て思わず笑ってしまう。
「昨日は酒もよく飲んでたし、宿から出て行けるのは何時になるかな…」
気持ち良さそうに寝息を立てる三匹をどうにかして連れていこうかと考えれば前にアルマに貰ったある物を残してあった事を思い出す。
インベントリからマオ達がタマゴの頃に使用した大きめの籠を取り出してはタオルを敷いてから一匹ずつ起こさないように寝かせるとライアはベッドを降りる。
「後は、俺が起こさないように運ぶだけだな…。走るのは絶対アウト」
三匹を寝かせた籠を持ち立ち上がると細心の注意を払いながら宿屋を出て神殿へと向かうのだった。
因みに、ミュラの送迎係はアランが正式にソアラから任命されたのでライアはお役御免となったらしい。
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