生きるということ、立ち向かうということ
- ★★★ Excellent!!!
帝国の植民地であるアジェンナ国。
ちいさな村で生活をする農民たちはとても貧しく、働いても働いてもよくならずに帝国の圧政に苦しむばかり……。
妻や幼い子どもたちと暮らすラドゥは村のリーダー的な存在。彼は朴訥で弁が立つ人間ではないのですが、気骨のある若者です。
彼は、苦しい生活にも気力を失うことなく一生懸命に働き、そして村をよくするためには何が必要なのかを考えているのですが、しかし搾取されるばかりで暮らしはいっこうに良くならないのが現実でした。
そんなとき、村でとある事件が発生し、そこからラドゥは窮地に立たされます。
かつてともに学んだ仲間との再会、大切なものを失ったラドゥはある選択を迫られるのですが――。
この物語は、ひとりの若者が過酷な環境下のなかで必死にたたかい、悩み苦しみ、そして再生へと希望を抱いた生きた証が描かれています。
妖怪や妖人といったファンタジーの側面もありますが、人と人とのつながりを密に描いた人間ドラマがお好きな方には、ぜひ読んでいただきたい作品です。