第8話

 人知れず一騒動あったが、入学試験は滞ることなく続いていく。


 『筆記試験の会場案内を致します。案内に従って各会場で試験を受けてください』


 まず、第一試験である筆記試験。ゲームでは難度によってはプレイヤーが解くことも出来た試験で、プレイヤーの正答率はそこまで高くないものだった。そんな試験だが、この世界の人にとっては殆ど基本的なことしか出てこない。そうでなければ、試験に落ちないという噂が出回ったりしない。


 しかし、今年に限っては異例で試験の前に二人の棄権者が出ている。受付の試験官曰く、そこまで才能があるようには見えなかったので問題ないだろうとのこと。

 退学制度がある以上、一定の才を持っていないものは蹴落とされていく仕組みがある学園の試験官、つまりかなりの目利き、そんな試験官がシャルロットの力を見抜けなかった大きな要因は一つ。シャルロットの扱う力が彼らとは全くの別物であることだ。



◆サクラ視点


 筆記試験が終わり昼休憩の後に実技試験が始まった。私は実践試験の担当なので、実技試験が終わった生徒がこちらに来るまで考え事をしていた。


 あの黒い力は、昔聞いたことのあるお伽噺に登場する魔王が持っていた力に似ていた。

 世界を破滅へと導く、最凶の力と……。


 けれど、疑問に思う点も多い。まず第一に何故王族にしか無いはずの赤目なのか。第二にあれだけの力を持った逸材が権力者に見つかっていないのか。

そして、何故ザック君を攫ったのか。


 わからないことだらけだ。

 

 「珍しく悩んでおるな」

 「……学園長」

 「どれ、試験生が来るまでまだあるじゃろ。話してみろ」

 

 学園長。五大魔女の一人。

 世界で右に出るものがいないほどの探知・解析の天才。一度彼女の前に、否彼女のその広大な範囲に広がるエネルギーによって、国内の人間ほぼすべての敵性魔術を把握しているという化け物。


 「試験生の一人が使っていた力について考えていました」

 「ほぉ……?」

 「その試験生はお伽噺に出てくる魔王の力に似たものを使っていました」

 「はぁ、そうか。災いを呼ぶとされる力を使う者か」


 あの学園長が珍しくため息を吐く。あの黒い力はそれほどのものなのだ。


 「早急に騎士団長に連絡。それから、その生徒どこにおる?」

 「それが、私にも分からないんです。ザック君、赤龍を単独討伐した子を攫って、その後受付の方に歩いていく所までは見ていましたが……」

 「なるほどな、逃げられた……か。ちと、出かけてくる。試験のこと頼んだぞサクラ」

 

 そう言った瞬間、学園長の足元に魔法陣が瞬時に形成され、青白い光とともに学園長が消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やっぱりクソゲーだ!! @23232323232

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ