癒し処 爽風へようこそ
永嶋良一
第1話 癒し処 爽風
「あれ、こんなところに喫茶店があったっけ?」
入口は京町家のようなたたずまいだ。玄関は『つし二階』と呼ばれる京町家独特の低い二階建て構造だった。『つし二階』の二階部分には
私は三千院
私は首をひねった。『爽風』は何と読むのだろう?
「ねえ、安祐美。あれ、何て読むのかしら?」
「うーんと・・そうふう?・・さわやかな かぜ?・・じゃないなあ?」
安祐美が携帯を操作した。
「あ、分かった。『そよかぜ』だよ」
「ふーん。素敵なお名前ね。『いやしどころ そよかぜ』なんて」
「
安祐美が私の手を引っ張った。安祐美のくっきりした顔立ちが人目を惹く。大きな瞳、ちょっぴり赤い頬、柔らかそうな唇。ショートボブの髪がボーイッシュな安祐美にとてもよく似合っていた。ピンクの花柄のブラウスがかわいい。チャコールグレーのパンツが長い足にピッタリだ。いつも長い髪を白いシュシュで束ねて、地味なブラウスを着て、地味なロングスカートを履いている私とは対照的だった。
背が高く活動的な安祐美に比べて、小柄な私はのんびりタイプ。何をするのもゆっくりで、いつも安祐美に叱られている。そんな好対照の二人は大学入学と同時に意気投合し、今ではいつも一緒に行動する仲だった。
私は新しいお店は苦手だ。だって、どんな人がやっていて、どんな人がお店の中にいるのか分からないんだもの。
「待ってよ。安祐美。お店に入るのは、お店の中を外からよく見てからにしようよ」
そう言う私を安祐美がいつものように叱った。
「
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