第73話・モモ達のその後
ある日の放課後。バーノと一緒に帰る約束をしていたジネベラは、あるものの存在がいないことに気が付いた。
「モモちゃんはいないの? どうしたの?」
「キミドリと一緒に学園裏の林に返した。成人したら返すことを学園長との約束で保護していたから」
「モモちゃん、具合が悪そうだったのに大丈夫かしら?」
「そのことだけど、実はモモは妊娠していた」
「妊娠?! まさかキミドリの子供?」
驚くジネベラにバーノは頷く。
「爺さんにもう二匹を手元に置いておくよりは、自然に返した方が良いんじゃないかと言われてね」
まだ子供だと思っていたら、きみが言うとおり彼らの成長は早かったよ。と、バーノは言った。
「寂しくなるわね」
「そうだな」
「じゃあ、学園裏の林に二匹はいるのね?」
「うん。今から行ってみる?」
その後のモモ達が気になっていたジネベラは頷いた。西日が差している中、学園裏の林にやってくると
「キキッ」と、聞き覚えのあるような鳴き声が聞こえた。
「モモちゃんなの?」
その言葉に反応するように何かが飛来する。それはバーノの肩に乗った。
「キミドリちゃん?」
バーノの肩には、黄緑色のフクロモモンガが乗っていた。
「久しぶりだな。キミドリ。元気か? モモは?」
バーノの問いかけに応えるように、キッと鳴く。そして肩から近場の木に飛び移り、こちら側を気にするように見てきた。
「モモはそっちにいるのか?」
キミドリは木に飛び移りながら「こっちだよ」とでも言うように振り返る。そのキミドリの後を、バーノとジネベラは追った。
するとある大木の上で、キミドリは動きを止めた。そこには一つの巣があって、モモらしきピンク色の存在が確認できる。そこから黄色や、緑、青などの小さな存在が見えた。
「モモちゃん。子供が生まれたのね?」
モモに変わってキミドリが、そうだとでも言うようにキイキイ鳴いた。
「おめでとう。キミドリちゃん、これであなたもお父さんね」
可愛い存在は、親になっても愛らしかった。その子供だから尚更、可愛いのは当然だ。二匹の子供の様子は遠目にしか見えなかったけど、二匹が元気で過ごしていると知ってジネベラは安心した。
「これは土産だ。おまえ達、好きだっただろう?」
キミドリがバーノの肩に飛び乗ってきたので、バーノが木の実の入った小袋を差し出すと、それを口に咥えて巣の方へ飛んで行く。何やらモモと話しているのか、キイキイと鳴き声がした。
「仲良くやっているようで安心したわ」
「二匹の様子が気になったらここにまた来るといいよ」
「そうね。そのうち、この林は七色モモンガだらけになっちゃったりしてね」
「モモ達の元気な姿を見ることは出来たし帰ろうか」
「うん」
歩き出すとバーノが手を差し出してくる。その手を握り返すと、キミドリが後を追うように飛んで来た。
「バイバイ。キミドリちゃん。またね」
「キミドリ。モモを大事にするんだぞ」
子育ては大変だからもう戻ってやれと、バーノに言われてキミドリはキィッと、鳴くと飛び去って行った。
その後。学園裏の林の中を元気に飛び交う七色モモンガ達の姿が度々、目撃されるようになって、学園の生徒達の憩いの場となっていくことを、この時の二人は想像もしていなかった。
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