第72話・元の姿に戻りました
長期休暇明け、ジネベラの容姿は元に戻った。黒髪に焦げ茶色の瞳。自分ではそれが一番、見慣れているし、今までの姿は借り物のように感じられた。
学園ではいつものように過ごしている。クラスメート達には距離を置かれてはいるが、陰口を叩かれることはなくなっていた。一人、二人と声をかけてくれる人が現れ始めた。
彼女達はジネベラと同じ低位貴族令嬢で、噂に惑わされて悪く言ってごめんなさいと謝ってきた上に、友達になってくれる? と、聞いてくれた。
前からジネベラの事は気になっていたが、見た目が変わってから、周囲の目が怖くてなかなか声がかけられなかったのだと言った。ジネベラは一時、アヴェリーノ殿下に目を付けられてお気に入りとされていたことがあるから、それを面白く思わない高位令嬢達が悪口を吹き込んでいたせいもある。その高位貴族令嬢達を前に、逆らうことが出来ないのはジネベラも良く分かる。
こうして声をかけてもらえるようになったのは、アンジェリーヌのおかげなのだろう。ジネベラがアンジェリーヌと交流することで、それまでジネベラを馬鹿にしてきた高位貴族令嬢達は、何も言わなくなってきた。
ジネベラを批難して、もしも、そのことをオロール公爵令嬢に告げ口でもされたなら、オロール公爵家から不興を買うことになる。そのことを恐れたのに違いなかった。
ようやく念願の友達が出来てジネベラが泣きそうになっていると、声をかけてきたクラスメート達がオロオロし出す。
「ごめんね。ごめんね」
「今まで無視した形となって……。辛かったよね?」
こちらを気遣う気持ちが伝わってくる。彼女達も不本意だったのだと知れた。それだけでジネベラは満足だった。
昼食時間。声をかけてくれたクラスメート達が一緒に食事しようと誘ってくれたが、先約があるからと断った。クラスメートのお誘いは嬉しかったけど、昼食時間はバーノとアンジェリーヌと過ごす時間と決めているからだ。
昼食時間には二人に今回のことを話そうとジネベラの気持ちは浮き足だった。ようやく友達が出来た。二人は自分のことのように喜んでくれるだろうか?
中庭に向かえばいつも通り、二人が待っていてくれた。
「「ベラッ」」
陽光に照らされている中、バーノとアンジェリーヌが手を振ってくる。ジネベラは二人の元へと駆け出した。
この後、バーノから告白されて、アンジェリーヌに冷やかされることになろうとは思いもせずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます