第66話・この二人仲が良いのです
「あの巨大噴水。見事だね。両脇に階段があって上り下り出来るのだね」
「あれはこの国一番の大きな噴水らしいです。夜になるとライトアップされて綺麗なの。近づいてみますか?」
「良いのかい?」
「はい」
ジネベラは御者にここで馬車を止めてもらい、降りて歩く事にした。御者には馬車止めの場所で待っていてもらうことになった。
王都の大広場に鎮座する巨大噴水を目にしたカナレッドは息を飲んでいた。
「圧巻だね」
彼の感想が噴水の大きな水音に紛れて消える。そのせいもあり背後から近づいた者に気が付くのが遅れた。
「ベラッ」
「……!」
急に肩を叩かれて驚いて振り返ると、アンジェリーヌとバーノの二人がいた。
「何だ。アンジェとバーノじゃない。ビックリした」
「そんなに驚くこと?」
「前にちょくちょく殿下から背後から呼びかけられたり、肩を叩かれていたりしたから……」
軽くトラウマになりかけていると、言いかけたジネベラの様子で察したのか、アンジェリーヌが謝ってきた。
「そうだったの。ごめんなさい」
「ベラ。こちらのご令嬢とご子息は?」
「レッドさん。こちらはオロール公爵令嬢のアンジェリーヌさまと、その従弟のバーノくん。どちらもわたしにとって大切な人達よ」
「初めまして。僕はカナレッド・モリゾーです。こちらのジネベラ嬢のお屋敷に、昨晩から滞在させて頂いています」
「レッドさんは叔母さまの商会で働いているのよ」
「まあ、キャトリンヌさまの?」
アンジェリーヌは目を輝かせる。その隣には「また、始まったよ」とでも言いたげな様子のバーノがいた。
「キャトリンヌさまのことを色々と聞きたいわ」
「僕で構わないのなら」
微笑むカナレッドに、魅入るアンジェリーヌ。人当たりの良い笑顔を浮かべる端正な顔立ちのカナレッドに、お人形のように綺麗な姿のアンジェリーヌが、破顔して並ぶと案外お似合いのような気がした。
その二人の脇でジネベラは、バーノと囁きあった。
「アンジェには、薬師長と叔母さまの関係は伝えたの?」
「伝えていないよ。いずれは分かる事だろうけど、僕の口から言うよりも、そのうちオロールの爺さまから話があると思うから……」
コソコソ話しているのを、アンジェリーヌ達に注目されていたらしい。
「あなた達、仲が良いわよね。二人きりで何の話?」
「内緒。ね、バーノ」
アンジェリーヌが、二人の仲を嫉妬するように言ってくる。この場で真相を明かすわけに行かないのでその言葉で濁そうとしたら、アンジェリーヌはニヤニヤしてカナレッドに言った。
「この二人ってまどろっこしいんですよ」
そう言うなり、カナレッドに何やら耳打ちする。カナレッドとは初対面なはずなのに気が合うようだ。カナレッドも悪い気はしていないようで、彼女に微笑みを返していた。
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