第30話・最後にご忠告申し上げます

「ええ。あなた方と係わりあうようになってから、色々と変化がありましたよ。もともとわたしは人見知りが過ぎて周囲から浮いていましたが、殿下達と交流するようになったことで、クラスメート達には嫌われました。仲間はずれにされましたし、悪口も叩かれました。未だに殿下に振られて良い気味だという人もいます」


「それは虐めじゃ無いか。なぜ、早く言ってくれなかった。早急に手を打ったのに。今からでも遅くは無い」




 オラースが、ジネベラの現状を初めて知ったようで驚く。ジネベラは呆れた。その要因を作ったのは彼らなのに。




「皆はたかが男爵令嬢のくせに、殿下に言い寄るだなんて、はしたないと言ったのです。わたしから殿下に言い寄った訳でもないのに、殿下に声をかけられたことさえ、彼女達にとっては許せないことなのですよ」


「そんなにも狭量なのか。女子とは」


「あなた方がそれだけ注目を集めているということですよ。妬み嫉みは貴族社会では当たり前ではないですか。それで低位貴族の娘であるわたしは、身の程を弁えてあなた方の側から離れようとしたのに、あなた方がいつも教室までやってくるから、皆から色々言われて入らぬ嫉妬を買い迷惑でした」




 ジネベラは今までの鬱憤を晴らすように言い切った。そこに後悔はなかった。




「申し訳なかった。そんなことになっていようとは考えもしなかった」


「低位貴族の娘であるわたしですらそのような状態なのです。高位貴族令嬢で殿下の許婚であるアンジェは、もっと大変だと思いますよ」


「……そうかも知れない」




 オラースはハッとした様子をみせる。分かってもらえるのにここまで時間を要したことでジネベラは、彼の先は短いような気がしてきた。




「最後にご忠告申し上げますが、アンジェへの不敬な発言は直された方が宜しいかと思います。聞いていて不愉快ですので。では失礼」




 オラースはもう引き止めなかった。校門前まで来るとバーノが駆け寄ってきた。




「今まで見ていたの?」


「何かあったら側に寄ろうと思ったけど、ベラが口だけ男を言い負かすのに聞き入ってしまった。ごめん。でも、その姿が格好よかったよ」




 実はこの後、バーノと王都にある洋菓子店に行く予定だった。アンジェリーヌに教えてもらったのだ。彼女も一緒に行く予定だったが、急用が出来たとかで、ふたりで向かうことになっていた。


それをもの凄く楽しみにしていて、気が急いていたのだけど、オラースに足止めをくらいジネベラは、軽く苛立ちを覚えていた。

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