勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕

第1話


信じてた


ーおお!このお方達は勇者様と賢者様じゃ!

ーえ!?僕達が!?

ーやったねクラウス!でも、一緒にパーティー組む子達が可愛くても浮気しちゃだめだからね!

ー僕にはリリアしかいないよ


信じてた


ー勇者様~次はリリア様じゃなくて私とデートしてく ださいよ~

ー聖女!抜け駆けか?次は私の番に決まっているだろう!

ー三人とも違う。次…私の番

ーははは…困ったな。リリアどうしよっか?


信じてた


ーリリア様勇者様を独り占めにするのは少し違うんじゃないですか?恋人みんなで分け合わないと

ー恋人?皆?何それどういう事?

ーん?このパーティーは勇者の恋人で結成されてるだろう?知らなかったのか?

ー皆、勇者の恋人

ー…え


信じてた


ークラウス!皆恋人ってどういう事!?私だけって言ってたのに!

ーいや!違うよ!?こ、告白はされたけど返事もしてないしまだ付き合ってない!皆が勝手に言ってるだけだよ!

ー"まだ"?…付き合う気があるって事!?それに何で返事してないの?私がいるからその場で振れば済むことでしょ!?

ーでも、今パーティーの仲が悪くなるのはちょっと… せめて魔王討伐までは断れないよ

ーずるい。それを言われると何も言い返せないじゃない…

ーごめん。でも信じて、僕にはリリアだけなんだ

ー…信じるわ。でも返事の保留は我慢するけど恋人関 係はハッキリ否定しておいてね。


…信じてた


ーリリア!何で最近避けてるの?マリア達の

事なら心配しないで!僕はリリアが1番好きだから!

ー嘘つき

ーえ、なんの事?僕リリアに嘘なんて

ー嘘つき!あの子達また自分はクラウスの恋人だって 言って来たのよ!?否定しておいてって言ったじゃない!

ーそれは、言っても聞かなかったんだよ。リリアわかってくれよ。魔王討伐までだから…

ーデレデレしてる人の言葉なんて聞きたくない!クラ ウスの優柔不断な態度があの子達を付け上がらせるのよ!それに人の男に色目使うなんてあの子達おかしいわ!

ーリリア!!言っていい事と悪いことがあるだろう!

ーなんで!なんで、あの子達を庇うの…

ーっそれは!…仲間の悪口はダメだから


信じてたのに


コンコンコンッ

ークラウスいる?こないだの事謝りたく、て…え。なに、これ


ーッ…ぁ…んっ

ークラウス様ぁ!…アっ、そうです!初めてっ…ぁっ にして、は上出来ですぅっ!これでリリ、っア様も本番は安心ですわぁっ…んっ

ーはぁ、はぁ、ほんと?…っ!え!?リリア!?こ、これは違うんだ!浮気じゃなくて練習だから!

ーリリア~勇者の初めてもらってごめんな?でも童貞と処女じゃぶっつけ本番の初夜なんて上手くいかないだろ?だから練習相手になってやったぞ!感謝してくれよな!

ー安心していい。勇者はこっちの方も勇者

ーリリア、ごめん誤解しないで!愛してるのはリリアだけなんだ。これは本番の為の練習だから、リリアの為なんだ。分かるよね?

ー気持ち悪いっ!触らないでっ 離して!

ーあっ!待ってリリア!行かないで!リリアーーー!!!




謝りに行ったら恋人勇者とパーティーメンバー《聖女・剣士・盗賊》が乱交してたとかこんな裏切りある?ほんとに気持ち悪い。今の今までクラウスのこと信じてたのに。

…ほんと馬鹿みたい。私だけって言ってたのになぁ。悲しくて悔しくてがむしゃらに走って気がついたら飲み屋でやけ酒してた。



「ーって事があったの!信じられないでしょ!?」


「ああ」


「ああ。って!もうちょっと何か言う事ないの!ほんとに私の話聞いてんのぉ~?」


「はぁ、いいじゃねーか。そんな最低な男と別れられたんだから」


「そーだけどー!悔しいじゃん。男の人って1人じゃ満足できないのかなぁ。私1人だけじゃダメだったのかなぁ!!うぇーん!もう一杯ください!!」


「…」


「…なによ、そんなギラギラ飢えた狼みたいな目して。ん?狼?もしかして、それ狼眼ウルフアイ?あんた神狼族ウォセカムイ?」


「…そうだとしたら何だ?お前も呪われた一族とでも蔑むつもりか?」


「はぁ!?そんな事するつもりないわよ!バカにしないで!私はただ…ただ神狼族みたいに一途に愛する事が素敵だなって、愛されてみたいって思ってただけなのにぃ~!うぇ~ん」


「な、泣くんじゃない!……そうか。お前はやはり他の奴とは違うな。一目見たときから惹かれていたのは間違いじゃなかった…」

「俺の運命の番」


「何ごちゃごちゃ言ってんのよぉ!もっと飲みなさい!私の酒が飲めないって言うの~?」


「ちょ、待て!そんなに飲ませるな!おい!」


「はははは!聞こえな~い!大将もう一杯!」









◇◇◇



チュンチュンッ





「やってしまった」


目が覚めての第一声がそれだった。

頭のズキズキとした痛みと腰の鈍い痛みに気付かないふりをしながら辺りを見渡すと見覚えのない部屋に散乱した下着と使用済みのスキンが複数、それから血の着いたベッド。そして、隣には非常に顔の整った知らない男。確実にヤってるな。


「…ワンナイトで処女喪失って嘘でしょ」


今までこんな失敗をした事が無いので非常に動揺している。残念ながら昨日の事は全く覚えてない。しかもよく見るとこの男、褐色肌に銀髪…それに獣耳だ。終わった…この特徴を持つ一族は一つしかない…どうしよう。目を覚ます前に逃げないと。相手を起こさないようにそーっとベットから出ようとしたその時、グイッと手首を引かれ布団の中へと引き戻される


「きゃっ」


「おい、こんな早くから何処に行くつもりだった?」


あっという間に組み敷かれた私はギラギラとこちらを射抜く鋭いアンバーを見つめるしか出来ない。どうしよう、素直に昨日の事全然覚えてないので逃げようと思いました!なんてとてもじゃないけど言えないし…


「まさか逃げようとしたなんて事はないよなぁ?」


ドキィッ

「い、いいい、いえ!滅相もない!しゃ、シャワーを、シャワーを浴びようとしただけであります!」


核心を突かれ咄嗟の言い訳で逃がれ用とするも、男は笑って私を見下ろした


「シャワー室とは反対だったと思うが?」


「えーと、あのですね」


言い訳が思いつかずだらだらと冷汗が流れる


「ん?」


男がいい笑顔で笑った瞬間我慢できなくなって勢いよく土下座をした


「ご、ごめんなさぃぃいいい!!!何も覚えてないんですぅ!!!」


「…何もか?」


「…何も」


「ほぉ、昨日あんなに愛し合った事を忘れたと?」


「やっぱりヤッちゃってますかね?」


「ああ」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!どうしよう!一応私にはまだ恋人がいるのに!!一応だけど!浮気しちゃった~!…でも別れるつもりで出てきたしワンチャン別れてるかな?」


「おい」


「は、はい!独り言大きくてごめんなさい!なんでしょう!」


「俺が何者かは気付いてるか?」


「それは分かります!神狼族の方ですよね?神の末裔の」


「そうだ。知ってるなら話は早い。神狼族にはある特性がある。それが何かわかるか?」


そう言うと男はニヤリと笑った


「神狼族は生涯ただ決めた1人だけを愛し抜く。そしてその相手を運命の番とし、自分のモノだという証を刻んで巣に持ち帰るんだ。」


その男の台詞に嫌な予感がした


「…つまり?」


「お前はもう逃げられない」


男がそう言った瞬間その言葉に反応するかのように胸に刻まれた証が光った


「証…ははは、私まだ魔王倒さなきゃいけないんですけド、アノ…」


「何か言ったか?」


「イエ、ナニモ」


神狼族ウォセカムイは死ぬまで番を離さない。一生お前だけだリリア。覚悟しろよ?俺の愛は重いぞ」



いつの間にか私はロックオンされていた様だ。でもその男の言葉が何故か嫌ではない自分がいた。…好きになってもいいのかな。私はこの男が嫌いじゃない。さっきは逃げようとしたものの、この人と一緒に居ると何故か安心できる。…でも、脳裏にクラウスの事が過りまた裏切られるかもしれないと思ったその時、そんな私の心を読んだかのように男は微笑んだ



「今はまだ信じなくてもいい。一生をかけて俺の存在をお前に刻み込んでやる。愛してる、リリア」


「な、な、な!///」


「よろしくな、俺の運命の番殿」





恋人に浮気されたら翌日には運命の番が出来た件



(ちなみに名前聞いてもいいですか)

(おっまえ、、まさか名前まで覚えてないとは…はぁ。これは身体に分からせるしかないな)

(ひゃ、ちょ、まっ!らめぇええ)

(アドルフだ。忘れるなよ)




◇◇◇




勇者side


今思えばあれは悪魔の囁きだった


コンコンッガチャッ


「勇者様~ちょっとお話があるんですけど」


「ああ、マリア達か…何?」


「最近よぉ、リリアと勇者なんか可笑しくねぇか?戦闘以外で喋んねーし、パーティー内がギスギスしてやりづれぇよ」


「ごめん、ちょっと喧嘩しちゃって」


「早めに仲直りしないと、このままじゃ戦闘まで影響でる」


「うん、ごめんね早めに仲直りしたいんだけど…」


「勇者!私にいい考えがあるぜ!」


「え、ほんと?教えて!」


「ああ!リリアを1発抱いてやればすぐ仲直りできるぜ!」


「ええっ!?ぼ、ぼくたちはまだそういうのは早いよ!結婚してからって決めてるし!!ふ、2人は他に考えないかな!?」


「勇者、アマンダの考えは一理ある。世の恋人達はそれで仲を深める」


「それにしても勇者様、リリア様とはまだ閨を共にしてなかったんですね?そんなに慌てて…リリア様大丈夫でしょうか」


アマンダの言葉に慌てた様子の僕にマリアは頬に手を当てため息をついた。


「え、どういうこと?」


「だって勇者様ってその様子からして童貞でしょう?リリア様も初めてっぽいですし…初夜失敗ってことになったら目も当てられないです。トラウマ確定ですよ」


「あー、確かになぁ。女の初めては慣れたやつじゃないとちと辛いかもしれねぇな。最悪それが原因で離婚したりして!わはは」


「勇者、可哀想…」


「そんな!困るよ!僕リリアと別れたくなんかない!どうしよう」


その言葉にマリア達3人はニヤリと笑うと僕に囁いた


「本番の前に私達で練習するのはどうですか?」


一瞬何を言われたか分からなくて思考が停止したが何とか持ち直し反論した


「そんな事できないよ!そういうのは恋人同人や夫婦がするものじゃないか。僕にはリリアがいるし」


「勇者~そんな真面目なこと言うやつ今どきいねぇぜ?皆好きに楽しんでんだから。勇者も興味あるだろ?」


そんな僕にアマンダは胸を擦り付けるように撓垂れ掛かる

その豊満な身体から目が離せない。


ゴクリッ


「勇者様、そんなに深く考えなくていいんですよ。さっき言ったようにこれは練習です。リリア様の為なんですよ。だから、ね?」


マリアはアマンダとは反対の腕に絡みつき耳元で妖しく囁く


「勇者、ほんとはずっと私達の身体エロい目で見てた。素直になれ」


そして最後に普段大人しいシエルまでもが僕の手を取ってその慎ましく控えめに主張する胸に誘導したらもうダメだった


「はぁっ、はぁっ、ほ、ほんとにいいの?僕、浮気じゃないよね?これは練習だから…」


「ええ、勇者様これは練習です。リリア様の為なのです。だから」


「「「勇者様きて」」」


「うん。リリア…これは君の為だから…」





僕はあの時一時の感情に流されるべきでは無かった。そうすればこの世で1番大切な人を失う事はなかったのに。


「クラウス、なに、してるの…」


マリア達と乱れてるのを見られた。でも練習だから大丈夫だよね?皆してるんでしょ?……なんで逃げるの


「リリア!待って!なんで!」


急いで追いかけようとするもマリア達に引き止められる


「ふふふ勇者様、見られちゃいましたね?う・わ・き・現・場♡もうリリア様は諦めて私達と楽しみましょう?」


「そうだぜ~勇者のこと独占ばっかりしてパーティーの輪を壊すやつの事なんな要らないだろ?忘れちまえよ」


「あの子は、勇者に他の女がいる事反対してた。邪魔者。あんなやつ居なくてもこのパーティーは大丈夫」


何を言ってるんだコイツらは、邪魔者?リリアの事を邪魔だって言うのか?だからだからリリアと僕を離そうと…


「騙したの?」


「騙した何て人聞きの悪い。解放して差し上げたんです。だって勇者様、私達とも恋人になりたかったでしょう?」


「知ってるんだぜあたし達。お前、あたし達から告白された時満更でも無かっただろ?リリアだけとか口では言ってても本音はこのままパーティー全員と付き合いたかったんだろ?」


「そ、そんなこと…」


「勇者、否定しなくてもいい。私達3人は全員それでもよかった。」


「え」


「当たり前です。この世を救う英雄の妻になるのです。そんな男の妻は何人居てもいいではありませんか。私達は納得していました。…それなのにあの女」


「ああ。あいつは自分だけを愛してだのなんだの言ってたから分からせてやったんだよ。まぁ、勇者以上の男なんて居ないしそのうち戻ってくるだろ。」


「うん。どうせ戻ってきて他の女の事も認める。勇者に捨てられたくないから。あの女勇者にゾッコンだったし間違いない。」


「…ほんと?リリア戻ってきてくれるかな?皆の事も認めてくれる?」


「ええ。必ずね。だから勇者様今は続きしましょう?…ね」


「うん」


自分の都合のいい夢かと思った。実は魔王討伐の為に組んだパーティーメンバーは可愛い子達ばかりで、過酷な旅のなか心惹かれなかったと言ったら嘘になる。告白を保留にしていたのは心のどこかで全員と付き合いたいと思ってたからだ。まぁ、リリアが特別な事に変わりないから諦めようとしたのだが。それがどうだ?愛しのリリアもパーティーメンバーも僕のものにできるだって?最高じゃないか。そして僕は最高の未来を思い描き夢見心地のまま、また快楽の海に沈んで行った




それがまさかあんな事になるなんて







◇◇◇



あのワンナイトした日から3日、私はアドルフに離して貰えずまだベッドから出られないでいた。


「はぁっ、はぁっ、神狼族なめてた…っあ!もう、死んじゃうから勘弁してっ!行くから!アドルフの家行くよ!」


「っはぁ、やっと言ったか。よし、これで今日は最後だっ、はぁ」


「っ今日はって、明日もするのっっあんっ」



そう、あの番宣言された日から神狼族の特性通り巣に連れ帰られそうになって、魔王討伐を理由に断ろうとしたら今日まで身体に分からせられてた。

いやね、裏切られたけど魔王討伐だけはやり遂げようと思ってたんですよ。でも、アドルフが魔王は神狼族で何とかしてくれるっていうから…。

アドルフの一言であの神狼族が動くってアドルフ一体何者なの。神狼族は神の末裔と言われており、その名の通り神に等しい力を生まれ持った一族である。それは人間の希望と言われる勇者の力を遥かに超え魔王なんて神狼族にかかれば象が蟻を踏み潰す様な物なのである。しかし、その一方で神狼族は呪われた一族と呼ばれており、嫌悪感を露わにする人間が多い。その理由は、この人間界で異質とされる魔獣的特徴を持った一族だからである。呪いとは、神狼族特有の獣化スキルのことを指しその獣化スキルこそ人間が神狼族を嫌悪する原因なのだ。まぁ、かと言って人間全員が嫌っているかと言えばそれはまた別の話なのだが。



「ねぇ、アドルフほんとによかったの?」


「なにがだ?」


「神狼族のこと。神狼族は人間と魔族の事には中立を貫くって聞いた事あるけど…」


「ああ。それは今まで神狼族に人間からも魔族からも番を迎えた事が無かったからだ。だが今は違う。リリアがいるからな。番の味方をするのは当然だろう?」


「そ、そうなんだ!…ありがとう」


アドルフは自分がなんでもない様に言った一言が私にどれだけ勇気を与えてくれたのか知らないだろう。…ああ、この人は本当に私の味方なんだ。私を当たり前の様に番だと…。胸がムズムズして何だかたまらなくなった。よし、私も覚悟を決めよう。明日、クラウス達と決着を付けたらアドルフの気持ちに応えよう。私なりの言葉で





◇◇◇



(勇者side)



リリアが去ってから4日が経った


「リリア…まだ帰ってこないのかな」


「そんな心配しなくてもすぐ帰ってきますよ~あ、噂をすればほら!」


ガタッ


その言葉を聞くやいなや僕は椅子から慌てて立ち上がり転けそうになりながら玄関に向かった


「リリア!やっと戻ってきてくれたんだね!心配したんだよ…」


そう言って抱きしめようとするとパシッと手を振り払われた


「触らないで。言っておくけど帰ってきたわけじゃないから。置いてた荷物を取りに来ただけよ。」


そう言ってリリアは部屋に向かうと手早く荷物を纏め僕達に向き直った


「待ってリリア、出ていくってどういう事?僕達恋人同士だろ?戻ってきてくれたんじゃないの…?」


「そんなわけないでしょ。私、あの日に別れるつもりで出ていったし、もうこのパーティーも抜けるつもりだから。」


「は?待って意味がわからないよ!え、なんで話が違う。ねぇ、マリア!リリアは僕のものになるんじゃなかったの?パーティー全員で恋人になるって言ったじゃないか!」



リリアから飛び出るとんでもない言葉たちに理解が追いつかない僕はマリア達に助けを求める。しかし


「あらら、リリア様クラウス様と別れるんですか?残念ですねぇ、英雄の妻になり損ねるなんて。まぁ、英雄を独占する様な思想をもった貴女では元々勇者様とは釣り合いがとれてませんでしたけど」


「別れるのはいいけどよ~魔王討伐は義務だぜ?それに安心しろ勇者!リリアは恋人じゃなくなるけどあたしらがいるだろ?」


「勇者は私達3人が恋人として支える。お前は魔王討伐した後なら好きにどこかへ行けばいい」


マリア達はそんなクラウスを無視して自分達の立場を脅かすリリアを都合のいい様に動かそうとする



「全員で恋人?馬鹿言わないで。それにパーティーも今日で解散。魔王は神狼族が倒してくれる事になったから」


しかし、リリアが言ったその言葉に全員思考が止まった


「「「「「は?」」」」」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!なんで神狼族が出てくるの!?」


「そうだ!出鱈目を言うんじゃねぇ!あの一族は人間と魔族の争いに介入してくる事は決してないはずだ!」


「そんな嘘つくなんて見苦しい」


リリアの言葉が信じられなくて言い迫るがリリアはなんでもない顔で言った


「ほんとよ。明日にでも国王様から伝令でも、くるんじゃない?残念だったわね英雄の妻になれなくて」


「はぁぁああ!??」


「嘘よ嘘!そんなに言うなら証拠見せてみなさいよ!」


「証拠は自分で確認してとしか言いようがないわね。」


そう言って混乱している僕達を置いてリリアが外に出ようとした時シエルが動いた



「嘘ついて逃げる気だろ。逃がさない」


シエルの手がリリアを掴もうとした瞬間それは現れた



「誰の番に手を出そうとしてる」



一瞬で現れたフードの男にシエルが首を掴まれ宙に浮き、もがいている


「ガハッ…離し…ヒュッ」


「シエ「アドルフ!」」


シエルを助けようと動こうとした時僕より先にリリアがその男に飛びついた


「え、リリア…?」


「アドルフ離してあげて?」


「だがこいつはお前に…「お願い♡」ふん」


ドサッ


リリアが僕でも見たことの無い愛嬌をフードの男に振りまいたらシエルが雑に床に投げ捨てられた



「おい!お前勇者パーティーに手を出してタダで済むと思ってんのか?」


「勇者パーティー?まだ言ってるのか?さっきリリが言っただろう。今日で解散だと」


「はっ。そんな嘘に騙されるかよ。言うに事欠いて神狼族が魔王討伐なんてデマ流すなんてどうかしてるぜ」


「そうよ。パーティー解散だなんてある訳ないじゃない。それにあんた誰なのよ。リリア様とやけに親しげだけどまさかリリア様の新しい男~?」


「ごちゃごちゃうるさい羽虫共だな。証拠なら今見せてやる」



そう言ってフードを取った男の姿は


「嘘でしょ、、」

「神狼族…!!!」


「改めて自己紹介をしてやろう。神狼族11代目族長リコス・アドルフ。そこにいるリリアは俺の運命の番だ。」


紛れもないウォセカムイ族だ。銀髪に褐色肌の浮世離れした美しさを持つ神狼族がそこに居た。



…待て、今こいつは何と言った?


「運命の番…?」


「嘘だろ…僕は信じない。リリアは僕のお嫁さんになるんだ!いい加減な事を言うなっっっ!!!」


ダッと走り殴りかかるも軽く交わされ地面に組み伏せられる


「お前、リリアを裏切ったんだってなぁ?目の前でそいつらと寝たんだって?」


「違う!裏切ってなんかない!あれは練習だからリリアの初めてを貰うための練習だから!だから、リリアを返せ!」


「お前にいい事を教えてやろう」


ギリっと僕の腕を締める力を強くしたウォセカムイ族の男は僕に囁いた


「リリアの初めては俺が貰った」


その言葉に頭が真っ白になる


「は、はははは、リリア、…嘘だよね?そういう事は結婚してからって、僕にくれるって約束したじゃないか!そんな、そんな男にリリアの初めてをあげるなんて!ねぇ、なんで顔が紅くなってるのさ、まさかほんとに、、イヤだああああっっ!!!」


そんな俺に男は尚も追い打ちをかける


「リリア少し惜しいが見せびらかしてもいいか?」


「え、何の話!?ちょボタン外さないでよ!」


男はやけにキッチリと首元まで閉めたリリアのボタンをプチプチと外すと、鎖骨付近まで露出させた。するとそこにはおびただしい程のキスマークと歯型がこれでもかと付いていた



「そんな、嘘だろ…。ねぇ、リリア嘘だって言ってよ…リリアは僕のだろ?初めては僕にくれるんじゃなかったの…?謝るから…戻ってきて、どんな罵倒だって受け入れるから…お願い…」


「優柔不断勘違いゲロカス野郎」


「お前に言ったんじゃない!」


「クラウス、私とあなたはもう終わったの。私はアドルフと番になったから、私の事はもう忘れて。」


「そんな、、リリア、、その男がいるから?そんなにその男がいいの?じゃあ、その男が消えれば戻ってきてくれる?」



こんな男消してやる。


「殺してやる…。お前を殺してリリアを取り戻すっ!」



僕はありったけの魔力を込めて男に灼熱の業火を放った。この距離なら絶対逃げられない


「死ねっ!!!」


「アドルフッ!!いやぁぁああっっ!!!」


安心してリリア。この男を消したら僕が慰めてあげるからね。しかし




「リリア大丈夫だ。こんなもの消してしまえばいい」


男に業火が当たる寸前何故か炎が掻き消えた



「な、んで…僕は勇者だぞ…勇者の魔法が消えるなんてありえない…お前!何をした!」


「神狼族は魔法消去スキルが使える。知らなかったのか?…お前は、勇者としても弱いな。元々リリアに相応しい男ではなかったらしい。もう消えろ」



そう男が言ったと同時に僕は意識を失った



何故こうなってしまったんだ…






◇◇◇



決着がつき慌ててアドルフに駆け寄る


「アドルフッ大丈夫!?」


「ああ、問題ない。」


「クラウス…死んじゃったの?」


「いや、リリアはそれを願ってはいないだろう?気絶だけにしておいた」


「…私の為?そっか、そっかぁ~、、、」



…私の負けだ。アドルフが好きだ。だって自分を殺そうとした男の事を私の為を思って生かす選択をしてくれる人だよ?好きにならない方がおかしい。




「あの~、ちょっといいですか?」


さっきまで突っ立っているだけだったマリア達3人が声をかけてきた。3人はチラチラと熱の篭った目でアドルフを見ている。…嫌な予感がする



「アドルフ様…私達を貴女の妻にしてくれませんか?」


「…は?」


理解できない台詞が聞こえた気がする。こいつらは何を言ってる?クラウスはどうしたの?しかしそんなリリアを尻目に言葉は続く


「アドルフ様!あんたみたいな強い男の嫁になりたかったんだ!なぁ、頼むよ!」


「顔も凄く綺麗…嫁にして」


「ちょっとあんた達クラウスはどうしたの!?」


マリア達3人は私をチラリと見るとバカにしたように笑った


「クラウス~?ああ、勇者じゃなくなるならもう要らない」


「なにそれどういう事?クラウスの事が好きなんじゃなかったの…?」


「好き?バカ言わないでよ。私達はただ英雄の妻になりたかっただけ。そう、魔王を倒す英雄の妻に。世界で1番偉い人の妻になりたいの」


「そうそう、強い男が好きなんだよ。だからさ、リリア。クラウスはリリアに返すからアドルフ様をあたし達にくれよ」


「アドルフ様は神狼族の族長。クラウスとは比べ物にならない。私たちは強い男に娶られたい」


「「「ね?アドルフ様お願い」」」


マリア達は信じられない事にクラウスの権力が目当てだったらしい。私からクラウスを奪っておいて次はアドルフまで?そんなの許せない


「ダメよ。アドルフは私の番よあなた達なんてお呼びじゃないの」


「あんたは黙ってなさい。決めるのはアドルフ様よ!まぁ、私達は妻になれればいいからあんたが正妻でも許してあげる。だから、ね?独り占めはダメよ」


「そうだぜリリア。クラウスの時にも言ったろ?恋人は皆で平等にわけあわないとって。それにこんないい男が一人の女だけで満足するわけないだろ?」


「神狼族が魔王を倒すならアドルフ様は族長、英雄になる。英雄色を好むって言う。アドルフ様もきっとそう」


「そんなわけない!神狼族は一生1人だけを愛する一族なのよ。アドルフの番は私なんだから他の女を娶る事なんて有り得ない!」


私のその言葉に神狼族の特性を思い出したのか焦った3人はアドルフに懇願する


「アドルフ様!私の身体気にならないですか?好きにしていいんですよ?妾でもいいんです!私を傍においてください!」


「あたしのことも好きにしてくれ!正妻はリリアでいいから頼むよ!」


「あたし達は妻が何人いても構わない。だからお嫁さんにして」



マリア達の容姿は凄く可愛い。そんな可愛い子達にこんなに懇願されたらいくらアドルフでも頷いちゃうかな。私は聞いてられなくて俯いた


「ああ言ってるがリリア、お前はどうしたい?俺に何か言いたい事はないのか?」


アドルフが私の顔を上げさせ、じっと目を見つめて問う


「アドルフ好きよ。貴方が好き。だから、だから、だから…私以外の女を愛さないでっ」


そんなアドルフに私は最後の願いを込めて涙ながらに告白した


その私の言葉に満足したかのようにニヤリと笑ったアドルフはマリア達に向き直ると


「番が可愛すぎるのも困りものだな」


「悪いな羽虫共、愛しい番殿がこう言ってるんだ。まぁ元から虫を妻に娶るという奇特なやつはいないだろうがな」



唖然とやり取りを見つめていたマリア達はアドルフのこの言葉に怒りに震えている


「あたし達よりリリア1人を選ぶって?…ちくしょう!英雄の妻は長年の夢だったのに!リリアさえ呪われの番にならなければ!」


「ウォセカムイ族が出てきて計画が全部パァになった。リリアのせい。悔しい。クラウスは簡単に手に入ったのに」


「は、は、はねむし?この私に向かって羽虫?この!こっちが媚び売ってれば調子に乗って!呪われの分際で!」


そのマリア達の言葉を聞いた瞬間私は走りだしマリアの頬を思いっきりぶん殴った


ドゴッ


「神狼族を侮辱するなっ!!」


「ブヘェッ」


マリアは凄い勢いで飛んでいきアマンダとシエルを巻き込んで気絶した


「神狼族はねぇ!ただ1人だけを愛し抜く誠実な一族なのよ!あんな優柔不断なクラウスとは違うっ!それに獣化姿も可愛いんだから!ちょっと聞いてんの!起きなさいよ!」


目を回して倒れている3人を見ても怒りが収まらないリリアは3人を怒りのままボコスカ殴り散らす。するとリリアの耳に笑い声が聞こえてきた


「はははっ、さすがはリリア。そうか可愛いのか。そんな事は生まれて初めて言われたぞ」


振り返るとアドルフが見たことの無い柔らかい笑顔で笑っていた


「笑わないでよ。ほんとに可愛いんだから仕方ないでしょ。皆見る目がないのよ」


「そうか、そうか…リリア愛してるぞ」


アドルフが私をあんまりにも愛しそうな顔で見るから、怒りも収まっちゃったじゃない。だから恥ずかしいけど今だけは素直になってあげる。


「きゅ、急になによ………私も愛してる」ボソッ


そんな私をみてアドルフはまた愛しそうに笑った


「いや、ただ言いたくなっただけだ」


「…ふん」




こうして無事に気持ちが通じ合った二人はウォセカムイ族が住むアズール国に移り住み幸せに暮らして行くことになるのだった





(え!もう魔王倒したの!?)

(ああ。取るに足らない存在だった)

(…恐るべし神狼族)

(そういえばクラウス達あれからどうなったの?)

(遠い国で幸せに暮らしてるさ)

(そっか~)








◇◇◇




暗い森の中


ハァッハアッハァッ


4人は必死に足を動かし逃げていた


「さぁ、誇り高き神狼族ウォセカムイの戦士たちよ!…狩りの時間だ。」


「「「アォーン」」」


「危険分子は生かしておけない。いつ番に牙を剥くか分からないからな。まぁ安心しろ、リリアには幸せに暮らしていると伝えておく」



「「「「た、たすけ」」」」





ウォセカムイ族は番に仇なすものを決して許さない

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