きづけば

鈴乱

第1話


 あぁ、いいな。と。


 そう思った。


 人に囲まれている、彼。


 いつだって、人気者の彼。


 うらやましい、と思う。


 私も、彼のように在れたら。


 人生というものは変わるのかもしれない。



 ……なんて。


 子どもの頃から何十回何千回と繰り返してきた。だから、もう痛いほど知っている。


 私は彼じゃないし、彼は私じゃない。


 だから。


 たとえ、私が彼のようになれたとしても、それが幸福となるかなんて、分からない。


 私は彼にはなれないから。


 私はこの、不格好でどうしようもない、この私でしかない。


 何を身につけても、何もなくなっても、私は私でしかない。


 他人ひとが、気になって羨んでうまく動けなくなる。


 そんな自分を好いたり嫌ったりしながら、それでもどうにかこうにか、ここにいる。


 それが。


 そんな奴が、一生私で、一生変わらないナニカなんだ。


 よく分かってる。よくよく理解してる。


 だから。


 だからね。


 少し違った私を発見した時、くすりと笑える。


 あわてんぼうで緊張しいで、びびり。


 そんなんだけど。


 積極的で頑張り屋で慎重。


 そんな自分にも気づけていけたら。


 世界はちょっとだけ、優しくもなるんじゃないかな。


 ダメ、じゃなくてさ。


 ちょっと不器用なだけでさ。


 そんな自分もいるんだって気づけたら。


 何かが少しだけ、変化するのかも……しれない。

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きづけば 鈴乱 @sorazome

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