第2話 変身

(ん?なんか罰とか書いてあるんですが…。)


「あ、あの…。なんか罰が下されるとか書いてあるんすけどこれは…?」


「ああ、それはね。どんなスキルを発動するためにも必要条件というものがあるんだよ。君のスキルに必要な条件は知らないがその条件を無視してスキルを発動してしまうと相応の罰が下るんだ…って、君スキル持ちだったの!?」


彼の驚き様から恐らくこの世界でのスキル持ちの割合はそう高くは無いのだろう。


「あ、一応そう見たいっす…。ちなみにこれってどう発動するんすかね?」


「一応って…。スキルの発動方法は人それぞれなんだ。例えば、僕の場合−−−」


そういうと彼は腰にかかっていた拳銃を構えた。


「は!?ち、ちょっと待って−−−」


勇希の静止も聞かずに真っ直ぐこちらに向かって撃ち出された弾丸は勇希の体を貫いて−−−


「ない…。撃たれてない?」


銃弾は勇希の周りをぐるぐると土星のように回っていた。


「は、ははっ。異世界ファンタジー…。」


「驚かせてしまったかい?これが僕のスキル『操銃士』僕は撃ち出した弾丸を自由に扱える。その大小に関わらずね!」


「まじか…。てか、あんたもスキル持ちだったんだな。」


「そう言えば、まだ僕の自己紹介をしていなかったね。僕はアルタイナ王国メシエッタ女王直属護衛隊長アルバンス・フリード。以後お見知り起きを。」


(女王直属の兵士!?しかも隊長ってこいつめちゃくちゃ凄えんじゃないか?)


「た、隊長さんがなんでこんな路地裏なんかに…?」


「ん?最近街で怪人達による麻薬の売買が行われているという噂を聞いてね。見回りに来たんだがそしたら君が居た。」


「そういうことだったんすね。あ!だったら身体検査とかしてもらって構わないっすよ!」


「いいや、結構。君のことはメシエッタ様に見てもらうからね。」


「ん?怪人ってなんすか?」


「怪人軍のことだよ。僕達の王国だけではなく人類の破滅を目的とする存在…。人類の共通の敵さ。」


(待て待て。普通、異世界ファンタジーは魔王とかだろ…!怪人軍ってそりゃ−−−)


「さあ、そろそろ向かいたい。ついて来てもらえるね?」


「あ、はい。勿論−−−」


勇希がアルバンスに従ってついて行こうとした瞬間表の方で叫び声が聞こえた。


「怪人だ!憲兵を呼べ!」

「早く逃げろ!」


どうやら叫び声の内容的に先程話していたばかりの怪人が街に現れたらしい。


「君はここにいろ。」


そう言い残すとアルバンスは声のする方へと駆けていった。


「うーん…。怪人…。ヒーロー…。」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「私の名はアルバンス・フリード!この国の王女に−−−」


「うるせぇ!」


「おいおい、名乗りくらいちゃんと聞けよな…。」


名乗りの途中に襲って来た怪人の攻撃を避け、2発撃ち返した。

放たれた弾丸は怪人の周りに纏わりつき動きを封じる。


「このスキル…!そうかお前がアルバンス・フリードか。」


「名前すら聞いてなかったのね。とりあえずそれじゃ動けないでしょ。大人しく投降すれば楽に殺してあげるけど?」


「人間ごときがなめんなぁ!」


怪人がそう叫ぶと身体の周りに風が生じ、弾丸を吹き飛ばした。恐らく怪人のスキルなのだろう。


「まずいな…!」


怪人が生じさせた突風は刃のように周囲の人間たちを庇ったアルバンスを襲い肉を切る。


「てめえみたいな自分は格上って感じで接してくる奴が1番くそなんだよ!このまま死んじまえ!」


その時、怪人の頭に手のひら程度のサイズの石が飛んできた。


「あ…?」


「あ、やべ…。」


「君…!あそこに居ろと言ったはずだ!」


「いやぁ…。そうなんすけどね。もう救う側の気持ち知っちまったから…!目の前で起きてること見ぬふりして逃げるなんてこと出来ねえんすよ。」


目の前に立っている怪人はいつも観てる特撮の怪人達と見た目に大差なんて無かった。狼と人間が混ざったような見た目だが街で最初に見た人型生物達とは明らかに違っていて360°どこから見ても怪人としか言えない禍々しさがあった。


(びびんな…俺!そ、そうだスキル…!これさえ発動出来れば俺にも戦える!で、どうやって発動すんだ!?)


「おらぁぁあ!!」


勇希がスキルの発動条件を考える隙もなく怪人は次々と攻撃を仕掛けてくる。しかしながら勇希も動けない方では無い。普段スーツアクターになるためにと鍛えていた体がここで役に立った。


(くそ…!この風避けんので精一杯だ。なにか、なにかないのか!?)


「君がもしもヒーローなら、君にとってのヒーローになれ!それが君のスキルの発動条件だ…!」


先程の攻撃で身体中がボロボロになっているアルバンズが勇希に向かって叫ぶ。


(俺にとってのヒーロー…。)


「すとーーーーーーっぷ!!!」


「…は?な、なんだ?」


戦闘中にストップの要求など流石の怪人も戸惑いを隠せない様子だ。

だがしかし、そのおかげで一瞬だが怪人の攻撃の手が止まった。


「変身っ!!」





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