第27話 七大天使
相澤という、度を越した変態の知り合いが増えたり、弓道の的になるなど、一悶着あったが、何とか二日目を乗り切った。
その帰り道。
すっかり定着しつつある、俺・翔太・英介・美鈴の4人で帰っていると、英介がこんな事を言い出す。
「なあなあ、明王七大天使って知ってる?」
あれ?この流れは…
「七大天使ー?」
翔太が、如何にも胡散臭いという声で、英介に聞き返す。
「そ、七大天使!元々は四大天使だったらしいんだけど、今年から白崎さんと他の2人の一年生を加えて、そう呼ぶようになったんだってさ」
「お前…今日、やけに色んな人と交流してるなと思ったら、そんな事嗅ぎ回ってたのか⁈」
「へへっ。だって、男ならこういうの気になるだろ?」
おい、英介。
その天使様に嫌われたくなかったら、それ以上喋らない方が良いぞ。美鈴が、汚物を見る様な目付きでお前を見てるから。
美鈴は過去のトラウマから、こういった少し下世話な話が嫌いなのだ。
英介は、構わず話を続ける。
「それでさ、今日の部活紹介の中に、その内の2人が出てたんだよ!」
もう、お分かりだと思うが、明王七大天使とは、そのまま平僕ヒロイン7人のことを指す。三年と二年に2人ずつ、一年に3人という具合だ。
まさか、入学してから二日目の段階で、もうそんな噂が立っているとは。
それとも、意外と英介の情報収集能力が優れているのか?その才能を、是非ともサッカーで活かしてもらいたいものだけど。
「生徒会長の一条先輩と、音楽部の有紗先輩!どっちも、美人だったけど、俺は有紗先輩の方が好みだな!それに、あの演奏。毎晩、俺のためだけに弾いて、癒やして欲しいぜ。俺、音楽部入ろっかな〜」
「阿保!俺とお前はスポーツ推薦だから、サッカー部に強制入部だよ」
「は〜、そうだよなぁ。じゃあ、照人。お前が、音楽部に入ってくれ!」
「はぁ?」
何でだよ!どうして、そうなる?
「音楽部に入って、俺と有紗先輩を繋げてくれ!お前、今日も一条生徒会長と面識ができたし、白崎さんと幼馴染といい、七大天使に何かと縁ありそうだから、イケルだろ?」
いや、それは原作主人公の相澤の役目だから。アイツに頼め。後で、紹介してやるから。
というか、あの変態の顔を思い出していたら、急に不安になって来た。これから、原作に纏わるトラブル、全部あの変態に任せて良いのか?
………
駄目だ、どう考えても嫌な予感しかしない。
頼みの綱の美鈴は、さっきからずっと黙ったままだ。ちょっと怖い。
そうだよな、美鈴が、俺と他のヒロイン達が関わる事を良しとする筈がない。
第一、俺もサッカーを優先したいので、できればその件には触れたく無い。
とは言え、中には彼女達の将来を左右するものも、あったりする。完全に放置するのも後味が悪い。
う…なんだか、胃がキリキリしてきた。
「お前なぁ…どうして、さっきの桐生主将の話を聞いて、そんな風で居られるんだよ!もっと他にやるべき事あるだろ?沸き立つようなものを感じなかったのか⁈ あと、テルを巻き込むな!」
翔太が、割とガチでキレている。ありがとう、翔太。お前だけが頼りだ、俺の心の友よ。
「いや〜、だって俺そんなにユースに未練ないし。昨日も言ったけど、どっちかっていうと、女の子とキャッキャ・ウフフな青春を送りたい!」
堂々と、実に残念な事を言い放つ英介。これで、なまじセンスがあるのだから、タチが悪い。
黙っていれば、顔は悪くないのだ。ちゃんと真面目にサッカーしていれば、それなりにモテると思う。
だが、この性格だ。全部台無し。英介が思い描くような未来は訪れないと、俺は予想している。
本人にやる気のない、サッカーを頑張るのが、望みを叶える一番の近道とは、不憫な奴だ。泣けてくる。
「頑張れよ、応援してる」
俺は英介が可哀想に思えて、そう励ます。
「何だよ、その憐れむような目は!サッカーに明け暮れるお前らより、絶対に充実した3年間を過ごしてやるから、見とけよ!」
「うん。応援してる」
「だから、その目を止めろよ!」
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