第23話 外堀を埋められました!
校門前に辿り着くと、入学式の看板で同じように写真を撮ろうとしている、人達でごった返していた。
「うっひゃー、人だらけ!」
「これ、親達見つけられるか?」
「あ!あの人そうじゃない?」
「「「ん?」」」
美鈴が誰かを見つけたようなので、三人でそちらを見やる。
それは、もの凄い形相でこちらに突っ込んでくる母さんだった。
「照人ぉー‼︎」
「うわぁー!」
母さんは、人目も気にせず、俺にヘッドロックをかける。
「コラッ、照人!アンタが、遅いせいで順番奪われちゃったじゃない。せっかく、一番最初に来て陣取ってたのに!」
いや、それは知らんがな。
「悪かったって思ってるよ!反省してるから、離してくれ!」
俺はギブアップだと、母さんの腕を叩く。
「いーえ、許しません!罰として、並んでる間このままだからね」
「そんな⁈嘘だと言ってくれー!」
流石に、可哀想だと思った美鈴が、母さんの説得を試みてくれた。
「あの、おば様。その辺で許してあげてください。元はと言えば、私と話し込んでいたことが原因なんです」
「あら!美鈴ちゃんじゃない!久しぶりね。本当、綺麗になったわー。さっきの、入学式のスピーチも立派だったわよ」
俺とは違い、すぐに美鈴だと気付いた母さん。やっぱ、下手に漫画のキャラだと思うと、細かいところに注意がいかなくなるのかな…それとも、単に俺の察しが悪いだけ?
「はい、お久しぶりです!お褒めいただき、ありがとうございます。お世辞でも、嬉しいです!」
「そんな、お世辞だなんて。本音よ、本音!誰が見たってそう感じるんだから、事実よ。貴方達も、そう思うでしょ?」
男三人に同意を求める母さん。
「「………」」コクコク
母さんに、目を付けられたくないのか、黙って頷く翔太と英介。
「思う…思うから、離してくれ…くるしい」
「アンタには、聞いてない」
嘘だろ、おい!
俺の懇願は一刀両断されてしまった。
「それにしても、こんなに美人で器量良しになってー。お嫁さんに来て欲しいくらいだわ」
「そんな…お嫁さんだなんて//もちろん、なりますけども」
先ほどまでとは、打って変わって、恥らう様子を見せる美鈴。こやつ、親の前では猫を被っておる!策士、策士だ!
「あら、本当?なら、予約しておこうかしら!」
やばい。そろそろ限界だ…意識飛びそう。俺は必死に目線で、美鈴に助けを求める。すると、これに気付いた美鈴が、助け舟を出してくれた。
「おば様、本当に辛そうなので、そのくらいで…」
「そう?美鈴ちゃんがそう言うなら、このくらいで勘弁あげるわ。照人、美鈴ちゃんによ〜く感謝しときなさい!」
「ゲホッ…ゲホッ…ありがとう、美鈴」
「う…うん、大丈夫?」
「ちょっと、大丈夫じゃないかも」
「まったく、このくらいで情け無い!あんた、身体鈍ってんじゃないの?ほら、列並ぶわよ!」
母さんは、そう言い残すと、さっさと行列の方へ行ってしまった。
ポンッと肩に手を置かれる。振り返ると、心底同情した顔の英介がいた。
「さっきは、悪かったよ照人。お前も、色々と大変なんだな」
「分かってもらえて、何よりだよ。俺の方こそ、さっきはごめん」
俺たちは無事に仲直りできた。
この後、列に並んで暫く待ち、俺たちの番がやって来た。最初は、それぞれの家族で写真を撮っていたが、美鈴が一人ポツンと浮いてしまっていた。
気になった母さんが、直接本人に尋ねる。
「そう言えば、美鈴ちゃん。お母様は?」
「お母さんは、今日は仕事で来てないんです…」
そう言う美鈴の顔は、凄く寂しそうだった。離婚した後、美鈴のお母さんは一人で家計を切り盛りしていると聞いた。今までも、こういうことが何度かあったのだろう…
「そう…悪いこと聞いちゃったわね」
「いえ、気にしないでください」
重苦しい空気が辺りを漂う。
「俺と美鈴でツーショット撮るから、その後4人全員での写真、撮ってくれよ、母さん!」
俺はその場を明るくする為に、そう提案した。
「お、いいなそれ!」
「照人だけズルいぞー!俺も白崎さんと、ツーショット撮ってもらう!」
それに乗っかる翔太と英介。
「残念!ツーショットは幼馴染限定でーす」
「んな理屈、罷り通るか!」
こうして、俺と英介の小競り合いで、暗い雰囲気は霧散してしまう。
結局、美鈴は俺と英介だけじゃなく、何故か翔太ともツーショットを撮ることになっていた。
最後に、四人全員の写真を撮ってもらって、今日はお開きとなった。
照人たちは、終始気付く様子も無かったが、彼らを遠くから見つめる影があった。
「フフッ。今年の明王も、面白くなりそうだね」
「なーに、新入生見て、謎の先輩風吹かしてるんですか。恥ずかしい!明日までに、やらなきゃいけない仕事、山ほどあるんですよ、会長!」
「なっ、いつからそこに⁈勝手にネタバラシするなー!そして、現実に引き戻すんじゃない!」
波乱の予感?
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