第29話 新しい爪切り甘えるエルフ

サラさんに相談してみると、

恐怖を無くすことは出来ないけれど、

パチンという音を無くしたり、

爪を切った際の衝撃を減らせば

マシにはなるのではないか?ということだった。



そしてそのために音を消す魔法と、

衝撃を和らげる魔法をかけた爪切りを作ってもらった。



これで、少しはラナちゃんの負担がへってくれればいいのだけど。



とりあえず、他の方達に、試しに爪切りを使ってもらう。



すると、これがかなり好評であった。



完全に怯えなくなる、というほどではなかったが、

だいぶ暴れる子が少なくなったのである。



よかった、

とりあえず、少し負担を減らすことは

出来ているようだ。



数週間後。

猫人族は爪が伸びるのが早い。



再びラナちゃんの爪切りがやってきた。



「にゃう」



ラナちゃんはやっぱり不安がっている。

そんな彼女を前のように膝に乗せて、

爪を切っていく。



どうだ?



ラナちゃんの顔を見る。



まだ目をつむり震えてはいるけど、

前よりは楽そうだった。



「終わったよ」



「え!?もう!?」



爪切りが終わった事を告げると

ラナちゃんは驚きながら目を開けた。



そして綺麗になった爪をみて目を輝かせている。



「今日、ぜんぜん怖くなかった!すごい!すご~い!」



再びラナちゃんが僕にしがみついてくる。

そこは変わらないのかよ!と思ったが、

とりあえず、ラナちゃんが元気そうでよかった。



これでもう爪切りも大丈夫だね。



そしてこの爪切りを作ってくれたサラさんにお礼を

言うんだよ?というと、ラナちゃんは影でこっそり見ていた

サラさんに近づき、ありがとう!と元気よく言うのであった。



あ!サラさんがうれしさのあまり倒れた!



ま、満足な顔して逝ってやがる。



・・・埋めとこ。



「私もいたわれえ!私も頑張ってるだろお!」



夜。再びサラさんがお酒を飲みながら叫んでいる。



最近サラさんの仕事量が増えているからだ。



フェル達は特化したモノには強いけれど、

それ以外のことはかなり苦手としている。



だから細かい作業はだいたいサラさんの魔法に

たよっているのが現状だ。



ラナちゃんもまだまだ修行中だから、

この村の発展はサラさんの頑張りに

かなり助けられている。



僕は、はいはいと言いながら彼女の肩をもむ。

するとサラさんは満足げにくるしゅうない!といいながら

僕に寄りかかってきた。



子どもだ。

とても500歳の大先輩には思えなかった。



でも、嫌ではない。

とても楽しかった。

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