第11話 スラのお洗濯と村長のお願い

突然だが、スラにとんでもない能力があることがわかった。



この子、洗濯ができる!



脱いだ衣服を取り込んで、

スラの体内でモゴモゴさせると

あっという間にピカピカだ。



言われてみれば、ゴブリン溶かしてたもんな。

汚れだけ溶かすとか、そういうこともできるのだろう。



・・・回復スライム?

回復要素、どこ?



って、うわあ!



ちょ!スラ!



ごめんて、疑って悪かったよ!



だから頭の上でぽよぽよしないで!



ごめんってばあ!



ふう、落ち着いてくれた。



このスラの能力のおかげで、

村での家事の時間がぐっと減った。



今まではいちいち川まで洗いに

っていたからね。



実際、自分でやってみると衣服の洗濯は

かなりの重労働なのだ。



その重労働がなくなった分楽になるし、

労働力を別の所に振り分けられる。



ただ、毎日ずっとスラに洗濯をし続けて貰うのも

大変そうなので、一気に二人、回復スライムを増やすことにした。



名前はスラオとスラミ。



これでスラ、スラオ、スラミの三人体勢で

お洗濯できる。



よろしく頼むね。



ちょ!そんな団子みたいになって

僕の頭に乗らないでよお!



ポヨポヨすんなあ~。



「あ!ズルい!私も遊ぶう!」



そんな風にスライム三兄弟と戯れているところを、

今度はラナちゃんに見つかってしまう。



彼女もなぜか喉をゴロゴロと鳴らしながら

足にすり寄ってくる。



「ラナ。タクマさまが困っておるじゃろ?

やめなさい」



「は~い!じゃあ、たくま様、またこんど遊んでね!」



村長がそう言うとラナちゃんはピュー!とどこかにいってしまった。

猫だ。完全に気分屋の猫だ。



「すみませぬな。ラナは明るい子ですがさみしがり屋なのです。

幼いときに両親を失っていまして」



村長少し悲しげな声でいった。



確かにラナちゃんはいつも明るくて元気だ。



そして常に誰かと一緒にいる。

ゴハンを食べるときも、寝るときも。



でも、彼女の母親と父親にあった事はなかった。

他の子どもには見かけていたのに。



あれは、そのさみしさを埋めるためだったからなのかと、

今更ながらに納得した。



「以前は、夜になると泣いていたりもしていました。

ですがタクマさまが来てから、ラナは楽しそうに過ごしています」



村長は僕の顔を見つめながら言う。



「たくまさま。できれば、あの子と一緒にいていただけませぬか?」



・・・真剣な表情だった。



でも僕の返答は決まっている。

もちろんですっと返した。



両親の代わりにはなれない。



あまりしてあげれることは多くはないけれど、

それでラナちゃんが喜んでくれるなら、

それほど嬉しいことはない。



なら、断る理由なんてないよ。



「・・・ありがとうございます、たくまさま」



「たくま様!村長!ゴハンだって!

早く食べよ~」



村長と話していると、話題の本人が

再び走ってこちらにくる。



そして僕の腕を掴んで、

グイッと引っ張った。



「いこ?」



「うん。いこうか」



やっぱり元気が一番だよ。

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