第37話 主に見えない世界
泣いていたアシスタント君たちは時々下を見つめながらも僕のデザインや設定にアドバイスをくれ始めた。
「ああ、もうまたネコタイプに過剰なくらい能力割り振りすぎてますよ!」と怒られることもあった。
タオチェンが手で撫でるだけで人の痛みを消すことが出来るように進化していたからいいかなぁとちょっとまた盛り込みすぎたのでダメ出しがでたのだ。
「ネコの設定だけなんでこんなに優秀なんだ?」
「自分たちの治癒能力だけじゃなく、今や超音波治療器レベルで相手の骨折すらも早く治せちゃうし、心の癒し効果に、霊まで見えて、何語でも相手の言葉を理解して、適度な距離感を保ちながら甘えん坊で電気治療に鍼治療まで出来るなんて俺たちがめちゃくちゃ頑張って勉強したこと以上に生まれつきのスペック高すぎるだろう」とタオとチェンが言うのも仕方ない。
「この地球で最初にトライ&エラーで沢山の生き物を星の嫌がらせで絶滅させられた時にまだ治療を施せる生き物が作れていない事に気がついてさ、大きな生き物にも試しに治療能力を付けてみたんだけど、大きな生き物は治療する前に怖がられたりして傷ついて逆に相手を食べちゃったりするから、小さな子につけようとしたんだけど、小さすぎるとそれもまた怖がられちゃって、結局ネコのデザインが完成した時に可愛いならきっと大丈夫だと思って、更にどんな生き物にでも効果があるようにって作ったんだ」と答えると
「でも、ネコって肉食だよな、ネズミとか虫とかよく捕まえて枕元に置いてくるって聞いたことがあるし」とチェンが言う。
「あれって贈り物なんだろ?」とタオが言う。
「動物の中には食べられることを目的にして生きている命もいるんだよ、最初から人間スタートじゃない子たちが実はここにいるほとんどのアシスタント君たちなんだよ。人間は草だけじゃ生きていけないからテイアからもたらされた命の源で海の中に沢山の食べられるための命をバラまいたんだけど、海が干上がっちゃったりして、経験値を活かしてここでアシスタントをしてくれているんだ」と話す。
そういえば最近大量にバカンスとして人間を経験してきたアシスタント君たちが一気に帰って来ちゃったけど、彼らを残虐に殺すなんて何て愚かな人間が居たもんだろう?
本来親を選んでなんて人間は生まれない。
アシスタント君たちが選びぬいたふたつの命を条件を充たした女の中にそっと運んでくれる。
アシスタント君たちはここから下を眺めていて、優しそうだなぁあの人の子に産まれたいなぁと思ってその人が条件を充たした時にバカンスに出かけて行くからある意味親を選んで生まれていく。
彼らには無限の能力を備えてある代わりに言語の壁が他の命より高い。
前世が動物だったから同じ動物との会話はとてもスムーズにできるけど、人間としての会話はとても難しい。
そして、無駄に殺された経験からとてもワガママに見える行動をとるけど、そのくらいしないと相手に気持ちを伝えられないんだよね。
言葉が通じ合える人間同士の方が嘘が多くて分かり合えないのも知っているから欲望に素直だ。
彼らが生まれるとその家の家族たちは彼らを守るために一生懸命に働くようになったり、命を大切にすることや、我慢強さを身に着けたりして生活に困ることはほとんどない。
もともと優しい命たちが優しく育った人たちの元に降り立っているから。
それでも、対話の成立が出来ない場合は逆に家族を苦しめてしまうこともある。
大人気な人間にはアシスタント君たちが二つどころかわんさか集まって一人の人生を経験するからほぼ会話は通じないし、各々の命の主張がバラバラだからいつも同じことを好むわけでもない。
無限に与えた能力も家族のために使ってばかりな優しい子たちだから自分の才能として開花するのは極稀で、苛立ちも態度によく出すため怖がられがちだ。
前世次第ってところかなぁ。
よく歌う鳥だった子たちが集まって降り立った時には天才作曲家になったり、ウサギだった子が初めて地球に降りる命を運んで行った時についでにバカンス始めちゃったりすることも少なくなくて、ウサギだった時の習性を色濃く残して生まれちゃったりもよくある。
言葉の壁が低い分成功者と呼ばれている人にそういうパターンは多いかもしれない。
人生の途中でも気に入った人間の中に突然入って行っちゃったりもする。
タオとチェンの場合はそうじゃなかったんだけどねぇ。
守ってあげたいって気持ちで行くんだろうけど、彼らには御付きが憑けないから御付きの与えたマホウだけが残って御付きは無に消えてしまう。
御付きにとってはいいんだか悪いんだか交渉している時もあれば強引な時もある。
お守は変わらず己が生を全うしながら傍に居られるけどね。
基本的には御付きが命の最後のステージだからどうしても離れたくない御付きはお守の御付きとして移動したりしながら守り続けたりするよね。
アシスタント君たちはお守にも御付きにもなれなくて僕の作業の手伝いをしてくれるほど優秀なんだけど、最近僕への悪戯のつもりなのかな
僕に見えない場所で何かしているみたいなんだよね。
僕が見えるのはあくまでも初めて星に降り立った命のデータとお守と御付きのデータとテレビを見るように目に見えるものだけ。
アシスタント君たちのデータはある意味2回目以降の降臨だから姿は見えなくはないんだけど監視カメラの位置を知ってるみたいな隠し方をするんだよね。
彼らには頑張ってもらってるからバカンスに口出しはしないけど、最近靄がかかったような全く見えない場所でマホウを使っている人間に混ざった子がいるみたいだ。
その人間のデータは見えても、靄のかかった場所で何をしているかは見えない。
最後の御付きが与えたマホウは夢の中で現実に存在する生き物に会えるマホウだってことだけど、この人間御付きが生まれて数年で山ほど憑いてるんだよね。
残虐な殺戮行動で黒い御付きが憑く人間は多いけど、それともまた違う愛情豊かながら殺してしまった命たちが白い御付きになって山ほどのマホウを与えてはなんとか短い寿命を延ばし延ばしして生かしていたみたいだ。
僕の設定した寿命を弄るとはしてやられた。
まぁ、いいんだけどね。食べる以外の目的で命を奪った人間は基本的に寿命が延びる上に黒い御付きが嫌なマホウをプレゼントすることになってるから。
寿命が尽きるまでにそのマホウを使い切らないと黒い御付きは消えないから人生を卒業することも出来なくてやり直しってパターンも最近少なくないんだよね。
人間辞めたくて自らを殺すのも同じだし、人間は見ていて飽きない。
僕が作り出すものよりもすごいものを生み出していくからたまに人間によく似たモノにアシスタント君がうっかり宿って呪いの人形扱いされてたりすると、ここから見ていてもホッコリする。
お祓いとかいう儀式で人形本体がなくなって帰ってきた時のアシスタント君は少し恥ずかしそうに光を抑えていたりするのも可愛い。
今でもお祓いというのをしてもらえなくて寿命がない人形に宿っちゃった子はどうしようどうしようって頑張っているよ。
気になったのはタオとチェンがその靄のかかった人間を時々見ている事。
家族でもないのに、ため息をついたり、よくやった!と褒めて居たり、テレビでも見ているような気分なのかな?
「はいはいはい!サボってないで次の寿命の設定ください。新種のデザインは多く早く、能力は盛り込みすぎない!」アシスタント君たちは本当に厳しいや。
がんばりまーす。
あ、僕のお気に入りネコを殺したら黒い御付きの嫌なマホウとアシスタント君たちが何回目の人生でもわざわざ嫌な人間に育った場所に送り込むようになってるからね。
ネコは崇めよ。
てるてる坊主・てる坊主 かねおりん @KANEORI
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