これは親睦会なのか?
間に十人以上いるのに
視線で殺すってこういうのを言うのか?
怖じ気を感じていたせいで
そして俺に視線が集まる。
「や、
夕食の買い出しに出たりしているとは言わなかった。無理して親睦をはかるつもりもない。仕方がないじゃないか。それが俺の生き方だ。
「名前だけでも貸してって言われない?」
しっかり勧誘してきやがる。
「興味ないんで」
「だよな」
「それで」と
「私?」
確かにこのグループ席で自己紹介がまだなのは古織だけだが担任にまで自己紹介させるのか。「改めまして――E組担任世界史担当の
「趣味は~?」
「特にありません」今、
「これで終わりね。さて親睦会を始めましょう」名手が仕切っている。
確かに女子学級委員だがそんな肩書きがなくてもこいつは場の支配者だと俺は思った。
「えええ、つまんない。顔見知りばかりじゃん」伊沢だけが毛色が違う。
何と言うか――陽キャだ。真ん中のグループに混じりたいと言うのもわかる。
「あ、山田くんがいたか」俺に目をつけやがった。
俺のことに触れるな。伊沢は屋上で俺と
「山田くんは――」俺は身構えた。「――校則をどう思う?」
「ん? 校則?」って言われてもな。
確かにこうして学校帰りにファミレスに寄るのにもいちいち学校の許可を得ないといけないなんて面倒くさいが、まっすぐ帰る俺には関係のないことだ。制服だって着崩す必要性も感じない。
別に品行方正のつもりはないが言われないと不自由を感じないレベルだ。というか俺は生徒証の校則をまともに読んだことはない。
何がダメで何が許されるのか、そんなのはまわりを観ていて生徒と教員のやり取りを見たら何となくわかるだろう。
俺は人と関わるのが
「校則の中には生徒同士の男女交際を禁じる、というものがあります」
「それがどうした?」目に見えるところでイチャイチャされたらかなわないじゃないか。
「おかしいと思わない?」俺を見るなよ。
「好きなヤツがいるのか?」俺は伊沢に訊いていた。
「いや……それは……」伊沢は真っ赤になって顔を伏せた。
編み込みリボンが揺れる。三つ編み眼鏡のありきたりのスタイルかと思いきや、よく
「はい、そこまで」と
何だよ、ヤヤコシイ話って。俺の下らない意見よりもそっちを話題にしろよ。
「封じられた抑圧エネルギーは次第にキャパオーバーとなり、いずれは暴発するわ」
その古織が目をそらしたぞ。やはり古織は名手が苦手なのか? ふだんの担任としての威厳が微塵も感じられない。ここでの力関係は明らかに名手の方が上だった。
「そんな面倒な校則のせいで長い付き合いの幼馴染みですら一緒にいられない」
ん? 幼馴染み? 俺と
名手は
「そんなことを私に言われてもね」古織は困惑の顔を上げた。「――校則は生徒会が改正するものだし」
「聞くところによると、先々代の生徒会長が革新的な人で、制服の自由化を推し進めて今のようにバリエーション豊富なかたちにしたと聞きました。その生徒会長をもってしても男女交際禁止条項を撤廃できなかったようです。これは学校側の圧力では?」
名手の声はよく通る。いつの間にか隣のグループの面々が俺たちのグループに目を向けていた。
そしてその奥のグループから
日葵の両耳がテーマパークでも有名なネズミキャラのように大きくなっているように見えたのは俺の錯覚だろうな。
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