その男、幸村
二年E組が俺のクラスだ。
教室にいる時は
といってもおとなしくしている俺は友だちが少ない。このクラスでも俺には仲の良い友だちと言える存在はいなかった。
しかし俺に話しかけてくるヤツは何人かいる。その一人、
体育館。雨が降っていたせいで体育は体育館でなされた。しかも男女合同だ。
もともと俺たちの学校は二クラス合同で二限に渡って体育の授業をしている。男女別々だから二クラスで一クラス分になるのだ。
俺たちE組はF組と一緒だった。晴れた日なら屋外と屋内に男女が分かれるかたちになるが今日のように雨が降ると同じところに集まる。
必然的に俺たちは女子の姿も目にする。
「Fカップ組だ!」隣の
この幸村、俺は少し苦手だ。思ったことをつい口にしてしまうタイプのようだ。それも青春真っ只中の男子の心情を吐露するかのように。
「見ろよ、ゆさゆさじゃね?」同意を求められても困るな。
男子も女子もバスケットをしていた。常にコートに立っているわけにもいかず休憩がてら見学の時間帯はできてしまう。
俺たち男子の一部は物珍しそうに女子の体育に目を奪われていた。
F組にはなぜか豊満な女子が多くいた。そのために「Fカップ組」などという別称が学年男子全体に流布していたのだ。
おとなしい男子は幸村から離れた。そういうことは思っていても口には出さないものだ。なのに幸村ははっきりと口に出す。
「F組は担任の
「学級委員の
「あのおとなしそうな
学校にいる時の日葵は普通の女の子だ。意識して目立たないようにしているのか、本当はもっと動けるはずなのに地味に動いている。にもかかわらず胸はやはり揺れていた。
俺はその胸がFカップだと知っている。仕方がないじゃないか。洗濯物を堂々と干しているのだから。
「南雲さん、小原さんは有名人だけど、無名の山田さんも良いよな。
「それに比べてうちの女子は顔では負けてないけど肉欲感が足りてないな」女子に聞かれたらコロされるぞ!
いつの間にか男子の姿は俺だけになっていた。俺は幸村のそばに取り残されていた。
こいつのそばにいると俺まで同じ人種と思われてしまう。俺は立ち上がろうとした。
「今、こちらを向いたぞ! 山田さんが」
「あ?」俺は間の抜けた声を出していた。
日葵は常に俺がいる位置を把握していて、時おり俺だけにわかる合図を出していた。
俺はそれを見て見ぬふりをしていたのだ。
その
「F組の箱推しも良いが山田さん推しになるぞ」
幸村が息巻くのを俺は冷めた目で見ていた。やれやれだぜ。
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