幕間 国王の困惑
「は? リディア嬢本人がスライムを撃退しただと⁈」
ワシは影の者からの報告に愕然とした。
影の者には、ユードレイス領でリディア嬢の悪い噂を流すことやリディア嬢の様子を定期報告するようにと指示していた。
今回は、リディア嬢が魔物が蔓延る土地に嫌気がさすように、スライムに遭遇するという状況作りを指示したのだ。
スライムの攻撃力ならば、命に関わることはない上に、騎士団が助けに入れば問題ないだろうという判断であった。
影の者は、リディア嬢が街に出たタイミングで凶暴化したスライムをけしかけたそうなのだが……。
なんと、当のリディア嬢がスライムを倒してしまったらしい。
「確かにリディア嬢は強いかもしれないが、リディア嬢の魔法属性ではスライムは倒せないはずじゃないのか⁈」
ワシの疑問に、影の者は首を横に振る。
「実は、リディア様は塩でスライムを撃退されて……」
「し、塩で⁈」
塩で撃退ってどういうことなんだ⁇
というか、魔物に立ち向かう令嬢なんているのか⁈
わ、わけが分からんぞ……。
「ま、まあいい。引き続きリディア嬢が孤立するように、噂を流し続けてくれ」
「それが、リディア様がスライムを撃退したことで、一部の住民と仲良くなられてしまったようです」
「仲良く⁈」
貴族の令嬢が平民と仲良く⁈ しかも、その理由がスライムを撃退したこと⁈
元々、少し変わった令嬢だとは思っていたが、ここまでとは恐れ入る。
「……まあ、噂がすぐに収束することはあるまい。引き続き噂を流してくれ」
「分かりました」
リディア嬢が辺境の地に嫌気がさすような仕掛けはいくつか施してある。それに、いざという時の第二の作戦もある。
きっと上手くいく、とワシは自身に言い聞かせる。
しかし、ワシが画策したことは、ことごとく上手くいかないことをワシはまだ知らない。
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