大好きな先輩二人と (高校二年生女子 @夜の公園のベンチ (その2))
「じゃあさ。あいつの口についてるコーンを取ってやってくれよ」
確かに斎藤先輩の唇のすぐ横にコーンの欠片が付いている。
いつもクールな斎藤先輩には珍しく可愛らしい状況だ。
「付いてる?」
「はい。取って良いですか?」
私はちょっとドキドキしながら斎藤先輩の口元に手を伸ばす。
こんなこと畏れ多いけれど、みんなに自慢できる出来事になる。
と、途中で腕が動かなくなった。
見ると長倉先輩の手に掴まれていた。
「口で」
「え?」
「夏菜の口で取ってやってくれよ」
口で?
それってキスしてしまうけど。
御冗談を、と長倉先輩を振り返ろうとしたが、長倉先輩の手に頭を固定され、斎藤先輩の方へ押される。
「ちょっ。え?」
「夏菜。頼む」
斎藤先輩が表情を変えずに私の方へ口元を近づけてくる。
いつものように冷静にあしらうと思った斎藤先輩が乗り気なのにさらにびっくりする。
「え?え?」
長倉先輩に後ろから押されて私の唇がどんどん斎藤先輩に寄っていく。
何、この展開。
あのコーンを口で取る。
良いのか。
そんなことをして良いのだろうか。
「取るだけだよ。難しく考えるな、夏菜。口で取るだけで斎藤は明日、無双になれる。なあ、斎藤」
「ああ。取ってくれたら負ける気がしない」
嘘。
ドキドキが強まり過ぎて、私の言葉はもう声にならなかった。
目の前にコーンが、斎藤先輩の唇がある。
私はそこから目が離せなくなっていた。
これはキスではなく、コーンを取るだけ。
明日も頑張ってくれるなら、良いかもしれない。
さらにグッと押され、私はその力を言い訳にするように斎藤先輩に一気に触れた。
柔らかい。
唇でコーンの欠片を捉え、口に入れる。
「ありがと」
礼を言われても、私は全身を強張らせて黙って俯くだけだ。
口の中で小さなコーンがやけに存在感を持ち続ける。
緊張で唾液が出て来ず、コーンが溶けない。「俺だけじゃ悪いから、長倉にもしてやってくれよ」
え?
驚いて私は斎藤先輩を見上げた。
今度は長倉先輩に?
すると、長倉先輩にギュッと腕を抱かれた。
振り向くと、長倉先輩がいつもの人懐っこい笑顔で私を見ている。
「頼むよ、夏菜」
斎藤先輩にスプーンとアイスを取り上げられる。
「夏菜。ほら」
斎藤先輩が角砂糖ぐらいの大きさのアイスが載ったスプーンを私の口に差し出す。「食べて」
全身が熱くて頭がボーっとする。
斎藤先輩がスプーンを私の口に付けるので、反射的に開いた。
口の中に冷たさは感じるが、味は分からない。
「長倉がそのアイスを食べたいって。口移しで」
長倉先輩が私の顎を指でつまみ、自分の方へ向ける。
背中に斎藤先輩のがっしりとした体が密着してきて動けない。
顔にまとわりつく空気が熱い。
呼吸がままならない。
「美味そうだな」
長倉先輩は私に考える隙を与えず、私の唇に覆い被さってきた。
何かがぬるっと入り込んできて私の舌の上で踊る。
全身に力が入らなくなるぐらいに気持ち良い。
二人に身を委ねた私を丸い月が見ている。
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