第14話 銀と清忠

今、俺の部屋で、俺と銀ちゃんと清忠の三人がローテーブルを囲んで無言で座っている。何でこうなったかと言うと…。


俺は家に帰ると、部屋にいる銀ちゃんに「友達が来てるから二階に行くね」と声をかけて、清忠を連れて二階に上がった。

制服を脱いで部屋着に着替え、きょろきょろと部屋を見回してる清忠を、ローテーブルの傍の座布団に座らせる。


「凛ちゃんの部屋、綺麗に片付いてるね」

「まあな、あんまり物を置きたくないんだ。お茶を淹れてくるから、座って待ってて」


そう言い置いて部屋を出ようとした所で、ドアを叩く音が聞こえた。

ドアの外には、銀ちゃんがお盆にお茶とお菓子を乗せて立っていた。



「凛、お茶を持って来た…。入るぞ」

「ありがと…え?」


銀ちゃんは俺の横をすり抜けて、ローテーブルを挟んで清忠の向かいに座った。そして、テーブルの上にお茶とお菓子を並べていく。

並べ終えても銀ちゃんが座ったまま動く様子がないので、俺も渋々、二人とは直角になる位置に腰を下ろした。

そして、冒頭のような状況になったのだ。

しばらく誰も口を開かずに、静かな時間が過ぎていった。俺はそろりと湯呑みに手を伸ばし、お茶を口に含む。

じっと銀ちゃんの顔を見ていた清忠が、にっこりと笑って銀ちゃんに話しかけた。


「こんにちは。俺は凛ちゃんと同じクラスの真葛清忠って言います。凛ちゃんの一番の友達です」


清忠の言葉に、銀ちゃんの眉毛がぴくりと動く。


「真葛…」

「ええ真葛です。一ノ瀬さん」


なぜか楽しそうな声で、清忠は名前を繰り返す。

清はイケメンな銀ちゃんが気になってたみたいだし、名前を覚えてもらいたいのかな。

俺は呑気にそんなことを思いながら、ぼりぼりと煎餅せんべいかじって二人を見る。


「なぜ凛と友達に?」

「ちょ、ちょっと銀ちゃんっ。なんでそんな質問すんの?理由なんてないよ。一緒にいて楽しいから友達になるんだろ」

「楽しい?凛は彼といると楽しいのか…」

「そうだよ。高校で初めてできた友達だし」

「…そうか」


俺の返事を聞いて、銀ちゃんは押し黙ってしまった。代わりに清忠が話し始める。


「俺、最初は男だけど可愛いな、と思って凛ちゃんに声をかけたんです。でも一緒に過ごしてるうちに、凛ちゃんは見た目に反して男らしいし、喋ると楽しいし、やっぱり可愛いしで好きになったんです。あ、もちろん、友達としてですよ?それに凛ちゃんが困っていたら、俺は力になりたいと思ってます」

「清…」


まだ、知り合って一週間しか経ってないのに、そこまで俺のことを思ってくれているなんてと、胸がじわりと温かくなる。


「そうか、わかった。真葛くん、暗くなる前には帰りなさい」

「はーい、わかりました」


軽く返事を返す清忠に、露骨に嫌な顔をして、銀ちゃんは部屋を出て行った。

銀ちゃんは清みたいなタイプが苦手なのかな。

あまり感情を表に出さない銀ちゃんが、明らかに清忠に対して良く思ってなさそうな様子を、俺は不思議に思った。



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