第10話 再会

青みがかった黒髪に、切れ長の二重の瞳、すっと通った鼻筋と薄い唇。薄手の黒のニットが長身の彼によく似合っている。それにしても…。

で、でかい…。しかも超イケメン!こいつだっ。絶対こいつが俺の同居人! とりあえずスーツの男の方じゃなくて良かった。このでかいイケメンは、まだ優しそうな顔をしてる分、怖くない。怖くないどころか、なんとなく懐かしい感じがするんだけど…。


「はい、終わってます」

「そうか。織部、もう帰っていい。ご苦労だった」

「はい、失礼します」


織部と呼ばれたスーツの男は、イケメンに深々と頭を下げると、俺には見向きもしないで、颯爽さっそうと帰って行った。

イケメンと二人取り残されて、また胸がドキドキと鳴り始める。

な、なんだかさっきとはまた違う緊張が…。

俺が俯いて心を落ち着けていると、イケメンが低音の耳に心地よい声で、俺の名前を呼んだ。


「凛、椹木…凛。久しぶりだな。変わらず、おまえは可愛らしい…」


イケメンが俺に向かって手を伸ばし、頬に触れてくる。

驚いて肩が跳ねてしまったけど、その手の感触に覚えがあるような気がして、俺は自然と彼の手に擦りつけるように頬を寄せた。

彼の手の心地良さに目を閉じかけて、はっと我に帰り、身体を後ろに反らして距離を取る。


「なっ、何勝手に触ってんだよっ。てか、久しぶりって、俺はあんたなん…か、知ら…あれ?」


今度は俺からぐいと顔を近付けて、下から彼の顔をまじまじと見つめた。

この顔…それに、このいい匂いは…。


「銀ちゃん?もしかして銀ちゃんなのっ?」

「ふっ、そうだ。懐かしいな…凛」


ふんわりと優しく微笑む銀ちゃんに、俺は抱きついた。


「うわーっ、銀ちゃんだ!久しぶりっ。元気だった?」


銀ちゃんを見上げて、少し目を潤ませて尋ねる。


「ああ元気だ。凛も元気そうだな。少しは大きくなったか?」

「うっ…、まあ、どうせ俺はちびだけど…。そっかぁ、銀ちゃんだったのかぁ。どんな人が来るか不安だったから、銀ちゃんで良かった…」

「驚かせたな。凛、今日からよろしく」


銀ちゃんは、そう言って俺の額にかかる髪の毛に唇を付けた。


「ぎ、銀ちゃん…、もう俺はあの頃みたいな小さな子供じゃないんだから…」


俺は、銀ちゃんの胸を押して身体を離し、前髪を押さえると、慌てて玄関を飛び上がった。



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