第4話 チャンスは平等

 ろうと二人きり、クレープ屋に寄って買い食いして帰る。花束みたいなクレープを二人でつつきながら家の傍の公園に入りベンチに座った。

『美味いな、これ。一人で一つは多いけど、二人で食べるならちょうどいいか?』

 狼はチョコバナナとクリームをスプーンですくい口に運ぶ。

『うん、美味しいね。この間女子のグループで来たんだけど、もっと食べたいみたいな感じだったよ。』

『ハハ。女子は甘いものが好きだな?ユエちゃんも好きなのか?』

 ユエはスプーンを銜えると頷いた。

『うん。太るのは怖いけど、美味しいからなあ。今度はおかずのやつも食べてみたい。』

『ああ、チーズとハムだっけ?じゃあ次に来た時でも食うか。』

『だね。』

 クレープを食べ終えて、狼が自販機でコーヒーを買ってきた。暖かい缶を開けて甘いコーヒーを飲み込む。隣で座っている狼は空になった缶を持つとゴミ箱に捨てた。

『そろそろ行こうか。家まで送るよ。』

『うん、ありがとう・・・。ねえ、狼君。』

 ユエの家のほうへ歩き出す。

『どうした?』

 放課後の教室から出て行く虎二とらじ西島にしじまを思い出してユエは顔を上げる。

『もしかして・・・虎ちゃん、あんまりああいう形で紹介って嫌だったのかな?』

 狼は苦笑すると頷いた。

『かもなあ・・・今頃告白されてたりして。』

『ええ?・・・ああ、そうか。そういう・・・ことだよね。』

『フフ、気付いてなかったの?』

『うん。だって仲良くしたいって言ってたから・・・。悪いことしたかなあ?』

『そんなことないよ。そういうこともあるし。』

『え?あるの?』

 ユエが狼の顔を見上げると狼は破顔した。ぽんぽんと頭に手を伸ばして撫でると狼はユエの顔を覗きこむ。

『気になる?』

 気にならないといえば嘘だ。でも、幼馴染の恋路を邪魔したくなんてない。

 内心複雑な顔をしてユエは言う。

『気に・・・なる・・・かもしれない。』

 狼はケラケラと笑うと両手をポケットに突っ込んだ。

『ユエちゃん、正直だな。俺も気にならないわけじゃない。けどさあ・・・俺としては虎を応援したいとも思ってる。』

『うん。同感。』

『俺とユエちゃんの気持ちが同じかはわかんないけどさ。でもチャンスは皆に平等だからさ。』

『チャンス?』

『そうチャンス。俺は難しいのかも知れんけど。』

 狼は苦笑するとユエの顔を見る。

 もしかして狼も難しい恋をしてる?そう思って狼の袖をぎゅっと掴んだ。ユエの手に狼は驚いて目を見開くと少し困った顔で笑った。

『どうしたの?』

『だって・・・難しいって・・・。』

 なんだか複雑な気持ちになってしまってユエは狼の顔を見つめた。

『西島さんじゃないけどさ・・・できる事があるなら何でもするよ?』

『・・・うん、ありがと。でもユエちゃんにしてもらうことはないかな?』

『そっか。』

『うん。手、繋いで帰る?ぎゅっと掴んでるけどさ。』

 狼の視線にはっとして手を離す。狼は少し残念そうに笑うとユエの背中を押した。

『ほら、帰ろう。明日になればわかるんじゃない?』

『そうだね。』

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