01-16 480年前の世界へ
ようやく第7曜日――日本で言う土曜日の朝を迎え、雅稀らはフォール=グリフィンについての情報を仕入れるべく、再びロザン准教授の元を訪ねていた。
「いやー、まさか昨日のグリフォンパーツ学院史の担当がロザン先生だったとは、びっくりでしたよー!」
利哉はニコニコしながら元気そうな声を発する。
「大学の歴史については、僕が1番研究しているからね」
利哉の元気な声に圧倒されたのか、ロザン先生は苦笑いしている。
「あの、今日なんですけど」
一翔は2人の会話に口を挟む。
「どうした?」
ロザン先生は顔色を変えて首をかしげる。
「一昨日の話の続きになりますが、フォール=グリフィンについて知りたいと思って……」
一翔は少し緊張した表情を浮かべる。
「フォール=グリフィンという組織ができたのは、厳密に言えば480年前、フェリウル歴8399年の話。
ロザン先生は相変わらず真面目な顔をしている。
おい、知ってるか? と利哉は一翔にささやいたが、一翔は目を閉じて首を軽く左右に振った。
「ドナデュウは
「それにしても、どういった経緯でフォール=グリフィンを作ったんですかね?」
雅稀は目を細めて腕を組む。
「この件については話し出すと長くなるし、きっと他のことも知りたいでしょ。だから、この水晶玉が教えてくれる」
ロザン先生は白く光っている水晶玉に軽く手を触れる。一昨日、ロザン先生が雅稀らの情報を入手したとされる水晶玉と同じものだ。
「これは、かつて僕の研究に協力してくれた占術学専攻の学生の遺品でね。これに、今知りたいことを思いながら手をかざすと、過去の真実を教えてくれるのさ」
ロザン先生の目は潤んでいた。殺された大学院生のことを思い出したのだろう。
雅稀たちはロザン先生に言われるがまま、黙って右手を水晶玉へ伸ばす。
水晶玉は白い光を放ち、彼らはロザン先生の第2の研究室から姿を消した。
――***――
「……ここは……どこ?」
状況が把握できていない利哉は不安な気持ちで辺りを見渡す。
「水晶玉の世界だよ。僕の母さんが持っている水晶玉と同じものだ。これは
一翔は神妙な顔つきで外の世界をじっと見つめる。
雅稀は足元へ目をやる。真っ黒な空間の中に薄青と薄緑の大きな球体が宙に浮いており、その中には無数の銀河がある。
入学式の前日に見た4つの球とそっくりだが、赤と黄色の球がない。つまり、元々
雅稀たちの体は勝手に青色の空間に突入した。
――***――
魔法戦士が戦う闘技場と思われる場所に着いた。ローマにあるコロッセオのような建物で、古い木でできている。
中央に石膏でできた正方形の舞台の周りに観客席が設置されている。
そこでは学生大会が始まろうとしており、真上から宙に浮いた状態で雅稀たちは眺めている。
「俺たちの姿に気づかれなければ良いけど……」
雅稀は不安な気持ちを漏らす。
「大丈夫。僕たちはここの時代の人じゃないから見えてないよ。それに、
一翔の言葉に雅稀は安堵した。
「おい、試合が始まるみたいだぞ」
利哉は真下の会場を指す。
雅稀も一翔も試合観戦に集中することにし、3人は空いた観客席に着地した。
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