第54話 特訓の結果

ネリーは更に速くなった。寝るごとに速くなっている。走りながら、偶にナイフを抜いて、枝を切ったりしている。常に練習しながらなのだ。競争と言ってもまだ序盤だしな。俺も彼女から少し離れた場所を移動している。俺も木の上を移動したり、スライムの体で移動したり、逆立ちしてといろいろ試している。高速移動中の攻撃もブレが無いかテストしている。


この遠征中、問題は無いようだが、相談はあったようだ。ニコルが対応したが…シルフィードからの嬉しい悲鳴というべきなのか、モテて仕方がないらしい。

現在俺の家のネヴァーランドには結構な数の馬がいるが、その内雄は3頭だけ。雌は25頭。この世界では、南部では繁殖期が緩いらしい。年中馬の食べ物があるからだと言われている。今度シルフィードに訊いてみるか。北部は雪が降るので繁殖期があるそうだ。人間と変わらない。基本的には安全安心が確保出来れば産み増やす。粘菌も同じ。何事も環境に左右される。人間が社会を複雑にしているだけだ。で、雄を増やしてほしいのかと言えば、別段そうでもない。元々馬は一夫多妻の生き物だろう。たぶん。惚気なのか?それもいい。世は平穏だ。


おっと、何か追いかけてくるね。ネリーも気付いているようだ。嗅覚向上だとしても、走っている場合、後ろからくる何かに気付けるのだろうか?ネリーはできているな。何か他の探索方法を持っているのかもしれない。勘以外で。ネリーはスピードを落として、対応することにしたようだ。この感じはグリーンウルフだろう。心配はいらないが倒した後収納しないといけないから、後ろから行って回収しながら進むか。ネリーは理解しているだろうしな。


ネリーに突っかかっていったグリーンウルフは次々に屠られていった。5匹倒された時点であきらめて去っていった。今は10匹いても相手にもならないか。その後は何もなく、出てきても相手にせず、一気に家を目指して加速していった。少し追いかけっこを楽しんだりと、近づいたり、離れたりして、家には1時間弱で着いた。最後の20分はデッドヒートで彼女の限界を絞り出すようにした。彼女はもうヘロヘロでたどり着いた。鍛錬はこうでないとな。


家でニコルに挨拶して、風呂をいれて、ネリーを入れてやる。グダグダなので、洗って風呂桶に一緒に入って、乾燥させて、寝かせた。お待ちかねのステイタスチェックだ。


名前:ネリー

種族:獣人(犬)

年齢:6

レベル:21

HP:10/60

MP:6/15

能力: 物理耐性:31 俊足:28 卵 俊敏:18 味覚向上:8 HP回復:5

種族能力:身体強化:30 嗅覚向上:32 聴覚向上:18


かなり成長した。レベルが一気に10も上がった。俊足、俊敏はネリーにぴったりだ。HP回復も体力勝負の彼女にとっては命綱だろう。味覚向上とは面白いものが手に入った。蜂蜜のお陰か?俺にもついているかも。


名前:タロウ(仮)

種族:スライム(Huge)small -> medium -> large -> great -> huge -> giant -> gigantic->mammoth->monstrous->behemoth-> mountainous-> mighty->ultimate -> chaos

年齢:0

レベル:75 (冒険者で言えばBの中あたり)

HP:1811/1900

MP:2222/2300

能力:成長促進:70 魔力増進:73 強運:16 異常耐性:99 隠形:100 感知:100 五感向上:100 器用:100 変装:30 体捌き:38

鑑定:63 魔力操作:99 身体強化:100 硬化:89 糸操作:92 糸生成:87 毒耐性:99 毒生成:85 水泳:21 吸着:100(壁でもどこでも移動できる)水魔法:83 火魔法:83 土魔法:92 風魔法:90 光魔法:51 闇魔法:95 生活魔法:53 無属性魔法:75 状態異常魔法:88 呪術:89 魔法耐性:88 隠蔽:53 錬金術:60 解錠:34 罠感知:35 罠設置:35 毒付与:36 神聖魔法:8 剣術:26 短剣術:11 弓術:5 話術:14 詐術:10 斧術:10 馬術:23 槍術:17 盾術:20 兵術:22 武術:19 記憶術:13 木工:4 千里眼:22 投擲:28 鍛治:27 栽培:5 味覚向上:8


種族能力:吸収:60 分裂:63 集合:63 収納:69 物理耐性:99 リサイズ、擬態:44 腐食:20

特殊能力:自由。

加護:ラレイロ(小)



レベルは上がらなかったが、他に徐々に上がっているスキルがあるな。使うと上がる。神聖魔法も女将さんを助けたりしたからあがったのだろう。擬態はいつも使ってるからだろうし。味覚向上ができた。ネリーと一緒だ。蜂蜜が怪しい。やはり、集中合宿は意味がある。というか辺境だな。ネリーも強くなったから、ダンジョンを覗きに行きたい。気持ち的にダンジョンで魔獣を倒す方が気が楽なんだよ。辺境だと自然の一部のような気がして。あのホワイトファービーもキラーマンティスも食物連鎖の中にちゃんと組み込まれている感じがして。どちらも魔獣だからもしかしたら発生原理は同じかもしれないが。スタンピードとかでなければ辺境で乱獲する気は無いし、しそうなやつがいたら邪魔をしそうだ。それぞれ生活はあるだろうけどな。


「よお、シルフィード。元気そう…かな?やつれた?」

「大将。久しぶり。なんか調子良さそうだな?」

「ああ。辺境で鍛錬してきたからな、一週間ほど。お前にも鍛錬して強くなってもらおうかな。俺たちの旅には危険が付きまとう。盗賊に襲われるなんて、いつでもありそうだ。盗賊を蹴り殺せる、バトルホースを目指すか?」

「カッコいいけど、俺は普通の軍馬だぞ。」

「そうだろうけどな。焦ることは無い。それよりもお前もパパになるか。」

「そうだろうな。1年以内に。」

「早いがおめでとう。何かしてほしいことはあるか?」

「いや、幸せ過ぎて何も思い浮かばない。」

「幸せな奴だ。そうだ、明日12頭に手助けてほしい。スポケーンまで塩を運ぶんだ。4頭で1台の馬車を引いてもらおうと考えているがどうだろう?」

「どのぐらいの量なんだ?」

「1500㎏だな。15頭いれば1頭当たり100㎏だ。」

「それなら、俺達7頭でも行けるよ。俺たちは元々騎士を乗せて走っていたんだぜ。ごっついおっさんがフルメタルプレートの装備をつけて。200㎏なんてざらだったよ。7頭で行こう。少し鍛錬しないと。」

「それでいいならいいぞ。明日の朝出る。どうやって塩の袋を積むか?前は縄で結んでごまかしたんだよ。距離が短かったし。」

「そうだな。鞍を乗せてその鞍に縛り付けるのが基本だろうな。それなら痛くないから。」

「鞍を用意しなくてはいけないな。どこで手に入れたらいいのか。最低7個。明日いるからな。」

「マイクロフ聖王国で貰ってくればいいのでは?」

「盗んでくるか。一度見に行かなくては行けなかったから、いい機会だが、盗むのは筋が通らないな。今鞍はいくつあるんだ?」

「俺達5頭が使っていたものだけだろう。」

「それを見て作れるか試してみるよ。また後で来る。それと、此処の草で十分食べれているか?ニコルが面倒見てくれているとは思うけど。」

「旨いよ、ここの草。」

「なら、良かった。また来る。」


俺は家に戻りニコルに鞍を出してもらった。細かく調べた後、一つ作ることにした。革がいる。


皮は何でも良さそうだから一番大きくとれるオークにした。オークもかなりの数が溜まっているので、少し失敗しても大丈夫だし、ネリーが解体したときのオークの皮もすでにある。今回は自分で初めからやってみる。

先ずはオークを離れた場所で収納から出し、クリーンをかける。試しに、革以外を収納してみたら、綺麗に皮だけが残った。楽。ここからがわからない。ちょっとずるして、ケイレンソードへ飛んだ。町の衛兵に馬の鞍を買えるか訊いてみた。この街には馬具を扱う店があったので、直行。もし買うことになったら9個あるか訊いたらあるそうだ。最低でも二つと思っていたからホッとした。

皮革業者を紹介してもらって、お邪魔した。そこで皮の鞣し作業を教えてもらって、必要な材料を商業ギルドで購入した。やはり万が一の為に、馬具屋に戻って、鞍を9つ買っておいた。これからも馬は増える可能性大だし、情報だけ聴いて、商売に貢献しないというのも、金がある今なら気が引けたからだ。馬具はマジックバッグの振りをしているカバンに入れ、直ぐに家に戻った。昼時なので、ネリーとニコルに何を食べようか相談したら、ステーキだった。忙しかったのでちょうどよい。3人で作れば直ぐで、食べ終わるのもすぐだった。その後、馬に会いに行った。

「シルフィード、結局ケイレンソードで買ってきた。時間が無いから今回は自作は断念だ。そうか、革だけ買ってくる手もあったな。まあいい。取り付け方教えてくれ。誰が行くか決まってるか?」

「決まってる。俺とウインクスと他に5頭。お腹が大きくなってない馬だ。」

「よし。」

俺はシルフィードに教えてもらって何とか取り付け方を覚えた。


さて、皮の鞣しの続きだ。オークの皮を一度お湯にさらして、細かい毛を洗い流した。湯剝きという行程らしい。魔法でできそうだが、知識を得るために手でやる。そして乾燥。乾燥した皮は硬い。それをまた水と買ってきた特別の石を入れた桶に浸ける。2,3日漬けとくらしいんだが、水魔法で圧力を掛けて時間短縮だ。1時間ぐらい待ったら、出してクリーン。後は板に張り付けて縮まないようにして乾燥。その後で買ってきたオイルをしみこませて、日陰に干して完成。確かに革っぽい。鑑定するとオークの革(中)となっている。どうしたら(上)になるのか、今度皮革業者に持ち込んで訊いてみよう。


今朝早く出発し、もうスポケーンの門が見える。7頭で1500㎏の塩を運んできたのだ。流石鍛えられた軍馬たち、何ということもなく達成した。門で挨拶をして、さっそく城へ向かった。


「領主様、ご無沙汰しております。お約束の塩1500㎏を運んでまいりました。お納めください。」

「助かったぞ。以前と同じ契約だ。デメトリアス、料金を渡してやってくれ。」

「ここに金貨1050枚あります。契約通りです。」

「確かに。ありがとうございました。」

「そなたの友達はどこで塩を作っているのだ?」

「申し訳ありませんが、契約の条件で他言無用であります。ご勘弁ください。」

「そうだろうな。忘れてくれ。」

「失礼いたします。」


宿屋で預かってもらったネリーに、

「仕事終わり。屋台に行くか?」

「行く。あのお肉の店に行く。」

2人で屋台の前に行くと、嬉しそうに、

「お、また来てくれたんだな。新しいのがあるぞ。」

「もっと大きくしたのか?」

「まあな。1本銀貨4枚だ。」

「じゃあそれを2本。」

いつも通り、ジュースを買いに行って、のんびり待っていると、若い奴らが掃除をしている。あいつらか。この店にも来てごみを回収して持っていく。

「あいつらは何故掃除をしているんだ?」

「あいつらは元々チンピラみたいなやつらだったんだが、闇組織の親父に問題起こして怒られてな。罰として暫く街の掃除をさせられてたんだ。その罰は終わったんだが、まだ掃除を続けている。理由は忘れたが、したらいいことがあったらしい。今では、結構有名で、町の人からも信用されてきた。変われば変わるもんだ。」

「10人いるな。親父さん、普通の肉巻き20本、包んでくれ。あいつらにやる。」

「あいよ。」

「はいよ、20本。銀貨4枚。」

「はい、金。ネリー、この袋、あそこの兄ちゃんたちに渡してきてれるか?ご苦労様っていって。」

「うん。」

ネリーは袋を受け取るとぴゅーっと走っていって渡してきた。兄ちゃんたちが手を振ってきたので、こちらも手を振って返す。

「正しいことをすると導かれる。」

「うん。」

「とうとうできたぞ。肉巻き(超超)ほぼ倍だ。」

「これは無いだろう、いくら何でも。他に買った人いるのか?」

「いや、お前だけだ。肉巻き(超)でさえ、スマイルとネリーしか達成してないんだから。」

「いや、有難くいただこう。」

「いただきます。」

「いただきます。」

ネリーはかなり真剣な顔だ。おれはスライムだから、こんなサイズでは何ともならない。しかし、親父の根性は認める。

今回は3層構造だが、縦に2段に重なっている感じだ。6種類の味が楽しめる。味覚向上があるので、さらに旨いし、何が使われているか大体わかるようになった。

上段:甘辛、塩ハーブ、魚醬ピリ辛、

下段:甘味噌、油クルミ、塩レモン。

「親父さん、この甘塩の泥みたいのはなんだ?」

「それは魚醬を使ってる屋台の親父の隣の村で作ってる調味料で、ミソスだったかな。お前達と戦うために少し譲ってもらったんだ。」

「旨いなー、これ。どれも旨いんだが。この肉の並べる順番もいいよな。」

「おじさん、すごく美味しいよ。でももうこれを食べたら何も入らない。」

「そうか、そうか。頑張った甲斐がるってもんだ。」

「うまかった。今回はさすがに払うぞ。」

「いや、今折れちゃあ、筋が通らねえ。だからいらん。また、名前だけ書いていってくれ。」

「分かった。その代わり、これを置いていこう。前回とは違う魚だ。脂がのっていて旨いぞ。」

「すまないな。食わしてもらうぞ。この間の魚も旨かったんだ。」

「ごちそうさん。」

「ごちそうさま。」

ネリーはお腹をぱんぱんにして、ふうふう言いながら歩いている。後ろからつけている奴がいるな。宿に戻るか。今夜は一晩泊っていこう。


分身によると付けていたのは領主様の手先だった。まあ、そうなるだろう。塩の出所が判らないと、心配の種になる可能性がある。今も張っているから、こっそり逃げ出すわけにもいかないが、今回は家に普通に帰ればいいだけだ。次の塩の注文が来たら気をつけないとな。


夜中に抜け出して、女将さんの顔を見に行く。

「わん。」

「お帰り。久しぶりだよ。元気だったかい。」

「わん。」ぐりぐりと女将さんに頭を押し付ける。

「よしよし。ご飯をやるよ。」

皿にいつもの肉付き骨。これも旨い。

「わん。」

「そうかい、美味しいかい。よしよし。」俺の頭をポンポンする。

俺好みの味だ。食べ終えて丸くなる。客がいるので、女将さんも俺と遊んではいられない。


夜中当たりに3人組がやってきた。

「こんばんは。問題ありませんか?」

「いつも悪いね。問題ないよ。今夜は犬が来てるしね。」

「お、本当だ。ご無沙汰してます。」

「わん。」

「すげえ、返事したぞ。全員を代表して、前回は命を助けていただきありがとうございました。」

「わん。」

「では、見回りが残ってますので、失礼します。」

俺は頷く。

「すげー貫禄だったな。」

「全くだ。親分といい勝負だ。」


「今はああやって街の見回りとか、ごみの収集や掃除までしてるんだよ。お前はいいことをしたよ。」わちゃわちゃわちゃ。


閉店までいてから、宿屋を見張っている男の後ろに行く。全く気が付いてない。鑑定で大体把握して、これなら問題ないとほったらかして帰った。

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