ページ4救い
外で話そうと思ったが、長引きそうと思った黎はその後氷室の家へと上がり込む。
玄関には靴箱はなく、靴がそのまま出しっぱなしであった。
内装は木製の壁が囲んでおり、左右に1つずつ扉がある。
廊下は直進的で、奥には扉があり、伯父と黎はその方向へと向かう。
扉を開けると10畳あるリビングが現れる。
リビングには特にこれといった物はなく、入って右側には棚がひとつ、左には机と椅子があった。
机には酒の瓶が散乱しており、綺麗好きでは無さそうだ。
それどころか、部屋を見渡すとあまり掃除が行き届いていない……では表せないくらい汚い。
「ささ、こちらへ」っとリビングに置いてある椅子に黎を招くと、椅子に座る。
奥から伯父がお茶を出してくると、1つを黎の前に置き、もう1つを自身が座る席に置くと座る。
「これはご丁寧にありがとうございます」
置かれたお茶のコップを手に取り、口に含む。
冷蔵庫が壊れていたのか、置いてあったのか分からないが、ぬるく、なんとも言えない気分となる。
「えっと、それで探偵さんが何故ここに?」
「あ、実は昨日こちらの御息女を夜に見つけたんですが、意識がなく、それで少し預かっていて、朝起きたら自分で帰ると言い出し、心配になって……」
話していて黎は自身の中で、あれ……これはたから聞いたらヤバい奴なのでは?っと思い、訂正しようとした。
「あ、それはそれは……うちの子が……」
反応するかと思っていた黎は身構えていたが、塑像していたより、結構あっさりだった。
「来てもらって申し訳ないのですが、まだ娘は帰ってなくて、」
「あ、申し遅れました私は長谷川って言います」
「長谷川さん……ですね、よろしくお願いします」
お互いに座ったままお辞儀をする。
その後残ったお茶を黎が飲み干す。
「そうだったんですね……では少し待たせてもらってもいいですか?」
「え?……ええどうぞ」
ちらっと黎が長谷川の方をチラッと見つめる。
一瞬、長谷川の表情が曇る姿を見ると、彼の視線が少し、黎の後ろに設置されているドアの方を見つめている気がした。
少しして黎の視線に気づいたのか、さっきのにこやかな表情に戻る。
「所で……その」
「?」
長谷川から声がし、目で見つめる。
チラッチラッっとこっちの様子を見ているようだ。
しばらくしていると、さっきの続きを言い出す。
「あなた……本当に探偵……なんですか?」
「この見た目ですが、探偵ですよ」
確かにこの見た目で探偵とは無理がある。
どこの世界に仮面を付けた探偵がいるんだ。
いや、いるはいるかもしれんが……。
長谷川が不審がるのも分かる。
「探偵って事は……推理したり、事件を解決とかを?」
「いえいえ、今はそういう事はやっておりません」
「今は?」
「ええ、ちょっと諸事情で、探偵業をおやすみしておりまして」
そう呟くと、照れくさそうに頬をかく。
「何故おやすみを?」
「……それは秘密です」
そう黎が答える。
その声には少し哀愁感があった。
「ですが、推理は出来ますよ」
「例えば……氷室さんの場所とあなたの所業とかね」
今までぎこちなさそうな笑みを浮かべていた長谷川だったが、黎の一言で一変。
目を見開き、表情が固まっていた。
額にはひっそりと汗が流れる。
「な、何のことでしょうか?」
そう呟くと、黎はつけていたネクタイを緩めると、「まず一つ」と言うと同時に一本指を立てる。
「私の推理の結果を」
そう言い出すと私は考え出した推理を話し出す。
「まず氷室さんは間違いなく帰っています……では何故この家の中に居ないのかそれは何処かに隠されている」
そう言うと黎はチラッと後ろの寝室に繋がる扉を見る。
「そして何故隠す理由は……長谷川さん貴方が彼女を虐待していて隠したのです」
「何を馬鹿げた事を……そんな証拠無いでしょう?私は氷室の事を可愛がってますよ」
長谷川の声がさっきと同じく優しい声色なのだが、少しずつ怒りの声色になっていた。
「そもそも虐待した証拠や氷室がこの家に居るって証拠あるんですか?」
「……先程あなたは帰ってないと言いましたね?」
「え?……ええ言いましたけど……」
長谷川が答えを聞くと、視線を長谷川から右側へと向ける。
後を追うかのように長谷川も視線を追う。
視線の先には特にこれといった物がなく、長谷川は首を傾げる。
「そう、帰ってないと言いましたね……でもそれだとおかしいんですよ」
「?お、おかしい?」
「ええ」
黎は長谷川の急な変化を見て、確信する。
氷室は……長谷川に虐待をされている。
「先ほど御息女の履いていたローファーを見つけました」
「ッ?!」
すると、突如黎が立ち上がると後ろにあった棚に向かっていく。
長谷川が「あ、そっちは」っと声が聞こえたが無視して進んでいく。
到着し、棚を見つめると少し傾いていた。
「この棚の……後ろですね」
棚の後ろをまさぐってみると、何か固いものが当たる。
玄関に入った時靴箱がなく、玄関先に置いてある靴を確認した際彼女が履いていたローファーは無かった。
しかし……ここにあった……氷室が履いていたローファーが。
「このローファーはレディース用で、しかも貴方と氷室さんの二人暮し……」
「え!?、なんでそこまで」
「この家、10畳くらいの広さでこの部屋で生活するには二人が限界……ああいえね、もちろん個人差はありますが」
「だ、だとしてももしかしたら僕も結婚してるかも」
「それはありません」
即答すると、長谷川の手に指を指す。
「まず、貴方の手には結婚指輪がなく、跡もない」
「あ、あと貴方が虐待している理由……貴方の手にですが若干血の跡が付いている」
長谷川の手を見つめてみると、微妙だが、うっすらと血が付いていた。
それに気づいた長谷川は片方の手で隠す。
「次に、棚のすぐ床に凹んだ跡……棚の上には重たそうな物はなく、家を見渡してもそれらしき物も無い……」
「では……すみませんが寝室に」
黎が寝室に入ろうと向かい、ドアノブに触ろうとした時、後ろから足跡がドンドンっと聞こえてくる。
咄嗟に振り返る。
「グッ!」
突如、黎の横腹に鋭い痛みが現れる。
ゆっくりと横腹を見ると、鋭利な凶器……包丁が突き刺さっており、その先を見ていくと、顔が青ざめている長谷川が包丁の柄の部分を両手で持っていた。
その時黎は刺されたと認識した時、痛みが増す。
「ふざけんな……ふざけんな……せっかく
長谷川の目は血走っており、焦点があっていなかった。
息も上がっており、興奮状態に陥っている。
長谷川が手を離そうとした時、黎が長谷川の手を掴み、離そうとしなかった。
そして刺さっていた包丁を抜こうとせず、逆に深く突き刺す。
その行動びっくりしたのか、「アア……何して」
っと長谷川の声が聞こえたような気がする。
そしてそのまま片方の手で長谷川を抱きしめる。
「……お辛かった……ですね」
「……え?」
「大丈夫……ですから……私は……貴方を悪者にしたりしません……まだやり直せます……だからね?」
「おま……え」
黎の表情は見えなかったが、長谷川には、優しく包み込んでくれるような笑顔が見える。
そのまま黎は意識が朦朧とし、地面へと倒れ込む。
完全に意識が消える瞬間どこからか、氷室と長谷川の声が聞こえてくると、そこで意識が消える。
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