第11話 自分との決別、これからのこと
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誰もいない広い部屋で泣いた。
泣いて、泣いて、泣きまくって。
泣けば少しは気持ちがすっきりするかなと思ったけど、おれは
「……おれはノア。ノア・ファフェイスだ。長谷川優希はしばらくおやすみしよう。今のおれは、ダブハーの世界にいるんだ……」
おれは
それは仕方ないけど、少しずつ控えて行こうと思う。
頬をつねると痛かったから、これは夢じゃない。
池に落ちて、熱を出して苦しかったから此処は現実なんだと自覚してたけど、自分から確かめるのとでは受け入れ方が違う。
「おれ、ルイーザの双子のお兄ちゃん……。うわぁ~、ほんとなんでよりによってノアなんだよぉ……! ヒロインのビアンカとか攻略キャラたちは無理でもせめてモブキャラが良かった……!」
長谷川優希は男だったから、男キャラで良かったっちゃ良かったけどね?
「でも、せっかく異世界転生したならモブの女子になって、ルイーザをルイスに戻して幸せにするエンドとかでも良いじゃんかぁ……! 双子っていったってノアとルイーザって仲悪いじゃねぇかよぉ……!」
ノアはルイーザの双子の兄だけど、味方じゃない。
攻略キャラのルートによっては、ファフェイス侯爵家全滅もあって一緒に処刑されたりするけど、敵ってわけでもない。
ノアはゲーム内では活躍らしい活躍をしてないのに、強くなりたいヒロインにちょっと剣術を教えて人気を得たキャラだ。
いや、もっと活躍してたかもしれないけど覚えてない。
「ルイーザの敵か味方かはっきりしろってんだ、ノアぁ……」
双子は自分の片割れだろう。
双子ってのはもう一人の自分だろう。
ノア、なんでルイーザに何もしなかった。
ルイーザに味方はいない。
……本当に?
「おれよ、思い出せ……。ダブハー公式サイト……“教えて! ダブハースタッフ!”のコーナーには確か……」
“教えて! ダブハースタッフ!”とは、ダブハー公式サイトに掲載されていたファンからの質問に答えるコーナーだ。
全部は見てないけど、その中にルイーザに関する質問があった。
~ 教えて! ダブハースタッフ! ~
Q:可愛いルイーザが大好きです! でも、ルイーザは破滅ばかりで悲しいです。ルイーザに味方はいないんですか?
A:ルイーザにも昔、味方はいました。でも、ルイスがルイーザになった5歳の時にいなくなっちゃいました。執事、メイド、庭師の3人なんですけど、ゲームでは出てきません。
「……あれ?」
今、おれが出会ったのって……。
執事のセバスチャン。
メイドのサラ。
庭師見習いのカイル。
「……っ! ルイーザの味方だった人間ともろ被ってるじゃねぇか!」
違うかもしれない。
ファフェイス家の使用人はまだ他にもいる。
侯爵家の使用人が2人しかいないなんてあり得ない。
たまたまおれが出会ったのがセバスチャンとサラだったかもしれない。
おれを助けてくれたカイルは庭師じゃなくて、庭師見習いだとサラが言ってた。
でも、
「この3人はルイーザの味方になってくれる?」
ルイスはまだ、ルイーザになっていない。
ルイスはまだ、女の子の格好をしていなかった。
ルイスがルイーザになるのは、5歳の時……。
「……え、ちょっと待て。今、ノアって何歳だ? 4歳くらいに見えるのはおれの予想に過ぎないから5歳の可能性もあるよな? もしも今、ノアが5歳なら双子のルイスも5歳だよな? 教会で神様へのお披露目儀式っていつだ?」
教会でのお披露目儀式が、ルイスがルイーザとして生きるきっかけになる。
教会でのお披露目儀式はまだ終わってないはずだ。
終わってないと願う。
後でサラに聞いてみよう。
確か、お披露目儀式の何日か前にルイスは既に女装して過ごしているはずだ。
だから、ルイスの父親は教会で女装に慣れたルイスを娘だと紹介出来たんだと思う。
男の子の格好をしている子どもを、娘だと紹介しても周りは誰も信じないだろう。
「この教会のお披露目儀式、一部以外はそんなに重要じゃなくてゲームではさらりとしかやってないんだよな……。ルイーザ視点はないし……」
そこだけでも回想としてルイーザ視点を入れても良かったとダブハーのシナリオライターが言ってたな。
「そういや、まだ変態の父親と会ってないな。名前は出て来てるけどキャラデザはなくて影だけだったから顔は知らないんだよな」
父親の名前は、ジョージ・ファフェイス。
ルイスがルイーザになる原因を作った張本人。
おれがダブハーで嫌いなキャラ、ナンバー3に入っている。
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