第4話 ルイーザについて

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 ダブハーをプレイして、ルイーザが本当はルイスという男の子だと分かっても、おれは初めて見た時のルイーザを『めっちゃ可愛い』っていう第一印象は変わらなかった。

 何せ、ルイーザの見た目はおれのドストライクだった。

 誤解がないように言っておくが、おれは別に水色の髪色が最高だとかロングヘアーが大好きとかではない。

 クラスの女子が言ったように、おれの『ルイーザ推し』に変更はなかった。

 なんだったら、『ルイーザが男でも構わない! 好きだ!』状態だ。

 ルイーザがヒロインを裏で陥れようが、ルイーザのエンドが破滅へと向かおうが推しは推しだった。


『なぁなぁ、ルイーザが幸せになるエンドってないのかぁ……』


 あまりに公式のルイーザの扱いが酷いから、ダブハーをプレイ終了後に同じくプレイしていた女子たちに泣きながら抗議した。


『ちょっと、マジで泣かないでよ。ルイーザに同情するのはハセユウだけじゃないよ。公式では破滅へ向かっちゃうけど、だからこそ二次創作があるんじゃないの!』

『二次創作……』

『ファンアートだけどルイーザを主役にした漫画とかあるよ。ダブハー絵師が描いたB……あー、ハセユウはどうか知らないけど、“ダ腐ハー”も人気だし』

『“ダ腐ハー”……?』


 おっと、ダブハーの二次創作については今は止めておこう。

 公式と話がごちゃ混ぜになる。



 話を戻そう。

 おれはゲーム内でルイーザが破滅しないルートがないか必死に探した。

 残念ながら、おれがプレイして知った限りではルイーザにまともなエンドはなかった。


 なぁ。ルイーザのこと、誰か助けてくれよ。

 なぁ。ルイーザの家族、なんとかしろよ。

 なぁ。ルイーザは天涯孤独じゃなかっただろう。

 身内が幽閉されたり処刑されるんだぞ。

 父親は論外だけど、他に誰かルイーザに手を差し伸べてくれる家族はいないのか。


 ルイーザの家族構成は、父、母、長男、次男、本人の4人家族だった。

 あまり気にしてなかったけど、ファフェイス家の身分は侯爵だったと思う。

 ルイーザは三男で兄が二人いた。

 長男の名前は、マテオ・ファフェイス。

 次男の名前は、ノア・ファフェイス。


 ノア、ファフェイス……?

 待て、ノア・ファフェイスって……。




「ぎゃーーーっ!!!」


 脳裏に過る映像を元に自分なりに少しずつ思い出していると、判明したある事実に飛び起きながら叫んでしまった。


「う"っ!」


 いきなり飛び起きて叫んだことで頭が痛くなって、その箇所を両手でおさえる。

 姿見で今の自分の姿を確認した後、どうやらおれはベッドに寝かされていたようだ。

 そんなことよりも!


(なんでなんでなんで!!)


 おれ、ノア・ファフェイスになってんの!?


 いや、分かってたよ?

 初めて自覚しましたみたいな雰囲気出してるけど、今の外見と“ノア”と“ルイス”がキーパーソンみたいになって色々と脳裏を過って、こうして気付けたんだけどね?

 ルイーザに瓜二つの見た目をした人間なんてノア・ファフェイスしかあり得ないんだけどさ?

 さっき出会った5人はおれを見ながら『ノア』って呼んでたもんね。


 ノア・ファフェイスとはルイス・ファフェイスの双子の兄だ。

 タブハーではたまに登場するサブキャラで攻略キャラではない。

 見た目は男版ルイーザの美少年だけど、ルイスと違うのは髪色と性格。

 設定ではルイーザとは一卵性双生児なのに、ルイーザと髪色が違うのは“所持している魔力量の違い”と公式に書いてあったと思う。

 キャラクターデザインを担当した絵師さんがルイーザの本来の姿を描いた時に気に入り、ゲーム内で出て来ないのは勿体ないということで制作途中に追加されたキャラのようだ。

 ノアは本来、ダブハーに存在しなかったキャラだった。

 だから、攻略キャラではないという。


 ゲーム内ではルイーザとノアは双子の兄妹として通っていたが、二人はあまり仲良くなかった。

 ノアの方がルイーザを嫌っていて、学園内で鉢合わせると睨んだり意図的に避けている描写が何度かあった。

 数少ない二人の会話イベントで『お前のことを妹と思ったことは一度もない!』とノアがルイーザに言っているシーンがあって、双子なのに酷い兄だなと思った。

 その後、ルイーザとの会話イベントでヒロインがノアについて聞いた時に、『……あれでも昔は仲良かったんですよ』と悲しげに微笑む姿に「おいっ、一体何があった!?」とゲーム画面に向かって聞いてしまったおれは悪くない。


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