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「樹里ちゃんって、法務部長と仲良いの?」
1時間・・・言われた通り社内をブラブラしていたら、女子トイレの中で結構可愛い女の人に聞かれた。
うちの会社は・・・結構可愛い女の子や女の人が多くて。
仕事内容は全然好きじゃない樹里にとっては、このポイントだけはツボに入っている。
「樹里がそんな人知ってるわけないじゃん。」
「そうなの?さっき廊下で話してなかった?
法務部長があんなに笑ってる所、初めて見たよ。」
1時間の間で話した人はさっきの人だけなので、あの人が法務部長・・・。
「あんな人、知らない。
さっき初めて喋ったけど、ロリコンエロ親父だった。」
「ロリコン!?エロ親父!?
樹里ちゃんって、本当に面白いよね~。
法務部長、ロリコンにもエロ親父にも見えないけどね。
それに親父って・・・そもそも、今年で28歳じゃなかったかな?」
女の人の話には興味がなかったので、無視をしながら鏡の中の樹里を見る。
ドラッグストアで数百円の日焼け止めとフェイスパウダーをしただけの顔・・・眉毛は軽く整えてはいるけど。
それだけでも、樹里の顔は本当に可愛い。
鼻も小ぶりなのにちゃんと高さはあるし、口は少し小さめだけど程よく膨らんでいる。
それに、このクッキリとした二重瞼に大きな真ん丸の目。
そこには何もしなくても長い睫が沢山あって、目をもっと印象付ける。
あと1つ・・・この色黒の肌が真っ白だったら、本当に完璧だったはず。
それだけがオシイけど、それでも樹里はこんなに可愛いから全然気にいていない。
「樹里ちゃんがツインテールだから、小さな女の子みたいに感じたのかな?
いつもピリピリしてるのに、くだけた感じになってたし!」
女の人からそう言われ、鏡の中にいる自分の髪の毛を見る。
地毛だけど結構茶色くて、1本ずつが細くて直毛。
その髪の毛を、樹里は耳の後ろでツインテールに結んでいる。
本当はお姉ちゃんから貰った赤いリボンのヘアゴムを使いたいけど、子ども用のデザインなので大学4年生になる前に卒業した。
「なんで毎日ツインテールなの?」
「樹里は何でもブレたりしないから。
そんな樹里を受け入れられないなら樹里からお断り。」
「流石だね~!入社式の時から話題になってたよ。
リクルートスーツでもなく、ダボっとした男の子の格好したツインテールの美少女がいたって!」
「リクルートスーツとか買うお金もなかったから。
入社式の案内では服装指定なかったし。」
周りには驚かれたけど・・・なんでかみんな注意をしたり嫌味を言ったりしなくて。
「うちの会社って結構強めな人が多いのに・・・結構可愛い人多いよね?」
「樹里ちゃんにそう言って貰えるなんて、みんな嬉しいよね~。」
女子トイレで女の人と話してから、また人事部に戻り・・・履歴書を1枚ずつパッと見ていく・・・。
それを、何度も繰り返し・・・
繰り返し・・・
繰り返し・・・
繰り返し・・・
繰り返していた、その時・・・
「頑張りすぎだろ!」
そんな声が聞こえてきたかと思ったら・・・
頭の上にポンッと手を乗せられた。
見上げてみると・・・今日話したロリコンエロ親父が、いた。
「もう22時だぞ?そろそろ帰れ!」
そう言われて・・・時計をゆっくりと見ると、本当に22時だった。
それも、ピッタリ。
人事部の部屋を見渡すと、誰もいなくなっていた。
「うん、帰る・・・。」
履歴書の山をボックスに戻し、キャビネットに入れて鍵をした。
デスクに戻り、掛けていた鞄を取ろうと身体を少し屈ませ・・・起き上がろうとした時・・・
目の前が・・・グラついた・・・。
倒れそうになるのが自分でも分かったので、その前にしゃがもうとした・・・
したのに・・・
ガッシリとした腕が、樹里の身体を支えた・・・。
「お前・・・ちゃんと食ってるのか?」
「食べてる。」
「飯・・・行くか。」
「樹里、そういうのはしない。」
「そういうのって、何だよ?」
ロリコンエロ親父が笑いながら言ってきて、樹里は少しグラつきがおさまったので腕から逃れようとする。
でも・・・
「放してよ?」
「放せねーだろ!
このまま帰せねーから!」
「このくらいだったら、全然大丈夫。
お兄ちゃんと一緒で、樹里だって風邪も引いたことないし。」
「じゃあ・・・何か買ってくるから、待ってろ!」
「いらない!!!!!」
大きな声で叫び、ロリコンエロ親父の腕から必死に出ようとする。
それでも・・・ロリコンエロ親父の腕から逃れられず・・・
だから、ロリコンエロ親父を睨み付けた・・・
「樹里は、誰からの施しも受けない!!!」
そう、叫んだ。
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