第6話 家族
「待たせたな蓮」
「いえ、それも仕事ですから」
俺が正門に着くとそこには黒のデカい車が停まっていてその前には俺と同い年ぐらいの少年がいた。
「同い年なんだしもう少しフランクに接してくれても」
「いえ、鷲様は皇家の当主となる御方なのです。私の様な平凡な人間がそんな態度では他会社の人間に侮られてしまいます」
「いや、そう言ってもまだ俺ら小4だけど?」
「そんなものは関係ありません。鷲様は天才であり秀才でもあるのですから」
「は、はぁ」
「お乗り下さい。既に廻都様と穂花様はお帰りになられています」
「分かったから押すな」
俺は蓮に押され車に乗る。
蓮も車に乗り車は出発する。
それじゃあまずこいつを紹介しなくちゃな。
さっきから俺にめちゃくちゃ丁寧に接してくる少年の名前は
俺の専属使用人だ。
言っとくが俺が親に頼んだ訳じゃねぇぞ。
こいつが自分から志願して来ていつの間にかそう言う立ち位置になっていたのだ。
とういか元々蓮の家である東城家は代々皇家に仕える家系らしい。
なので蓮は既に教育と言う名の洗脳が施されてるらしい。
怖。
「それで今日に限って遅くまで学校に残ってらっしゃいましたがどうされましたか?」
「ん?ああ、実夢の奴に少し頼まれごとをな」
「また実夢様ですか。仲が良いのはよろしいのですが仮にも相手は我らの宿敵の御令嬢だとお忘れなく」
「その敵っていうのやめない?」
「申し訳ありませんが皇家に仕える者全員の意見です」
「・・・・・・・・・そう」
こいつ、俺と同じ小4なのになんでこんな怖いの?
「まぁでも仲良くなって損はないだろ?」
「実夢様が鷲様に害されなければ」
「害って?」
「そうですね。例えば鷲様の貞操を奪うとか」
それ男が襲うやつでは?
「安心しろ実夢には好きな奴がいる。もちろん俺じゃなくてな」
「拓海様ですか」
「そう。だから心配はない!」
蓮からは不安の表情が拭えない。
「まぁ、それに俺自身二人と違ってモテないし平気だろ」
「これは重症ですね」
何故か蓮の肩から力が抜け、蓮は溜め息を吐く。
どうしたんだ?
「鷲様、到着しました」
「おう。ありがとう」
俺は運転手の男性にお礼を言って車から降りる。
蓮も俺に続く。
俺の前に広がるのは大豪邸。
広い庭にそれを囲む柵、そしてドンッと構える門。
広さ的にはサッカーコート9個分に相当する。
目の前の豪邸の扉が開く。
『お帰りなさいませ鷲様』
豪邸の中には俺を出迎えてくれる使用人一同。
俺は靴を脱ぎ屋内用の靴に履き替える。
「お帰りなさいませ鷲様」
「ただいま慶祐さん」
俺の親父の執事でこの家の家宰でもある。
それと蓮の父親。
「旦那様と奥様、それと大旦那様も共に既にリビングでお待ちです」
「分かった。手を洗ったらすぐに行くから」
「分かりました。それと鷲様、私のことは慶祐と呼び捨てでお呼び下さい」
「いや、流石に歳の差的に」
「いずれは呼ぶのですから若い頃から慣れておかなければ」
「そうなると他の年上の人にも呼び捨ての癖がつくから遠慮します」
「これは一本取られましたな。蓮」
「はい」
「鷲様について行くように。それと夕食を食べ終えたら私の部屋に来なさい」
「分かりました」
二人は淡々とそんな会話をする。
信じられるか?これが親子の会話なんだぜ、虚しすぎじゃね?
俺は手を洗らいに行く。
「なぁ蓮。俺の前だからって父親なんだからもう少し楽にしても」
「それ以前に父とは上司と言う関係なので」
「あ、はい」
東城家の教育怖すぎ。
***
「来たか、今日はやけに遅かったじゃないか」
「心配したのよ鷲」
リビングに入ってそう言ってきたのは親父と母さんだ。
「悪かったって。少し野暮用があっただけ心配ないよ」
俺は親父たちのようにテーブルの椅子に座る。
「お兄ちゃんおかえり」
「ただいま灯里」
俺の隣に座ってる小さな天使は
俺の妹だ。
そんな天使の頭を優しく撫でる。
「ふにゃ〜〜」
灯里は気持ち良さそうに俺に擦り寄って頭撫で撫でをせがむ。
うちの妹マジ天使!!
俺が灯里の頭を撫でているとゾクゾクとテーブルの上に夕食が並んできた。
「それじゃあ食べましょうか」
「そうだな。それでは、いただきます」
「「「「いただきます」」」」
俺たち家族は目の前の夕食を食い進める。
「それで、どうして今日はこんなに遅かったんだ?ランドセル背負って帰って来たってことは遊びに行ってたわけじゃないんだろ?」
親父がそう聞いてきた。
「いや、学校に残ってただけだし」
「でもシュウって部活入ってなかったわよね」
「それ関係なくない?」
「蓮」
「はい。鷲様は如月家のご令嬢、実夢様に相談を持ち掛けられたそうです」
「おい!」
俺の後ろに控えていた蓮が親父の一言であっさりと吐きやがった。
「またあの娘か」
「じ、じいちゃん……」
テーブルの誕生日席に座るひと際迫力のある爺さん。
「鷲、何度言えばわかる。如月家と我ら皇家は『古くから続く宿敵同士』」
「だろ?わかってるよ」
この頭の固い爺さんは俺の祖父、
「でもな。それは会社同士の因縁だろ?俺と実夢の個人的な関係には関係ないだろ」
「関係なくはない。お前は将来この皇財閥を継ぐのだからな」
「でもよ。俺まだ小4だぜ?ただでさえ友達いないのに実夢まで失ったらマジで友達いなくなるわ!」
「蓮がいるではないか」
「蓮は友達というより監視役って感じだし」
「実際その役目も兼ねています」
「・・・・・・ほらな?」
友達ならもう少しフランクに接してほしいよ。
「私としては実夢ちゃん可愛いしいいと思うけど」
「俺も別に良い子だし問題ないと思う」
「お前たちは…」
母さんと親父が援護してくれた。
じいちゃんはあきらめた様子で食事を続ける。
「それでぇ~実夢ちゃんにどんな相談を持ち込まれたの?」
母さんがニコリと笑顔で聞いてきた。
「別に、ただの恋愛相談だよ」
俺がそう言った瞬間に親父がこう言ってきた。
「鷲、わかってると思うが」
「わかってるから。それに実夢の相手は俺じゃねえよ」
「え、そうなの?」
母さんはそれを聞いて少し驚いた。
「いやいや、何故好きな相手に恋愛相談をする?」
「そ、それもそうね」
「それに俺誰にもモテねぇし」
『え?』
鷲のその一言にその場にいた全員が疑問符を浮かべた。
「ん?なんか変なこと言ったか?」
「ね、ねえシュウ。仮によ、とても顔が整っていて勉強もできて運動もできる子がいたらどう思う?」
母さんがそんな質問をしてきた。
俺はその質問に素直に答える。
「え、めちゃくちゃもてはやされるんじゃね?」
「そ、そうよね。ちなみにどうしてモテないと思うの?」
「え、だって俺に話しかけてくる奴って男女共に拓海か実夢のことばっかり聞いてきて全然俺と個人的な会話しないし二人がいない時とかなんかみんな俺から遠ざかるから」
俺がそう答えるとみんななんとも言えない顔になった、あのじいちゃんでさえ。
「う~~ん、シュウにはちゃんと自分の立場を認識してもらう必要があるかしら?」
母さんがそう言ってきた。
「え、またなんか増えんのかよ。勘弁してくれよ。もう親父から振り分けられた書類の確認とかでただでさえ遊ぶ時間がないのに」
「なら少し減らせばいいのよ」
いやそれなら無くしてくれよ。
「それならも撤廃でよくない?」
「いやいや鷲、お前はいずれ俺の跡を継ぐんだ今のうちに慣れとく必要がある!」
親父が妙に早口でそう言ってきた。
「それにお前が手伝ってくれないと穂香との時間が取れなくなる」
「それはダメね!今のは聞かなかったことに」
息子の時間より夫婦のいちゃらぶのほうが大事かよ!!??
「おにいちゃん。後であそぼ?」
「おにいちゃんの癒しはお前だよ」
「ふにゃ~~」
俺は天使を抱きしめ頭をなでなでする。
こんなんが今の俺の家族である。
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