第21話 合同練習【6月】

音大時代の友人はいなかったが、一応同級生のグループチャットには入っていたから、一か八かそこで呼びかけてみるか。


亘 奏一朗『皆さんお久しぶりです。突然ですが、今月から来月初旬の土日に僕が顧問をやっている川澄高校吹奏楽部の部員にレッスンつけてくれる方を募集します。パートは、金管(Trp. Trb. Hrn.Tub.)木管(Flu. Cl. Sax.)です。予定が合う方よろしくお願いします』


こんな感じで送ってみた。反応があるかどうかすら怪しいが、やらないよりマシだろう。

俺がもっと音大時代に色んなやつと仲良くしておけば、すぐに来てくれそうだけど。

しばらく様子を見よう。


金子 美和『亘くん久しぶり!連絡入れるなんて珍しいね。てか、吹部の顧問やってるんだ!私で良ければ土日休みだからフルートいけるよ~』

結城ゆうき しゅう『久しぶり!亘から来るとかビビったわ笑 俺も土日どっちかなら行ける!金管全般オッケー』


スマホを閉じた瞬間、すぐに返信が来た。

金子も結城も全然どんなやつか思い出せないけど、ありがたいな。

ちゃんと関わりあるのってパーカッションだけだったから。

音大のメンバーはほとんど楽団に所属しているはずだし、土日は予定合わないと思っていたから助かった。


小野里おのざと しおり『亘くんじゃん!びっくり!私も多分合わせられるよ!クラ(クラリネットの略称)微妙だけどサックス教えるよ』


小野里も話すの初めてレベルでしか知らないけど、なんとかなりそうだ。

とりあえずこの3人いれば大丈夫そうか。

この後も返信待ってみて集まらなさそうなら、3人にそれぞれ連絡しよう。


こんなにすぐ集まると思わなかった。

案外やってみるもんだな。

次の土日練習で彼らを呼んでみて、その時に今後もレッスン頼んでもいいか聞いてみることにした。

俺は3人にお礼の返信をして、部室に戻った。


「練習捗ってるかー?」

「あ、先生!譜面の読み方で分からないところがあって…」


吉川が全体合奏用の譜面を持って話しかけてきた。

今回の曲はポップスではないから、ドラムがない分ほかの出番の少ない打楽器が多く盛り込まれている。

その出番は少ないけど重要な役割の打楽器数個をまとめて吉川に託していた。


「ここのタンバリンなんですけど、この表記って何ですか?」

「あぁこれは『ロール』だな。タンバリンにもスネアみたいにロールがあるんだ」

「ロール?どうやってやるんですか?」

「この面に親指の腹をグッと押し当てて、楽器の輪郭をなぞるように触ると…」

「おー!すごいです!連打みたいな音になりますね!」


こういうちょっとした技術も少しずつ教えていかないとな。

この1か月はスパルタ月間になりそうだ。

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