雲より出ずる、神との邂逅③
拝殿を後にした俺たちは、その先にある御本殿の前に向かった。
けれど、そこは一般の参拝客は入れなかったため手前の
イナバによれば元旦から5日間は解放され、御本殿前の楼門までいけるらしい。
来年の正月は父さんたちも一緒に初詣に来るのも良いだろう。
一つ懸念するなら、色んな神様から『神隔世』なり自分の神社なりに半ば強引に連れていかれかねないことかな?
俺の自惚れや杞憂であれば良いけれど…本当にどうなるか分からないのが恐ろしい。
「ん?コン、これって何?」
「おぉこれか。この社は
先程は気付けなかったけれど、よく見ると御本殿の左右に長いお社が続いている。
なるほど…神在月つまり10月の約1週間の間、集まった神様たちは此処に泊まるのか。
「此処のプリンは美味しいんですよ〜♪弟くんにも食べさせてあげたいです」
「プリン以外の料理も沢山ありますよ!?あと紳人くんは人間ですし!」
ウットリと頰に手を当て尻尾をくゆらせるウカミにイナバが目を丸くして驚く。
人間だから入れない、と言いたい気持ちは大いに分かるけど…『神隔世』も本来人間は入れないんだよね。
見えることによって『門』も通過できて、何より最初にアマ様が向こうに連れて行ったので多分彼女から認可のようなものが降りているのかも。
此処だと大国主の許しが必要だろう。御本殿にいらっしゃるはずだが、今回はそこまで行けないので残念ながらお会いすることは無い。
「でも、いつかは」
「10月には会えるのではないか?」
「ナチュラルに心を読んだね…気にしないけど。次来る時は門を使わせてもらいたいかな」
「弁天島の鳥居に開きましょうか♪」
……あれ?自然と10月の神議に俺も付いていくことになってる?
流石にその場に居合わせるのは無いでしょう…あぁでもアマ様とかお義父さんことスサノオも来るはずだし、許可されちゃいそうだ。
まぁそれまでに会わなければ大丈夫、明言されなければ逃げられるさ!
さりげなく参加しようとしても『皆の者、聞くのじゃ!』なんて口上から始まり俺のことを燦然と語るに決まっている。
…ま、まぁ先のことを気にしたら鬼が笑うからやめておこうか。
「因みに、此方も扉は神議の間は開かれるんですよ!迎える用意ですね」
「へぇ〜!それもいつかは見てみたいな」
向かって左の西十九社、向かって右の東十九社へ其々参拝して次の場所へと歩みを進めた。
〜〜〜〜〜
イナバさんの先導で境内の一番奥へやって来た。
「此処は…?何だか『神隔世』に近い空気を感じるけれど」
奥に聳える山、八雲山と言うらしい。そこからは何故だか清らかな雰囲気を感じる。
思わずポツリと漏らした呟きを、そっとウカミが拾ってくれた。
「お社の名前は、
『オレだよぉ!!』
「「!?」」
突然ビリビリと響く声に、思わず軽く飛び上がるほど俺とコンは驚いてしまう。
ウカミとイナバは微苦笑して屋根上を見るので後を追うように見上げたら…そこには。
『よう!ちょっとぶりだな、お前ら!』
半透明の精神体であるスサノオが、猛々しく仁王立ちしていた!
「お義父さん!」
「お義父さん!?」
つい大声を出して驚けば、周りの見知らぬ数人のグループにギョッとした目を向けられてしまった。
イナバにも驚かれているけれどそれは仕方ない。
慌てて口を塞ぎ、ペコペコと謝罪してから小さな声で話しかける。
「何で此方にいるんですか…?」
『役目みたいなもんだ。時折此処から、日本に異常が無いか見守ったりしてる』
「なるほど」
こうして、俺は時折周囲に稀有な視線を向けられながらスサノオと雑談を重ねていく。
「あの…紳人くんって、何者なんですか?」
「彼は大国主と同じでお父様の試練を受けて突破したんです♪」
「ほ、本当に人間…?」
その傍らで、イナバは自身の疑問にウカミが答えると信じられないと言った表情をしていた。
因みにコンはずっと腕を組み、しきりに尻尾を揺らしながら得意げに頷いているのだった。
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