一期一会の、旅の中③
「それで…今日は皆さん、どちらまで行かれるんですか?」
「実は、出雲大社の方に行こうと思っています」
「そうなんですか?私もなんですよ〜」
「奇遇ですね!では、良ければこの後もご一緒に如何ですか?」
「是非是非♪」
早朝に出発したので特に遅延もなく進み無事鳥取に辿り着くことが出来た。
駅に降りてからコインロッカーへ荷物を預けがてら今後の予定を語り合い、何と偶然にも行き先が一致していたので四人旅は続行することに。
まぁ今日は本当に出雲大社を移動の疲れを癒しがてらじっくり観光し、明日は…実はまだ内緒なのだが神戸の方へと向かうことになっている。
此方の目的は勿論、コンたちが食べたがっていた神戸プリンを食べるため。
もし何か周りたいとかもう一泊したいとか言うのであればそれも構わないと思ってる。
お金の心配なら大丈夫!昔から貯金はするタイプだったので、自分のお小遣い貯金を大半この旅行に回しているからね。
再三の発言にはなるけれど…コンとウカミが喜んでくれるなら、安いものだ。
「では行こう、紳人よ!ウカミと稲刃も遅れるでないぞ?」
「はい。ちゃんと一緒ですっ」
「なれば良しじゃ」
俺とコンが並び、その後ろをウカミと稲刃が付いてくる形で俺たちは歩き出した。
四人で並んで歩けるならそれが良いけれど、流石に道幅を取ってしまうので仕方ない。
それに。
「腕を組んで歩いて…可愛らしいですね〜お姉様?」
「そうなんですよ、もう私の方がときめいちゃって!」
「これ!何主婦の井戸端会議みたいな会話をしておるか!」
こうして楽しく和やかに、会話を楽しめているのだから。目線なんて些細なことだろう。
「全く、此奴らは…」
「やれやれだね?」
「本当じゃよ!ふふっ」
「ははっ」
俺に腕を絡ませたコンと二人してこみ上げた可笑しさを笑い合う。
ウカミたちも後ろから軽やかな笑い声を響かせ、吹き抜ける春の微風に似た陽気を感じる旅路。
良い旅の始まりだな…そんなことを、微風に揺れるコンの髪や耳尾を眺めていると。
ふと、後ろの稲刃が目に入った。
「……?」
彼女の視線が一瞬、コンの後ろでふりふりと揺れるもふもふと素晴らしい尻尾に合わせて揺れ動いた。
けれどすぐにウカミと目を合わせ話始めたので、多分、俺の気のせいだろう。
「ふむ」
チラリと稲刃を見て吐息を漏らすコン。少しだけコンの方へ体を近づけると、きゅっと俺の腕に絡まるコンの腕に僅かに力が入るのだった。
〜〜〜〜〜
「此処が稲佐の浜…神様が最初に降り立つ場所かぁ!」
「わしとウカミも此処から出雲の方へ向かうのう」
「そうなの!?」
「今年はどんな神様とお会いできるでしょうか♪」
「馴染み深いんだ…」
出雲大社に辿り着くがすぐにはそこへ行かず、事前に調べたルート通り先ずは此処『
晴天による荘厳な景色の中、目印である弁天島へと向かう中でコンたちも此処へ定期的に訪れていることが判明する。
神様だもんな…ってしまった!
「えと!あの、稲刃さんこれは!」
「いや〜私としては、何だか『
「へ?気多の前…?」
稲刃さんは普通の人だったと誤魔化すか説明するべきかで慌てていると、爛々と目を輝かせながら彼女は此処ではない何処かの名を呼んだ。
「……やはりそうじゃったか」
「まぁまぁ。弁当一つで良かったじゃないですか♪」
合点がいったとばかりに微苦笑するコンと、楽しかったと耳をパタパタさせて微笑むウカミ。
未だに状況を飲み込めていない俺が首を傾げていると、稲刃さんはコホンと咳払いをした。
そして…えいっ!と可愛らしい掛け声と共に力んで見せると、ポポンッ!兎の耳と尻尾が突如として生えてくる。
「!?」
「えへへ…ごめんなさい。つい騙しちゃいました!私はイナバ、大国主様に助けてもらったことがある…一応、兎神ですっ!」
稲刃=イナバ。人に化けるための偽名だったというわけか…。
なるほど…コンがずっと怪訝そうな顔で見ていたのは、イナバの正体を薄々勘付いていたから。
色々と言いたいことはあるけれど…まずは一つだけ。
「弁当…美味しかった?」
「ご馳走様でした♪」
なれば良し!!弁天島を視界の端で見つめながら、大仰に頷いて見せた。
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