一期一会の、旅の中②
「貴女が良いなら俺は構いませんが…コンとウカミはどうする?」
「……わしらも構わぬぞ、紳人」
「だそうです。どうぞ」
「ありがとうございます♪私は…稲に刃とかいて
優しげな笑みを浮かべたまま頭を下げた彼女は、そっと俺の隣の席に腰掛けた。
その際、フワリと花の匂いが鼻腔をくすぐる。
コンの匂いとはまた違う種類の匂い。不思議な匂いだな…。
「むっ」
「コン?どうなさいました?」
「いや…何でもないのじゃ」
ジッと俺と稲刃さんを訝しげに見つめるコン。まさか、自発的ではないとはいえ匂いを嗅いでしまったのがバレたか…?
「あ、すみません!弁当四つください!」
気まずくなって通りがかった販売員さんに声を掛け、人数分の弁当を購入する。
「ありがとうございます、私の分まで」
「袖振り合うもってやつです。お近づきの印にどうぞ」
「わぁ!ではいただきますね♪」
くりんとした瞳が幼い印象を抱かせるのかもしれない…そう思いながら、受け取った弁当を手渡す。
「えぇ…本当に、運命なのかもしれませんね」
「?」
「うぉっほん!」
「わぁ!?どうしたのコン、ホコリでも入った?」
俺から受け取った弁当を眺めながらしみじみと呟くその顔が、何かを懐かしむようにも見えてつい見つめているといつの間にか立ち上がっていたコンが俺の耳元で大きく咳払いをする。
ビックリして心臓をドキドキさせていると、両腰に手を当ててむんっ!と眉を吊り上げブンブン尾を揺らしながらこう言ってきた。
「紳人!お主…まさか、わし以外の女に見惚れておらんよな?」
「えぇ!?本当にまさかだよ。俺がコン以外に心揺さぶられるわけないからね」
「なるほど〜」
「うっ」
予想外の発言に慌てて否定するけれど、目を細めながら微笑むウカミに言葉が詰まる。
恋愛感情的に揺さぶられることはない。しかしどうしてもドキドキはさせられてしまうため、強く否定することが出来ないのだ。
「……」
「コン、俺は絶対浮気することはないよ。君に誓う」
「…他ならぬお主の言うことじゃ。信じよう」
「ありがとう…!」
フッと優しく微笑まれ、内心で見惚れながら肩の力を抜いて安堵する。
「あの。もしかして、お二人は夫婦ですか?」
「分かるかの!?」
「それは勿論!とても深い愛で結ばれているんですね…」
小首を傾げつつ稲刃に声をかけられ、バッと喜色満面にコンが反応。それに対し楽しそうな表情でこくりと稲刃は頷いた。
「いつも一緒なんです、弟くんたちって。だから可愛いんですよ〜」
「えっ!?弟さんなんですか!?でも…」
「あぁ。血の繋がりはありません、義理の姉です」
「血の繋がりよりも濃い繋がりがあります♪」
「健全な絆ですぅ!」
突然頬を赤くして人聞きの悪いことを言わないで欲しい!誤解されたらどうするの!?
「あら、おませさんなんですね」
「遅かったぁ!」
「これこれ紳人、声を抑えていても周りの者に迷惑になることもあるんじゃぞ」
「絶対今気にするのはそこじゃないよ!?」
コンとウカミの
あぁ…これも旅の醍醐味、なのかな?
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