第55話

一期一会の、旅の中①

「よし、それじゃあ二神ふたりとも。忘れ物はないかい?」

「問題ないのじゃ!」

「バッチリです♪」


アイラとシアの兄妹…もとい姉弟の来訪から一日明け、本日は4月3日。


今日から1泊2日で島根の方へと旅行に行くことになったので、今は出発前の最終確認だ。


列車のチケットも確保済みだ。なので、憂いなく駅の方へと向かうことが出来る。


諸々の資金源は以前大量に売りに出したゲームたち。


この旅行も突発的なものではなく、予め二人への感謝の気持ちも込めて計画していたものである。


約束と誓いはしっかり果たさないとね!


「下着や着替えはちゃんと旅行カバンに入れたのでな、抜かりはないぞ!」

「ちゃんと私たちの白と黒のものを!」

「そこは言わなくて良いから!」


惜しげもなく言うんだからもう…何故言った側ではなく聞いた側の俺が恥ずかしがるの?


「耳真っ赤じゃのう…ハッ、赤い下着の方が良かったか!?」

「違いますぅ!」


照れてるだけなので気にしないで欲しい…!


コンとウカミの下着姿を妄想してしまいますます顔が熱くなったので、慌てて頭を振って雑念を追い払っていると不意に視線を感じた。


其方を見やれば彼女たちはニヤニヤと口角を上げながら、これ見よがしに顔を突き合わせているではないか。


「こらぁ!真面目に確認してよ!」

「すまぬすまぬ、謝るからそう目くじらを立てるでない」

「ごめんなさい、わざとです♪」

「わかってたけど余計に性質たちが悪いよね!?」


全く…神様のいたずらも困ったものだ。


斯くいう俺だけど、相変わらず決して嫌ではない。それ故に恥ずかしいと嬉しいの二つの気持ちがある。


そこを見抜かれてるのかもなぁ…と思いつつ、俺たちは最後の準備を終え満を辞して出発した。


〜〜〜〜〜


「ふぅ。余裕で乗れたね」

「紳人が荷物を殆ど持ってくれたお陰じゃ、ありがとの」

「ゆっくり休んでくださいな」

「ありがとう。コン、ウカミ」


列車が到着する10分前には駅のホームへ辿り着くことができ、到着と同時に乗り込む事が出来た。


指定された座席に辿り着くと共に荷物を上の棚へと乗せ深々と腰掛けつつ、にこやかに笑い合う。


「よっ…」

「んむ?紳人よ、席の向きを変えても良いのか?」

「あぁ。俺が予約した時は隣には誰もいなかったし、後から予約するにしてもわざわざ此処は選ばないと思うからね」

「なるほど…確かに、隣が知らない人というのも落ち着きませんよね」

「そういうこと」


座席をぐるっと回転させコンとウカミの席と向かい合わせる。


流石に此処を選ぶ人はいないとは思うけど、もしかしたらそれでも乗りたいという人がいるかもしれない。


その時は大人しく席を戻そう。


あと、俺とコンが一緒じゃないのは万が一知らない人が乗った場合のんびりと楽しめないと思うからだ。


折角の旅、コンとウカミには思う存分羽を伸ばして欲しい。移動中くらい我慢するさ。


「あの〜…私、そこの席なんですけれど良いですか?」

「おっと。すみません、今戻しますね」

「あぁいえ!そうではないんです」

「?」


束の間、三人で談笑していたら一人の女性が声をかけて来た。


どうやら隣の人みたいなので席を戻そうとしたら、慌てて止められ不思議な面持ちでその人を見る。


「良ければ…私もお話に混ぜてくれませんか?一人旅なので、寂しくなっちゃって」


えへへとはにかむように笑う絹のように白く綺麗な髪のその女性は、俺とあまり変わらない身長の割にちょっぴり人懐っこい印象を感じさせた。

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