嘘つきは、友達の始まり②
「変なお願いだってのは分かってる!でもエイプリルフールとかじゃねぇんだ、信じてくれ!」
神様もエイプリルフールとか気にするんだ…と思いながら、疑ってないよと微苦笑した。
あの後、立ち話も何なので我が家へと招き入れてから四人で朝食を食べ、その後で話を聞いている最中である。
「諦めさせて欲しいとのことじゃったが…何故わしらなのじゃ?」
「あぁ、最近神様の間で噂になってるんだ」
「噂…というと」
「スサノオ様の試練を突破した人間がいて、しかもアマ様を始めとする有名な神と懇意だとか。だから俺本神が言っても聞いてくれないなら、頼ってみようと思って」
「あれは別に俺自身の力だけで突破した訳じゃないんだけどね」
噂広がるの早くないか?と思ったけど、最近『神隔世』でも色んなところ行ったりしたし向こうに人間がいるというだけでも話題の種になる。
スサノオとの一件が着火剤になったということかな。
まぁ何にせよ、彼が俺たちを頼りに来た理由も判明した。噂の人間たる俺とコンやウカミの力を頼りにしてきた、というわけだ。
他神の恋路を邪魔するのは気が引けるけど。
当人が何度も断っているのに猛烈に迫っているというし、わざわざ俺たちを頼って唯一玄関から来てくれた神様を無碍に扱う訳にもいかないよね。
「それじゃあ、改めて自己紹介から。俺は神守紳人。隣の彼女が俺の嫁のコンで」
「よろしくなのじゃ」
「それで此方がウカミ」
「よろしくお願いします♪」
「俺はアイラ、よろしく」
代表で俺がアイラと握手する。その手の感触は…何故だろう、スサノオの時とは全くの別物に感じられた。
ガタイが違いすぎるからだろうか。
多分そうかも、とふと感じたその感覚をすぐに思い直して手を離す。
「詳しく話を聞きたいところだけれど…聞いても良い?」
俺の言葉にコンとウカミも同意するように頷くと、ホッとしたようにアイラが笑顔になる。
「あぁ、信じてくれてありがとう。その、だな…実はな」
「うん」
「諦めさせてさせて欲しいっていう、相手なんだが」
「うむ」
「恥ずかしながら…」
「はい」
「妹なんだ」
瞬間。時間が止まった。
「……い、妹?本当に?」
「あぁ…身内の恥を他の神に晒す訳にもいかず。こうして人間の君に、紳人に助けを求めに来たのが1番の理由だ。お二神も信頼できるし、此処にいるなら噂になる可能性も低いし」
神様同士ならそういうこともあるとは聞いていたけれど…なるほど、それは確かに断るのも頷ける。
そして迫るのもまた、神様同士であれば気にしないんだ。
人間同士であれば遺伝子問題があるけれど、神様には影響がないのかもしれない。
「紳人?何も子作りを迫られておるとは誰も言うておらんが…」
「あっ」
「子作り?」
「い、いや気にしないで!こっちの話!」
少し発想が飛躍しすぎたみたいだ。
コンが俺の心を読んでくれて助かったな…イケナイ太陽ならぬイケナイ発想のまま話を進めるところだった。
ピンポーン。
「む?今日は来客が多いようじゃな」
「いえ、これは恐らく」
『お〜に〜い〜さ〜ま〜♡』
「もう来たのか!?10年は目が覚めない薬を飲ませたはずなのに、想定よりも早すぎる!」
何だか慌ただしくなってきたぞ?
慌てふためくアイラの様子がおかしくて、つい浮き足立って玄関の扉へと俺は向かおうと立ち上がった。
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