第54話

嘘つきは、友達の始まり①

「ふぁぁ…」


あれから数日経ち、4月1日の朝に目が覚めた。始業式が4月8日なので残りの春休みは今日を入れて1週間となる。


目が覚めて大きな欠伸をしながら、伸びをしようとする…が、ふにっとした何かに右手が当たった。


「うゃっ」

「ん?」


耳元で聞こえたコンの声にドキドキしながら視線を動かした、そこには何と。


赤色の下着を身に付け自らの股に俺の腕を挟むコンが居た。


「な、あっ!?」


コンの寝相の悪さやそれによって服が脱ぎ散らかされているのはいつものことだけど、何故その下着かつ枕にしていたはずの俺の腕がコンのスベスベな足に挟まれて居るのだろう。


いやそれも寝相が悪いから…?それにしたって限度があるよね!?


あぁまずい!男子なら誰もが経験する朝から元気な自分が…!


何とか、何とかこっそり腕をいや先にもう一つの問題を「……」あぁ〜金色の綺麗な瞳がこっちを見てる〜⭐︎


「えと、あの…コン、おはよう?」

「これは…つまり」


いつものように実は起きていて俺が狼狽える様を楽しんでいるなら、まだ良かったんだけど。


目を丸くしてチラリと自分の格好や腕を挟んでる状況を確認する。その姿は、まず間違いなく本当の寝起き。


と、いうことはだ。


「……ウカミにバレぬよう、優しくしておくれ?」

「-----」


瞳を潤ませ顔を赤くしつつも上目遣いで囁くコンは、余りにも可愛くて扇情的で。


「きゅう」

「何じゃと!?」


俺はコンを押し倒すように布団へと倒れ込み、そのまま気絶してしまった。


興奮しすぎてしまい一周回って意識を手放してしまったらしい。


〜〜〜〜〜


「くぁ…あれ?もしかして、お楽しみでしたか?」

「ち、違うのじゃあ!」


顔を真っ赤にさせたコンは、パタパタとしながら弟くんの下から這い出ようとはしません。


ふふ…可愛らしいんですから♪


〜〜〜〜〜


「うぅ…刺激的な目覚めだった」

「すまぬ紳人、つい…」

「いや良いんだ。コンの誘いは、いつだって嬉しいからね」


気絶すること数分、俺はゆっくりと意識を取り戻した。


今日の朝ごはんはウカミが作ってくれることになり割烹着姿の背中をチラリと見てから、申し訳なさそうに目を伏せるコンの頭を撫でる。


もうコンとは身も心も深く愛し合う婚約者の関係なんだし、もう少しその手の誘惑を受け止められる程度に強くならないと。


ぎゅっと包むように抱きしめ漸く笑顔を取り戻したコンと微笑み合っていると、不意にピンポーンとチャイムが鳴り響いた。


「誰だろう?俺が出てくるよ」

「わしも行こう」

「お二人とも気を付けてくださいね〜」


一瞬だけウカミに見送られながらはて?とコンと小首を傾げて覗き穴から外を見る。


立って居るのは男性、服装も現代風で一般男性と遜色ない。


けれど。どう考えても人間には持ち得ない…猫の耳と尻尾が生えていた。


「……これって」

「間違いなく神じゃな」

「だよねぇ」


コンと顔を見合わせ、一つ頷く。不審者ではないようなので開けても問題はない…かな?


ドアロックと鍵を外しキィと音を立てて扉を開ける。


「あ、あんたが神守紳人とコンか?」

「えぇ。間違いなく。どうなさったんです?こんな朝早くから…」

「突然失礼だとは思うけど。頼む!」


バッと頭を下げた彼の口から、とんでもないお願いが飛び出した。


「俺に惚れてる彼女を、諦めさせてくれ!」

「……何じゃって?」


その日、俺とコンは嘘でも吐かれているのかと自分の耳を疑う朝から始まった。


何だか…神様の駆け込み寺みたいになってない?

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